こんにちは。はーねうすです。
今回は、「モーツァルト ピアノ協奏曲 第20番&第24番」を紹介します。
モーツァルトが作曲した短調のピアノ協奏曲は、第20番と第24番の2曲のみです。そのためかこの2曲をカップリングしたアルバムが多いように感じますね。
このアルバムでは、指揮者がピアノのソリストを務める「弾き振り」という演奏スタイルで録音されています。
ピアノ演奏&指揮は、ダニエル・バレンボイム氏です。
★打ち込みクラシック
DAW(Digital Audio Workstation)で入力したクラシック音楽のDTM(DeskTop Music)作品を紹介するコーナーを巻末に設けています。
今回紹介するアルバムの中から1曲をピックアップしていますので、是非お楽しみください。
ピアノ協奏曲ですね。数多くの作品を残していた印象です。
第27番までが記録されているが、実際は20曲辺りと考えられているな。
目次
【着想】神童の短調。
「モーツァルト ピアノ協奏曲 第20番&第24番」のコンテンツです。
モーツァルトが短調を主調として作曲した作品は少ないです。その稀少性のためか、名曲ぞろいとも言われています。
その短調で書かれたピアノ協奏曲は2曲あり、ともに名曲としての誉れが高いです。
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 | 第1楽章:アレグロ (カデンツァ:ベートーヴェン、編曲:エドウィン・フィッシャー) | K.466 |
2 | ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 | 第2楽章:ロマンス | K.466 |
3 | ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 | 第3楽章:ロンド(アレグロ・アッサイ) (カデンツァ:バレンボイム) | K.466 |
4 | ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調 | 第1楽章:アレグロ (カデンツァ:バレンボイム) | K.491 |
5 | ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調 | 第2楽章:ラルゲット | K.491 |
6 | ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調 | 第3楽章:アレグレット | K.491 |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.4」:「ピアノ協奏曲 第24番 第1楽章:アレグロ」
まるでロマン主義の作品を先取りしたかのような交響的な曲想で、ブラームスの「ピアノ協奏曲 第1番」を彷彿とさせます。
暗鬱で跳躍が繰り返される第1主題、落ち着いた優雅さを誇る第2主題の対立構造が面白いです。
ピアノ・ソロの導入は至ってシンプルで、却ってその美しさを際立たせています。
怒濤のように押し寄せてくる展開部の劇性も印象的ですね。
バレンボイム氏によるカデンツァも近代的な手法で処理されていて素敵です。
「No.2」:「ピアノ協奏曲 第20番 第2楽章」
可愛らしいピアノ独奏で始まる優美な曲です。ピアノ主導の明快な主要主題と、重厚な管弦楽によるドラスティックな中間主題が対照的で面白いです。中間部では、管弦楽の合奏の間を縫うように走るピアノのスケールとアルペジオが印象で気ですね。
なぜか幼少期を回顧するような、やるせなく切なさに満ちた憧憬の音楽です。
映画「アマデウス」(ミロス・フォアマン監督 / アメリカ / 1984年)では、エンドロールで使用されていましたね。場面での曲の入りがとても印象的でした。
<おすすめ度★★>
「No.3」:「ピアノ協奏曲 第20番 第3楽章」
前2つの楽章に比して、明らかに激しさを増した管弦楽と技巧的に処理されたピアノ・パートが印象的ですね。とても華やかです。
カデンツァも技巧の激しさと簡素な美しさを備えており、続くコーダの淀みない締めくくりを一層に引き立てていますね。
<おすすめ度★>
「No.5」:「ピアノ協奏曲 第24番 第2楽章」
ピアノ独奏のパートと、管弦楽のパートの区分が明確です。ロマン主義時代に好まれそうな曲想と構成が印象的で、「ピアノ協奏曲 第20番 第2楽章」と同様、憧憬の念を掻き立てるヶ曲です。
ライナーノーツ(柴田龍一氏著)では、「モーツァルトの短調による作品は、数こそ少ないものの、その大部分がたまらない魅力をもった傑作」と評しています。
そんなモーツァルトの「短調」を堪能できる、最適なアルバムですね。
カデンツァって何ですか。
協奏曲などで、ソリストがオーケストラの伴奏なしに自由な即興演奏をする箇所だな。19世紀以降は作曲家がカデンツァも譜面に記しているので、技量を発揮する箇所という意味合いが濃いな。
【観想】弾きと振り。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
このアルバムに収められたモーツァルトの「ピアノ協奏曲 第20番」と「ピアノ協奏曲 第24番」は、ピアニストが指揮者をも務める、所謂「弾き振り」というスタイルで演奏されています。
古典主義時代の楽曲には珍しくない演奏スタイルであったみたいですね。どちらかというと、独立した指揮者の方が珍しい時代であったのかもしれません。
さて、ピアノ協奏曲の「弾き振り」では、ステージの配置はどうなるのでしょうか。
以前に映像で見たパターンは、ピアニストの背が観客に向くようにピアノを配置していました。つまり、指揮台の位置にピアノを置いた状態ですね。
加えて、ピアノの天板を外していました。これは、ピアニスト兼指揮者が、オーケストラに手振りやアイ・コンタクトで指示を出す際の障害にならないようにするためですね。
19世紀以降に専業指揮者が登場する協奏曲スタイルに慣れていると、風変わりに感じて面白いですね。
とりわけ、古典主義時代では、この「弾き振り」というスタイルに合致するように「カデンツァ」が配されていた感がありますね。
「No.1」の「ピアノ協奏曲 第20番 第1楽章」では、ベートーヴェンの作曲によるカデンツァが採用されていました。
重々しく厚みのある、熱情的な第1主題、優しく柔らかみのある、郷愁的な第2主題。それらを奏でる管弦楽に対して、ピアノ独奏はときにはシンプルな美しさで歌い上げ、ときには目まぐるしい無窮動のパッセージを奏でます。そして、展開部から再現部への移行前に差し込まれたカデンツァは、回想的に処理されていて、聴者を魅了します。
ピアノを弾きながらオーケストラの団員に指示を出す、そんな姿が脳裡に浮かび上がります。
音楽家の略歴です。
<略歴> ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト 【墺】1756-1791 古典派の典型をなす作曲家。早熟の天才であり、35歳で夭逝。'84年フリーメーソンに加盟、その活動が作品にも投影する。1770年代初めまでの初期の作品には前古典派およびイタリア古典派の影響が強く見られるが、中期には典雅なギャラント様式、マンハイム楽派の様式を採り入れ、30歳以後の後期ではバロック音楽への傾倒も加わって、古典美のなかに深遠な表情をもつようになった。 (「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
弾き振りって、大変そうですね。
実際に演奏をしている姿を映像で見ると、感動するぞ。
【追想】批評の美学。
芸術批評の美学的な試みです。
「モオツァルト・無常という事」(小林秀雄[著] 新潮文庫)です。
批評美学という小林秀雄氏の活動を記した名著ですね。特に「モオツァルト」と題した批評文は60ページ近くもあり、解説の江藤淳氏によると「小林氏の批評美学の集大成」であり「宿命」(208、209ページ抜粋)であるという。
とりわけ、「交響曲 第40番 ト短調」が主軸になっています。「大阪の道頓堀をうろついていた時、突然、このシンフォニイのテエマが頭の中に鳴ったのである。」(12ページ抜粋)はとても有名な一節ですね。
さて、ピアノ曲にも触れています。「彼のピアノ曲の様な単純で純粋な音の持続に於いては、演奏者の腕の不正確は直ぐ露顕せざるを得ない。~中略~ モオツァルトの単純で真実な音楽は、僕等の音楽鑑賞上の大きな試金石でもあると言える。」(44ページ抜粋)とあり、「単純で真実な音楽」「試金石」がキーワードとして浮かび上がりますね。
モーツァルトの音楽は、過剰に施された装飾や過度に複雑化された構成とは無縁で、純粋で無垢な音楽といえるでしょう。演奏する側も、鑑賞する側も「誤魔化しが効かない」のです。
真にモーツァルトの美しさを享受する地平に到達するには、容易にならない気がしてなりませんね。
試金石ですか。どういった例えなのでしょうか。
価値判断の基準のことだな。正鵠を射た表現だと感服するな。
【雑想】下手の横好き。(第51弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
「Studio One」シリーズで打ち込んだクラシック音楽をお披露目するコーナーです。
今回は、<おすすめ度★★★>として紹介したモーツァルトの「ピアノ協奏曲 第20番 ハ短調 第2楽章」の抜粋版です。
他作品を含め、下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
引き続き、モーツァルト編でした。
今回は、有名なピアノ協奏曲のカップリングでしたね。ともに「モーツァルトの短調」として、寵愛される楽曲です。
ベートーヴェンやブラームスも敬愛したそうで、カデンツァを残しています。このような形で尊敬する先輩の作品に関われるというのは、とても素敵なことですね。
さて、今回で一先ずモーツァルト編は終了です。他にもピアノ・ソナタ全集や交響曲などのアルバムがありますが、また別の機会に譲ろうと思います。
次回からは、マーラー編を予定しています。
では、また。
ベートーヴェンやブラームスも、モーツァルトのピアノ協奏曲を好んでいたのですね。
このアルバムでは、ベートーヴェンが書き下ろしたカデンツァが採用されていたぞ。