こんにちは。はーねうすです。
今回は、「ブラームス チェロ・ソナタ 第1&2番」を紹介します。
ブラームスが作曲したチェロ・ソナタは第1番と第2番のみなので、このアルバムは実質の全集と言って良いでしょう。嬉しいですね。
チェロの演奏はエミール・クライン氏、ピアノ演奏はヴォルフガング・マンツ氏です。
ブラームスの室内楽ですね。今度はチェロ曲のようですね。
規模も大きく、いかにもブラームスらしい渋さがあるぞ。
目次
【着想】長短のバランス。
「ブラームス チェロ・ソナタ 第1&2番」のコンテンツです。
全2曲で、しかも長調と短調の2調に分かれているので、調和が良く感じます。
ブラームスの室内楽に通底する渋みを、長短ともにバランス良く満喫できます。
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | チェロ・ソナタ 第1番 ホ短調 | 第1楽章:Allegro non troppo | Op.38 |
2 | チェロ・ソナタ 第1番 ホ短調 | 第2楽章:Allegretto quasi Menuetto | Op.38 |
3 | チェロ・ソナタ 第1番 ホ短調 | 第3楽章:Allegro | Op.38 |
4 | チェロ・ソナタ 第2番 ヘ長調 | 第1楽章:Allegro vivace | Op.99 |
5 | チェロ・ソナタ 第2番 ヘ長調 | 第2楽章:Adagio affetuoso | Op.99 |
6 | チェロ・ソナタ 第2番 ヘ長調 | 第3楽章:Allegro passionato | Op.99 |
7 | チェロ・ソナタ 第2番 ヘ長調 | 第4楽章:Allegro molto | Op.99 |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.4」:「チェロ・ソナタ 第2番 第1楽章」
モチーフの多様さに聴き惚れる楽曲です。また、楽器間の受け渡しや役回り、絡み合いといった構造も面白いですね。
勇壮で豪胆な第1主題は、全楽章を象徴するかのような逞しさを持っています。
明暗併せ持つ第2主題は、哀愁を帯びた美しい曲想が特徴です。
主題が複雑に変容した展開部のあとに控える再現部は、さらりと淡泊です。そして穏やかな結尾を迎えます。
「No.5」:「チェロ・ソナタ 第2番 第2楽章」
歌唱風に奏でられるチェロとの旋律がとても美しい楽章です。
旋律美に彩られた主要主題もよいのですが、中間に位置する経過句が魅力的です。
どこか物語の転換点を示すような訥々とした、チェロとピアノの調べが対話的で可愛らしいです。
<おすすめ度★★>
「No.6」:「チェロ・ソナタ 第2番 第3楽章」
情熱的でアジタート、同型反復で真に迫ってくる曲調はベートーヴェンの作品を想起させます。
先達から学んだ音楽性を自作へと昇華した音楽を思わせます。
「No.7」:「チェロ・ソナタ 第2番 第4楽章」
前3楽章を回想するかのような、総評のような位置づけにある最終楽章です。
モチーフが豊富なので、短いながらも情報が圧縮されて詰め込まれたといった様相の面白さがあります。
「No.1」:「チェロ・ソナタ 第1番 第1楽章」
チェロが先導的に奏でる陰鬱で哀歌風の第1主題が印象的です。
転じて少し熱を帯びた感情で歌い上げる第2主題が対比的に配置されています。
展開部はより多層的で複雑です。
再現部はほぼ提示部と同じで、牧歌的で穏やかな結尾で締めくくられます。
「No.2」:「チェロ・ソナタ 第1番 第2楽章」
明確な3拍子を刻む、リズミカルな楽章です。跳ねた舞踏曲ですね。
中間部ではチェロとピアノが併走するのが心地よいです。
古典的な3部形式に則った、典型的なメヌエット楽章といった印象です。
<おすすめ度★>
「No.3」:「チェロ・ソナタ 第1番 第3楽章」
チェロとピアノが互いに主部を受け持つ、情熱的な主要主題が印象的です。
常に動き回っている感が強い楽曲で、結尾に至るまで勢いを保持してゴールします。
第1番は「哀愁」、第2番は「勇壮」といった対極的な曲想を持つソナタですね。
ブラームスの二面性を堪能するのに適したアルバムと言えるでしょう。
第2番の第2楽章がとても素敵です。
ブラームスの室内楽でも、一際美しく魅力的な楽曲だな。
【観想】具象と抽象。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
クラシック音楽の音楽用語として、速度記号や発想表記があります。
とくに、発想表記はユニークなものを見かける場合があります。
(エリック・サティの発想表記はとりわけ面白いです。)
今回紹介したアルバムで見てみましょう。
「No.2」の「~quasi Menuetto」の場合は、メヌエットという舞曲名が含まれているので、「3拍子で古典的な楽曲」をイメージできます。
対して、「No.5」は「~affetuoso」という「愛情を込めて」や「情趣を豊かに」といった感性を寄った表記になっています。
速度記号との組み合わせから、「ゆったりとした穏やかで優しい楽曲」という漠然としたイメージになりますね。
具象的で共通のイメージを持ちやすいものから、抽象的で演奏家の感性を拠り所にするものまで、様々な表記があって面白いですね。
音楽家の略歴です。
<略歴> ヨハネス・ブラームス 【独】1833-1897 大バッハ、ベートーヴェンと並びドイツ音楽の「3B」と称される。初期にはピアノ曲、歌曲、室内楽曲を中心に作曲、後期は交響曲、協奏曲等の大作が多い。ロマン派音楽のなかにありながら純音楽の伝統に固執、歌劇や標題音楽は手掛けなかった。新古典派とも呼ばれ、形式主義美学を主張するE.ハンスリックから強く支持された。 (「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
ところで「affetuoso」というのは何語ですか。
イタリア語だな。音楽用語は基本的にイタリア語が主体になるな。
【追想】晦渋の弦楽曲。
難解な楽曲という意味です。
「ヴァイオリン/チェロの名曲名演奏 弦楽器の魅力をたっぷりと」(渡辺和彦[著] / 音楽の友社)です。
ブラームスの「チェロ・ソナタ 第3番」を紹介しています。
気になったのは「晦渋」(123ページ抜粋)という熟語ですね。この書籍に出会うまでにまったく触れたことのない単語でした。
しらべて見ると「難解」という意味だそうです。
ブラームスの室内楽は確かに深みがありすぎて、「難解」とされていまいます。
ですが単に「難解」というのではなく「晦渋」や「難渋」といった表現の方が、ブラームスの作品に寄せた表現らしくて良いですね。
漢字が持つ独特の「雰囲気」が、対象の特性までもを良い荒らさしているようで面白いですよね。
音楽を言語で表現するのは、当たり前ですが限界があります。
なので、その限界にある溝を少しでも埋めてくれる単語と出会うと、嬉しくなりますよね。
端的に表現している単語や文章にであると、嬉しくなりますよね。
漠然と抱いていた概念のようなものを、端的に文章化されたのを見つけると嬉しくなるな。まさに言い得て妙というやつだな。
【雑想】下手の横好き。(第61弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。
DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。
下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
変則回を挟んでのブラームス編でした。
「affetuoso」という発想表記や「晦渋」といった印象表現などの、「言葉の使用」について着目してみた回になりましたね。
さて、次回も引き続きブラームスの回になります。
では、また。
「晦渋」。新しい熟語にも出会えて、面白かったですね。
ブラームスの音楽に興味がなかったら、一生出会わなかったかもしれないな。