こんにちは。はーねうすです。
今回は、ドヴォルザークの「ピアノ三重奏曲 第4番『ドゥムキー』・第3番」を紹介します。
前回の「ピアノ三重奏曲 第1・2番」と合わせて、ドヴォルザークのピアノ三重奏曲はコンプリートになります。一式揃うと興奮しますね。
演奏は、スーク・トリオです。
引き続き、ドヴォルザークの室内楽ですね。
第4番の「ドゥムキー」は独創性が高く、ユニークだぞ。
目次
【着想】ユニークな構成。
「ピアノ三重奏曲 第4番『ドゥムキー』・第3番」のコンテンツです。
このアルバムでは、「ピアノ三重奏曲 第4番」を「第3番」よりも先に配置しています。意図は正直なところ不明です。作品の制作年順でもなければ、演奏録音の順というわけでもありません。単純に、有名な「第4番」を頭にした、といったところでしょう。
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | ピアノ三重奏曲 第4番 ホ短調『ドゥムキー』 | 第1楽章 Lento maestoso | Op.90 |
2 | ピアノ三重奏曲 第4番 ホ短調『ドゥムキー』 | 第2楽章 Poco Adagio | Op.90 |
3 | ピアノ三重奏曲 第4番 ホ短調『ドゥムキー』 | 第3楽章 Andante | Op.90 |
4 | ピアノ三重奏曲 第4番 ホ短調『ドゥムキー』 | 第4楽章 Andante moderato | Op.90 |
5 | ピアノ三重奏曲 第4番 ホ短調『ドゥムキー』 | 第5楽章 Allegro | Op.90 |
6 | ピアノ三重奏曲 第4番 ホ短調『ドゥムキー』 | 第6楽章 Lento maestoso | Op.90 |
7 | ピアノ三重奏曲 第3番 ヘ短調 | 第1楽章 Allegro ma non troppo | Op.65 |
8 | ピアノ三重奏曲 第3番 ヘ短調 | 第2楽章 Allegretto grazioso | Op.65 |
9 | ピアノ三重奏曲 第3番 ヘ短調 | 第3楽章 Poco Adagio | Op.65 |
10 | ピアノ三重奏曲 第3番 ヘ短調 | 第4楽章 Finale; Allegro con brio | Op.65 |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.3」:「ピアノ三重奏曲 第4番 第3楽章」
ゆっくりと穏やかで感傷的なピアノの単純な旋律。それに呼応するような、ヴァイオリンの掛け合いが印象的な冒頭の主題。そして、ヴァイオリンで奏でられる陰鬱なテーマの主旋律をピアノが華麗に伴奏します。冒頭の主題を短く挟んだ後、一遍して軽快で暗めの曲調が現れます。
なんとも豊かな曲想に魅入らされます。
「ピアノ三重奏曲 第4番」は、伝統的な形式から離れた型破りな構成で、大変ユニークです。
実際の所、楽章という概念もなさそうです。(便宜上、楽曲の区分として記載することはあるようです。)
<おすすめ度★★>
「No.5」:「ピアノ三重奏曲 第4番 第5楽章」
ドラマティックで聴き応えがあります。
劇的な展開、中間に閉じ込めたヴァイオリンの悲哀に満ちた歌。この対比構造が面白いです。
「No.6」:「ピアノ三重奏曲 第4番 第6楽章」
終楽章に位置するだけあって、動的な曲想から、如何にも締めくくりを予感させる構成がいいですね。
幾分情熱的なテーマ、弦で奏でられる哀愁漂う中間部、テーマの回帰。それらの分かりやすい構造も印象的です。
<おすすめ度★>
「No.7」:「ピアノ三重奏曲 第3番 第1楽章」
「ピアノ三重奏曲 第1番」や「ピアノ三重奏曲 第2番」と同じく、ソナタ形式など伝統的な書法に則っています。が、曲想や曲調は如何にもロマン主義です。
ロマン主義の息吹が強く感じられる熱情的な第1主題。明るく変化に富んだ、掴み所のない第2主題。主にヴァイオリンが先導的な役割を担っているのが印象的です。
「No.8」:「ピアノ三重奏曲 第3番 第2楽章」
極めて愛らしいです。
同じ音型の繰り返しを、楽器の交代や、伴奏型の変化によりアレンジした構造がユニークな主要主題。そして柔らかで優しい旋律が印象的な中間主題。ノスタルジックになりますね。
「第3番」「第4番」はともに、擬古典主義的であった「第1番」「第2番」からは構想が大きく変化しています。
曲調や曲想では、民俗的な面が強く表われています。
構成や構想では、形式から離れた自由闊達な面が印象づけられます。
これらがうまく合わさって、ドヴォルザークらしさが滲み出た楽曲になっています。
ところで、ドゥムキーって何ですか。
ウクライナ民謡に「ドゥムカ」というがあって、その複数形だな。
【観想】自由な民俗。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
前述したとおり、「第3番」「第4番」はともに、擬古典主義的であった「第1番」「第2番」からは構想が変化しています。
例えば、民俗音楽の特性の採用。
「ピアノ三重奏曲 第4番」は「ドゥムキー」という副題が添えられていることで分かるように、民謡調の悲哀に満ちた旋律が印象的です。
「No.2」の「ピアノ三重奏曲 第4番 第2楽章」と「No.4」の「ピアノ三重奏曲 第4番 第4楽章」に挟み込まれる民謡調の旋律がとても印象的です。
ライナーノーツ(門馬直美氏著)では、「ピアノ三重奏曲のあり方を完全に打破した民俗色の濃い作品」と評しています。
また、「ピアノ三重奏曲 第3番」にも随所に、民俗色の豊かな曲想が鏤められています。
「No.9」の「アノ三重奏曲 第3番 第3楽章」は、民俗音楽的な要素を幾分か持った楽曲です。
穏やかな民俗的な曲調と、中間の感傷的なヴァイオリンの音色が印象的です。また、後半に表われる重厚な合奏とピアノの幻想的なフレーズ、主題の回帰などがうまく構成されています。
また、「No.10」の「アノ三重奏曲 第3番 第4楽章」がとりわけ民俗色が濃いです。
駆け足のような勢いのある主要主題と、合奏がエネルギッシュに展開されるドラマティックなヶ曲です。常に変化を求められているような、無窮動感が強いです。
ライナーノーツ(門馬直美氏著)では、「性格的にはボヘミアの独特な民俗舞曲である情熱的なフリアントに近い。」と記述しています。
「第3番」「第4番」ともに、ドヴォルザークの特徴が良く表われた楽曲と言えるでしょう。
音楽家の略歴です。
<略歴> アントニン・ドヴォルザーク 【チェコ】1841-1904 チェコ国民楽派最大の作曲家。国民音楽の創造に腐心していたスメタナから強い影響を受けた。1875年、オーストリア政府奨学金を獲得、その審査員の一人のブラームスの知遇を得て、作品が世に知られるようになり、また作風にもブラームスの影響が強く表われるようになった。しかし、これらを包含して国民主義的傾向はされに深められ、晩年に向けて一連の傑作を生む。 (「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
ところで、フリアントって何ですか。
チェコ発祥の民俗舞曲だな。3拍子を主体とした変則的なリズムが特徴だな。
【追想】楽章の配置。
見解が分かれているのも面白いです。
「ドヴォルザーク ピアノ三重奏曲『ドゥムキー』ホ短調」(牛山充[解説] 音楽之友社)です。
「ピアノ三重奏曲 第4番」は、「ドゥムカ」(スラブ哀歌)が複合的に集まった楽曲であるところから「ドゥムキー」という「ドゥムカ」の複数形の呼称が副題となっていませす。
そのため伝統的なソナタ形式などを持った「楽章」という概念はないと考えてよさそうです。とりわけ「有機的な連関による全楽章の統一」といった思想はありません。
「単一の『ドゥムカ』の旋律を主題として古典ソナタ形式を主とする四楽章に分かれた正規の循環形式に発展される常套の手段にはよらず、多くの『ドゥムカ』を用い、いっそう複雑にして変化に富む民族性を導入し、国民楽派の性質を強く反映しようと意図されたもの」と評しています。
さて、便宜上には「楽章」を立てています。
面白いことに、今回紹介したアルバムと、「ドヴォルザーク ピアノ三重奏曲『ドゥムキー』ホ短調」とでは楽章の数が異なります。
前者では「6楽章」で、後者では「5楽章」となっています。違いは、後者では前者の「第1楽章」と「第2楽章」をひとつにまとめている点です。面白いですね。
ライナーノーツ(門馬直美氏著)にも、「楽章区分は、人によって違っていて、5楽章とされたり6楽章とされたりしている。5楽章の場合は、第1と第2楽章をつづけてひとつの楽章と考えているからである。」とあり、見事に今回のケースとマッチしています。面白いですね。
どのような形にせよ、ドヴォルザークの残した「ドゥムカ」の集まりである「ドゥムキー」であることに違いはありません。「楽章論」は、その独創性や多様性から派生した「楽章という形式への考察」の一環と考えてよさそうです。
楽章破りは、伝統的な形式の打破、ということですね。
結果としてな。主眼は「民族性」を深める点にあるぞ。
【雑想】下手の横好き。(第44弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。
DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。
下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
引き続き、ドヴォルザーク編でした。
室内楽は渋すぎて、中々コメントが難しいですね。そもそも音楽を言語化するのが土台無理だいう…
今回紹介した「ピアノ三重奏曲 第4番」は、ドヴォルザークの室内楽で最も有名な1曲ですね。
伝統的な形式主義から外れ、とても自由に彩られています。加えてドヴォルザーク特有のスラブ調も相まって、聴き惚れる楽曲になっていますね。
では、また。
ドヴォルザークの室内楽って、渋いのでしょうか。
「渋い」のニュアンスにもよるが、玄人向けといったところだろう。