こんにちは。はーねうすです。
今回は、「ブラームス ヴァイオリン・ソナタ」を紹介します。
ブラームスのヴァイオリン・ソナタ全3曲を収録していますので、全集の位置づけでよいでしょう。嬉しいですね。
ヴァイオリン演奏は、アンネ=ゾフィー・ムター氏、ピアノ演奏アレクシス・ワイゼンベルク氏です。
ヴァイオリン・ソナタは全3曲なのですね。
他作家と楽章を分け持った「F.A.Eのソナタ」があるな。第3楽章のスケルツォを担当しているぞ。
目次
【着想】室内楽の逸品集。
「ブラームス ヴァイオリン・ソナタ」のコンテンツです。
ブラームスが手掛けた室内楽は、どれもが安定した完成度に根ざした豊潤さを備えています。ヴァイオリン・ソナタは、中後期に生み出された素敵な楽曲です。
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト長調「雨の歌」 | 第1楽章:ヴィヴァーチェ・マ・ノン・トロッポ | Op.78 |
2 | ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト長調「雨の歌」 | 第2楽章:アダージョ | Op.78 |
3 | ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト長調「雨の歌」 | 第3楽章:アレグロ・モルト・モデラート | Op.78 |
4 | ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 | 第1楽章:アレグロ・アマービレ | Op.100 |
5 | ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 | 第2楽章:アンダンテ・トランクィロ~ヴィヴァーチェ | Op.100 |
6 | ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 | 第3楽章:アレグレット・グラチオーソ | Op.100 |
7 | ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 | 第1楽章:アレグロ | Op.108 |
8 | ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 | 第2楽章:アダージョ | Op.108 |
9 | ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 | 第3楽章:ウン・ポコ・プレスト・エ・センチメント | Op.108 |
10 | ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 | 第4楽章:プレスト・アジタート | Op.108 |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.7」:「ヴァイオリン・ソナタ 第3番 第1楽章」
内省的で、陰鬱と激高の往復といった感情の波を感じさせる楽曲です。
第1主題は、動静のメリハリと起伏など変化に富んだ印象です。そして、第2主題は、無窮動なパッセージを織り込ませて、どこかバロック風で颯爽としています。
展開部では異様な盛り上がりを見せる格好で、かつヒステリックな感すらあります。
その劇的さを残したまま再現部に突入し、第1主題を変形した結尾で締めくくられます。
「No.1」:「ヴァイオリン・ソナタ 第1番 第1楽章」
終始ヴァイオリンが主導的な立ち位置にあるのが特徴的な楽曲です。
キャッチな出だしが印象的な第1主題、幾分郷愁的で感傷的な第2主題のバランスが良い楽曲です。
展開部前に差し込まれるピアノによる第1主題の回想が可愛らしいですね。
結尾では軽快に駆け上がり、第1主題の変形で締めくくられます。
<おすすめ度★★>
「No.8」:「ヴァイオリン・ソナタ 第3番 第2楽章」
ヴァイオリンが奏でる穏やかな調べと、突如として高められる調べの配置が印象的な楽曲です。まるで感情の起伏を表出した、どこかオペラのアリアを思わせる構成になっています。
「No.5」:「ヴァイオリン・ソナタ 第2番 第2楽章」
歌唱旋律がとても美しい、抑制の効いた主要主題が印象的です。その後に続く副主題的な位置にある起伏の変化に富んだ楽句との、コントラストが面白い楽曲です。
「No.10」:「ヴァイオリン・ソナタ 第3番 第4楽章」
フィナーレに相応しい華麗で軽快な序奏から始まり、終始動的で劇的な主題の応酬が印象的です。
間にそっと配置された静かな楽句を除き、勢いは結尾まで保持されている熱情的な楽曲です。
「No.2」:「ヴァイオリン・ソナタ 第1番 第2楽章」
ピアノの前奏のあと、ひっそりと歌い上げられるヴァイオリンの音色が美しい楽曲です。
まるで祈りを歌にしたかのような楽曲でありながら、ピアノ伴奏の重厚さも相まって重苦しい雰囲気を纏っています。
中間では幾らか明るさを取り戻すものの、やはり重いですね。
<おすすめ度★>
「No.3」:「ヴァイオリン・ソナタ 第1番 第3楽章」
ピアノとヴァイオリンとの掛け合いが印象的な楽曲です。
少し陰鬱で、速いテンポとリズムを主要主題が特徴的です。その後の副主題で勢いに活気がつき、優美さを増します。
「No.4」:「ヴァイオリン・ソナタ 第2番 第1楽章」
ピアノとヴァイオリンとが主導的な立場を分け持っています。熱情的な部位と静謐な部位とのメリハリがある楽曲です。
「No.6」:「ヴァイオリン・ソナタ 第2番 第3楽章」
ピアノとヴァイオリンの掛け合いの、併走しているような様相が面白い楽曲です。
「No.9」:「ヴァイオリン・ソナタ 第3番 第3楽章」
閑話に挟み込まれた小さな句のような楽曲です。
各曲の楽章が有機的に統一されていて、如何にもブラームスの書法といった感がありますね。とりわけ「第1番」は最たる物でしょう。
コンパクトに纏められている感じもしますね。
演奏時間も中程度で、ブラームスの室内楽を聴く手始めとしてうってつけかもしれんな。
【観想】副題付きの楽曲。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
ブラームスは、標題を伴った音楽を作曲しなかったことで知られています。
ですが、今回紹介した「ヴァイオリン・ソナタ 第1番」のように副題をもった作品があります
これは、「第3楽章」に自身の歌曲「リートと歌 第1部」(Op.59)の第2曲「雨の歌」の旋律を使用したことに端を発しています。
ブラームス本人がヴァイオリン・ソナタに付した題名ではないのですね。
ライナーノーツ(門真直美氏著)でも、「ブラームス自身の命名によるのではないのだが、ブラームスの作品59のなかの歌曲『雨の歌』(そしてさらに『余韻』)の旋律から第3楽章の主題を導き出しているからである。」とあります。
この「雨の歌」の主題は全楽章に渡って関連性を持ち、綿密で緊密な配置により「第1番」を纏め上げています。
そのため、「雨の歌」や「雨の歌のソナタ」という愛称で親しまれたのでしょう。
純音楽の権化のようなブラームスの作品に、副題がある背景が知れて面白いですね。
音楽家の略歴です。
<略歴> ヨハネス・ブラームス 【独】1833-1897 大バッハ、ベートーヴェンと並びドイツ音楽の「3B」と称される。初期にはピアノ曲、歌曲、室内楽曲を中心に作曲、後期は交響曲、協奏曲等の大作が多い。ロマン派音楽のなかにありながら純音楽の伝統に固執、歌劇や標題音楽は手掛けなかった。新古典派とも呼ばれ、形式主義美学を主張するE.ハンスリックから強く支持された。 (「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
ブラームスの作品には、標題付きはないのでしょうか。
歌曲を除けば、見当たらないな。音楽に表面的な文学性を持ち込みたくないという頑なさを感じるな。
【追想】弦楽器の妙技。
渋さの極みです。
「ヴァイオリン/チェロの名曲名演奏 弦楽器の魅力をたっぷりと」(渡辺和彦[著] / 音楽の友社)です。
弦楽器が主役を務める作品を多く紹介しています。今回紹介したブラームスのヴァイオリン・ソナタでは、「第1番」と「第3番」が取り上げられています。
この書籍でも「第1番」に「雨の歌」がタイトルとして付されたエピソードを記載しています。
加えて、続く「残響」という歌曲も同じ主題であることを示唆しています。
「作曲家の友人だった詩人・作家のクラウス・クロードという、あまり有名でない文学者の詩によっていて、どちらも、雨を見ると昔のことを思い出す、といった内容になっている。」(118ページ抜粋)
また、「第3番」の「第2楽章」について、スーク氏のエピソードも含めて記載しているのが面白いですね。
いずれにせよ、ブラームスの弦楽作品、とりわけ室内楽曲はとても渋くて素敵です。聴けば聴くほど味わいが深まっていきます。
ブラームスの歌曲「雨の歌」を聴いてみたくなりました。
そうだな。主題を自身の他作品から転用するケースも珍しくないので、元ネタに触れるのは重要なことだな。
【雑想】下手の横好き。(第59弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。
DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。
下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
引き続き、ブラームス編でした。
「あれ?ピアノ協奏曲 第2番は?」と思われるかもしれません。「第2番」については、エレーヌ・グリモー氏が演奏したアルバムで紹介します。
・棚卸しを兼ねたアルバム紹介なので、纏まりのないグルーピングになってしまいます。
さて、ブラームスの室内楽です。難渋の一言ですね。
では、また。
「『ピアノ協奏曲 第2番』は別途紹介」ということですね。
演奏家の括りでグルーピングされている場合もあるからな。楽しみに待っておこう。
ところで、ブラームスの室内楽は難渋なのでしょうか。そもそも「難渋」という単語自体滅多にお目にかかれません。
まあ、「よほどのクラシック愛好家でないと、食指は動かない程度に難解」といったニュアンスだろうな。