こんにちは。はーねうすです。
今回は、「マーラー 交響曲 第1番『巨人』」を紹介します。
前回も同タイトルのアルバムを紹介していましたので、お察しの通り「同曲異演」を紹介する回になります。
前回は、クラウディオ・アバド指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の盤で、今回は、ガリー・ベルティーニ指揮/ケルン放送交響楽団の盤です。
さて、今回もライブ録音のアルバムになります。
同じタイトルが続いたので、一瞬バグったのかと思いました。「同曲異演」なのですね。
バグって…。「同曲異演」は、クラシック音楽を鑑賞する醍醐味のひとつだな。
目次
【着想】巨大な交響。
「マーラー 交響曲 第1番『巨人』」のコンテンツです。
後期ロマン主義を代表するマーラーが手掛けた最初の交響曲ですね。初演では2部構成の「交響詩」として扱っていたようです。その後、「交響曲 第1番 ニ長調」として出版に至ったようです。
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | 交響曲 第1番 ニ長調「巨人」 | 第1楽章:ゆっくりと – 引きずるように(自然の響きのように) ~ くつろいで | ― |
2 | 交響曲 第1番 ニ長調「巨人」 | 第2楽章:力強く、しかし速過ぎず | ― |
3 | 交響曲 第1番 ニ長調「巨人」 | 第3楽章:厳かに節度をもって、引きずることなく | ― |
4 | 交響曲 第1番 ニ長調「巨人」 | 第4楽章:嵐のように運動的に | ― |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.4」:「交響曲 第1番 第4楽章」
「巨人(タイタン)」というタイトルを聴くと、真っ先に想起するであろう有名な楽曲ですね。
劇的で暴力的ともいえる第1主題の圧倒的な威力は、聴く者を畏怖という形で支配します。
弦と管による砲撃とも言える合奏、打ち鳴らされる打楽器の連打は迫力満載です。
続く第2主題は、一転して落ち着いた楽曲で、異様に美しい音響が印象的です。
全編を通して、畏怖、崇高、荘厳と言った心象を抱く楽曲です。
ライナーノーツ(許光俊氏著)では、「<巨人>とは自然の申し子として生まれ、過酷な運命に屈せず戦う人物であり、自分の生きざまを投影している」というマーラー自身の証言を紹介しています。マーラーという人物像が伺える面白い言ですね。
前回でも紹介しましたが、アニメーション映画「映画大好き ポンポさん」(杉谷庄吾【人間プラモ】原作 / 平尾隆之監督 / 日本 / 2021年)では、劇中劇である映画「MEISTER」で「交響曲 第1番」が鳴り響いていました。素敵でしたね。
<おすすめ度★★>
「No.1」:「交響曲 第1番 第1楽章」
とても静かな導入に引き続き、管楽器によって徐々に提示される主題が印象的です。
カッコウの鳴き声を模したモチーフや、弦が一定の線形を描いている保持音など、要素が豊富です。
静と動が明確で、不安を煽る演出がなされているとも取れそうです。なんとなくマーラーの自然観が伺えますね。
「No.2」:「交響曲 第1番 第2楽章」
とても陽気な曲調が印象的です。
劇的な第1楽章と静的な第3楽章に挟まれていますので、コントラストがより強烈に感じ取れます。
全体的に畏怖を煽る要素を醸し出している交響曲の中に差し込まれた、ちょっとした明るみといった感がありますね。
<おすすめ度★>
「No.3」:「交響曲 第1番 第3楽章」
静謐という単語が適しているという印象の楽曲ですね。
とても抑制の効いた曲調と厳かな曲想は、全楽章を通しても一風変わった存在ですね。
ライナーノーツ(許光俊氏著)によると、「もっともマーラーの個性が発揮された楽章」とのことです。
交響曲全体としては、楽器編成が面白いですね。
特に打楽器群の編成が面白く、珍しい楽器を採用していますね。例えば、トライアングルとタムタムを編成に加えているのが印象的です。
前回の「マーラー 交響曲 第1番〔巨人〕」でも同曲を紹介させていただいていますので、合わせてご覧いただけると嬉しいです。
タムタムってなんですが。
銅鑼のような打楽器のことだな。振動させて音を発する「体鳴楽器」に分類されるぞ。
【観想】同曲異演とライブ録音。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
クラシック音楽を鑑賞するひとつの楽しみに、「同曲異演」があります。同じ楽曲を、異なるプレーヤーが演奏したり、同じプレーヤーでも時期を改めた演奏であったり、というものです。
さて、前回の「クラウディオ・アバド指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」の盤と、今回の「ガリー・ベルティーニ指揮/ケルン放送交響楽団」の盤も「同曲異演」を楽しめるアルバムです。が、さらに注目すべきは、ともに「ライブ録音」という点ですね。
どのホールで録音をしたのか、観客をどの程度許容したのか、などで録音状態にも差が出ます。当たり前ですが。
どこのコンサート・ホールで録音をしたのかに注目してみると、
- 「クラウディオ・アバド指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」の盤:
ベルリン・フィルハーモニー
[ご参考] 収容席数:2440席(大ホール)、1180席(室内楽ホール) - 「ガリー・ベルティーニ指揮/ケルン放送交響楽団」の盤:
サントリーホール(東京)
[ご参考] 収容席数:2006席
ということです。ともに名高いコンサート・ホールですね。
収容席数からともに巨大な音響空間を想像できます。
コンサート・ホールなどの空間や環境による音響の差異をも楽しめる、そんあ審美の耳を持ちたいですね。
音楽家の略歴です。
<略歴> グスタフ・マーラー 【墺】1860-1911 ウィーン楽友協会音楽院で学び、ウィーン大学では哲学も修めた。1897年よりウィーン宮廷歌劇場の指揮者となり、同劇場の全盛期を築いた。作品はワグネリズムに根幹をおいた長大な交響曲と、それと不可分の関係にある管弦楽伴奏付き歌曲が中心をなしており、明快な抒情性のなかに深い思索的内容を秘めた傑作によって占められている。 (「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
同曲異演に加えて、どっちもライブ録音なのですね。
比較する対象がとことん豪華になるな。
【追想】マーラーの評伝。
作家の生涯と作品の評伝です。
「大作曲家 マーラー」(ヴォルフガング・シュライバー[著]/岩下眞好[訳] 音楽之友社)です。図版が多くてとても重宝します。
マーラーは指揮者としての活動が繁忙であったため、作曲家としての仕事に時間をあてるのが難しかったようですね。
今回紹介した「交響曲 第1番」も、1883年頃に「『第1交響曲』が書き始められた」(51ページ抜粋)、1887年頃に「『第1交響曲』の仕上げに励んでいた」(61ページ抜粋)、「劇場での業務さえおろそかにするほどにこの曲に熱中」(64ページ抜粋)、1888年の「三月に交響曲は完成」「この交響曲が初演されたのはそれから一年半後にブダペストで、オペラ監督グスタフ・マーラーの指揮でだった。」(65ページ抜粋)と記載されています。
足掛け6年ほどですね。他の楽曲も同時に作曲をしていたとしても、スローペースに思えますよね。
指揮者の仕事はとても忙しかったのでしょう。休暇になるシーズンオフ時に集中して作曲していたようですね。
このシリーズの特徴である、巻末の「証言」も面白いです。
中でも、アルノルト・シェーンベルク、アルバン・ベルク、アントン・フォン・ヴェーベルンといった無調音楽を代表する新ウィーン楽派の評が興味を引きます。彼らの音楽性が、どれほどマーラーの影響下にあったのかを知ることができます。そして、それ以上にマーラーの作品への讃美に満ち溢れています。
本当に多忙だったようですね。
そのためか、後世に残した作品の数も少ない方だな。
【雑想】下手の横好き。(第53弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。
DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。
下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
引き続き、マーラー編でした。
前回と同じタイトルの「交響曲 第1番」ということもあって、同曲異演を楽しむ回になりました。
加えて、ともにライブ録音ということもあり、録音環境の違いにもスポットを当ててみようという試みの回でもありあましたね。
多角的に音楽鑑賞ができるようになりたいですね。
では、また。
音楽鑑賞をした上で、評伝を読むのも楽しいですよね。
特に、初演当時の評価を知れるのが貴重だな。