こんにちは。はーねうすです。
今回は、冨田勲氏の「イーハトーヴ交響曲」を紹介します。以前に当ブログ「ラフマニノフ 交響曲全集」でも少し紹介させていただいたアルバムになりますね。
クラシックという位置づけは正しくはないのかもしれませんが、交響曲というスタイルと、楽曲で借用されているクラシック音楽を考慮して妥当とも考えられます。
Vocaloid (バーチャル・シンガー)の初音ミク氏が、歌唱を担当しているのも特徴ですね。
豪華なコラボレーションですね。
世界のTOMITA、渾身の大管弦楽曲だな。
目次
【着想】宮沢賢治の世界。
「冨田勲:イーハトーヴ交響曲」のコンテンツです。
アルバムのタイトルどおり、宮沢賢治の作品を下地に楽章が編成されています。選択された素材もユニークで、戯曲、童話、詩と幅が広いですね。
また、曲中には宮沢賢治自身が作詞・作曲した唱歌も採用されていて、とてもバラエティに富んだ内容になっています。
No. | 曲名(1) | 曲名(2) |
1 | イーハトーヴ交響曲 | 岩手山の大鷲『種山ヶ原の牧歌』 |
2 | イーハトーヴ交響曲 | 剣舞/星めぐりの歌 |
3 | イーハトーヴ交響曲 | 注文の多い料理店 |
4 | イーハトーヴ交響曲 | 風の又三郎 |
5 | イーハトーヴ交響曲 | 銀河鉄道の夜 |
6 | イーハトーヴ交響曲 | 雨にもまけず |
7 | イーハトーヴ交響曲 | 岩手山の大鷲『種山ヶ原の牧歌』 |
8 | リボンの騎士 | ― |
9 | 青い地球は誰のもの | ― |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
なんといっても、冨田勲×宮沢賢治×初音ミクという時代を超越したコラボレーションの凄まじさに惹き付けられますね。
「No.5」:「イーハトーヴ交響曲 銀河鉄道の夜」
とりわけ「銀河鉄道の夜」が良いですですね。
当ブログ「ラフマニノフ 交響曲全集」でも紹介させていただいた、ラフマニノフの「交響曲 第2番 第3楽章」のテーマが登場します。
扱われ方がとてもオシャレで切ないです。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」のファンなら、車両の窓越しに覗くジョバンニとカンパネルラの姿を思い浮かべるかもしれません。
ラフマニノフの音楽は4拍子なのですが、「銀河鉄道の夜」では3拍子の伴奏音型が取られている(多分、汽車の駆動音をイメージ)ので、微妙なズレが揺らぎを生み、とても不思議な音響になっています。
また、冒頭と中盤あたりで、初音ミク氏が歌うケンタウルス祭の歌が可愛らしくて素敵です。どうしても、Vocaloidということで「歌わせ方」という技術的な面で捉えてしまいそうになりますが、その歌声は宮沢賢治の文学世界に大変マッチしています。
<おすすめ度★★>
「No.3」:「イーハトーヴ交響曲 注文の多い料理店」
交響曲の全楽章を通して、初めて初音ミク氏が登場し、歌う楽曲になります。
不穏さ、不気味さを備えた楽曲の途中、すこしおどけた印象の曲調が表われます。その旋律に載せて初音ミク氏が特有の高音で歌います。曲調とは反して、歌詞の内容はネガティブなのも印象的ですね。
<おすすめ度★>
「No.8」:「リボンの騎士」
「No.9」:「青い地球は誰のもの」
コンサートのアンコール曲として演奏されたものを収録したものです。「リボンの騎士」は言わずと知れた漫画家手塚治虫先生の作品ですね。
全曲がコンサートのライヴ収録なので、臨場感と緊張感があってとても面白いアルバムです。
初音ミクの独唱があるんですね。オーケストラとテンポを合わせるのが難しそうです。
このアルバムはライヴ録音だが、CD用に修正はしていないそうだ。驚きだな。
【観想】借用の妙技。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
「No.5」の「銀河鉄道の夜」ではラフマニノフの「交響曲 第2番 第3楽章」のテーマが使用されていたのと同じく、他の楽章でも他作曲家の音楽が借用されています。
ひとりめは、宮沢賢治。
「No.1」の「岩手山の大鷲『種山ヶ原の牧歌』」で歌われる「牧歌」や、「No.2」の「剣舞/星めぐりの歌」で歌われる「剣舞の歌」。ライナーノーツ(片山杜秀氏著)によると、ともに宮沢賢治の戯曲「種山ヶ原の夜」の劇中歌とのことです。
そしてふたりめは、ヴァンサン・ダンディ。フランスの作曲家で、19世紀後半から20世紀前半に活躍しました。
「No.1」の「岩手山の大鷲『種山ヶ原の牧歌』」、「No.2」の「剣舞/星めぐりの歌」、「No.3」の「注文の多い料理店」で、「フランスの山人の歌による交響曲」の各楽章の主題が借用されているとのこと。
ライナーノーツ(冨田勲氏著)には、冨田勲氏が「~前略~ ヴァンサン・ダンディの曲『フランスの山人の歌による交響曲』がかけられた時、私はこの曲からその時に見た岩手の山々と宮沢賢治の世界そのものを感じ、もはや半世紀と少々時が経った現在も忘れられず、そのメロディーを今回の交響曲に引用しました。出だしのメロディーも宮沢賢治が作曲した『牧歌』のメロディーと似ています。~後略~」と綴っています。
なにかしら強い縁(えにし)を感じますね。
イーハトーヴとは、宮沢賢治が理想郷という意味を込めて造った言葉です。その理想郷を冠とした交響曲に相応しい壮大なテーマが、このように造られていると知れてとても感慨深いですね。
音楽家の略歴です。
<略歴> 冨田勲 【日】1932-2016 慶應義塾大学在学中に平尾貴四男、小船幸次郎各氏に作曲を師事。1963年NHK大河ドラマ第1作「花の生涯」を担当。1966年には手塚治虫氏のTVアニメ「ジャングル大帝」「リボンの騎士」の音楽を作曲。1970年頃よりシンセサイザーによる作編曲・演奏に着手。2012年1月、世界を舞台にした作曲家・音響クリエイターとしての活動が認められ、2011年度朝日賞を受賞。 (「イーハトーヴ交響曲」のライナーノーツより抜粋/編集)
宮沢賢治は作曲も嗜んだのですね。
大の西洋音楽好きだからな。後ろ手に組んで歩く写真が有名なだが、どこかベートーヴェンっぽいだろう。
【追想】宮沢賢治の世界。
詩情に溢れたカレイドスコープです。
「銀河鉄道の夜」(宮沢賢治/角川文庫)と「新編 宮沢賢治詩集」(中村稔[編]/角川文庫)です。
今回紹介したアルバムの「No.5」の「銀河鉄道の夜」と「No.6」の「雨にもまけず」がそれぞれに納められています。
楽曲とは直接関わりはありませんが、より宮沢賢治の世界観の深みを知るためには必須と言えるでしょう。
とにかく詩的です。心に浮かんだ像を、詩という言葉で描いた心象のスケッチです。
「春と修羅 第一集」の序で、「心象スケッチ」というキーワードが出てきますが、これは宮沢賢治の文学世界の根幹を築いているものだと思います。
残念ながら戯曲「種山ヶ原の夜」は接したことがありません。機会があれば何かしらのメディアで触れてみたいですね。
さて、初音ミク氏との関わりです。
ライナーノーツ(冨田勲氏著)の「異色ののエンターテイナー、初音ミク」では、次のように語られています。
「私の感じている風の又三郎やカンパネルラ像は、物語では男の子の設定ですが、他方非常にボーイッシュな女の子とも感じとれ、この異次元的なキャラクターは初音ミク以外にはないと考えました。」
このような関係性の上に、冨田勲×宮沢賢治×初音ミクという夢の共演が成り立っているのですね。
宮沢賢治の詩って、「雨ニモマケズ」ぐらいしか知らないです。
そうか。「春と修羅」は良いぞ。
【雑想】下手の横好き。(第42弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。
DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。
下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
雑談です。
久しぶりにハイレゾ音源を購入しました。「結束バンド」(Aniplex Inc.)です。
「ぼっち・ざ・ろっく」のコミック・ファン→アニメ・ファン→楽曲・ファンというお約束の流れです。良い年末を迎えられました。
長く続く趣味を持ちたいです。
今回は、変則回でしたね。
正直なところ、「ミクちゃんがオーケストラと共演する」という1点だけでも、貴重なアルバムと言えます。
個人的には、ちょうどボカロの楽曲にのめり込んでいた時期でもあったので、感無量でした。
さらに題材が宮沢賢治という点も素敵です。
宮沢賢治自身が西洋音楽に傾倒していたこと関係するのかもしれませんが、その文学性の中に音楽性の燦めきを感じ取れます。
そのためか、このようなコンセプトで紡ぎ出される音楽とも、絶妙にマッチしていると感じるのかもしれませんね。
さて、次回からはドヴォルザーク編になる予定です。楽しみですね。
では、また。
久しぶりに雑談のコーナーが出てきましたね。
よほど興奮したようだな。AKGのハイレゾ対応のイヤホン「N25」で聴いているそうだ。
ところで今回も変則回でしたね。ボーカロイドとオーケストラのコラボレーションには興奮します。
しかもライブ録音かつ録音後の修正なし、ということに驚愕だな。