こんにちは。はーねうすです。
今回は、「ブラームス ピアノ・ソナタ全集」を紹介します。
ブラームスの初期ピアノ作品が纏められたアルバムです。全集マニアとしては垂涎の内容ですね。CD2枚組のボリュームとなっています。
ピアノ演奏は、ジュリアス・カッチェン氏です。
★打ち込みクラシック
DAW(Digital Audio Workstation)で入力したクラシック音楽のDTM(DeskTop Music)作品を紹介するコーナーを巻末に設けています。
今回紹介するアルバムの中から1曲をピックアップしていますので、是非お楽しみください。
久方ぶりの全集の紹介ですね。ピアノ・ソナタが全集の対象のようですね。
ソナタ以外では、ブラームスが初期に手掛けたピアノ独奏曲が網羅されているといっても過言ではないぞ。
目次
【着想】初期の力作。
「ブラームス ピアノ・ソナタ全集」のコンテンツです。
ブラームスの記念すべき作品番号1 (Op.1)から作品番号10 (Op.10)のピアノ独奏曲が収録されています。ブラームスの初期に属するピアノ独奏曲が、作品番号順に納められていることになりますね。
CD1
No.1 | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | ピアノ・ソナタ 第1番 ハ長調 | 第1楽章:アレグロ | Op.1 |
2 | ピアノ・ソナタ 第1番 ハ長調 | 第2楽章:アンダンテ | Op.1 |
3 | ピアノ・ソナタ 第1番 ハ長調 | 第3楽章:アレグロ・モルト・エ・コン・フォート | Op.1 |
4 | ピアノ・ソナタ 第1番 ハ長調 | 第4楽章:アレグロ・コン・フォート | Op.1 |
5 | ピアノ・ソナタ 第2番 ヘ短調 | 第1楽章:アレグロ・ノン・トロッポ・マ・エネルジーコ | Op.2 |
6 | ピアノ・ソナタ 第2番 ヘ短調 | 第2楽章:アンダンテ・コン・エスプレッショーネ | Op.2 |
7 | ピアノ・ソナタ 第2番 ヘ短調 | 第3楽章:スケルツォ (アレグロ) | Op.2 |
8 | ピアノ・ソナタ 第2番 ヘ短調 | 第4楽章:ソステヌート – アレグロ・ノン・トロッポ・エ・ルバート | Op.2 |
9 | スケルツォ 変ホ短調 | ― | Op.4 |
CD2
No.1 | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調 | 第1楽章:アレグロ・マエストーソ | Op.5 |
2 | ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調 | 第2楽章:アンダンテ・エスプレッシーヴォ | Op.5 |
3 | ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調 | 第3楽章:スケルツォ (アレグロ・エネルジーコ) | Op.5 |
4 | ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調 | 第4楽章:アンダンテ・モルト | Op.5 |
5 | ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調 | 第5楽章:アレグロ・モデラート・マ・ルバート | Op.5 |
6 ~ 22 | シューマンの主題による変奏曲 | 主題 – 第1変奏 ~ 第16変奏 | Op.9 |
23 | 4つのバラード | 第1番 ニ短調「エドワード」 | Op.10 |
24 | 4つのバラード | 第2番 ニ長調 | Op.10 |
25 | 4つのバラード | 第3番 ロ短調 | Op.10 |
26 | 4つのバラード | 第4番 ロ長調 | Op.10 |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「CD2_No.1 」~「CD2_No.5」:「ピアノ・ソナタ 第3番」(全楽章)
全楽章が素晴らしいですね。おこがましい言い方になりますが、非の打ち所がない名作です。
[第1楽章]
冒頭の跳躍する重厚な和音と、それを抑制した曲調に変形したモチーフが組み合わさって形成する第1主題が、全体を支配した楽曲ですね。
一転して第2主題は晴れ渡ったかのように明るさを伴っています。第1主題と第2主題の対比構造がすてきですね。
展開部は、提示部の圧縮と再現部前の伏線的なモチーフの扱いが素晴らしいです。
再現部は提示部の繰り返しではなく、抒情性を加味した曲調になっています。
[第2楽章]
静かに歌い上げられる、厳粛で祈りのような楽曲ですね。
内省的な感傷を吐露しているかのようで、聴いていると切なさが込み上げてきます。
末尾に向け、徐々に力強く盛り上がりますが、最後は消え入るように締めくくられます。
[第3楽章]
上昇する装飾音と、下降するエネルギッシュなモチーフで構成される主要主題が印象てきです。
コラール風の抒情的な中間主題との組み合わせも素敵ですね。
要所に配されたモチーフが他楽章との関連性を表現した、バラエティに富んだ楽曲ですね。
[第4楽章]
低音部で奏でられる、3連符や5連符のモチーフが印象的な楽曲です。ベートーヴェンの運命の動機を連想します。音型の類似性というだけでなく、モチーフの扱い方といった点でも似ていると言えそうですね。
「間奏曲」と副題が付いています。そのため、ブラームスの後期ピアノ曲の特徴である「間奏曲」の先駆けとも捉えられそうですね。
ライナーノーツ(柴田龍一氏著)には、「確かに間奏的な役目の楽章ではあるが、それと同時に、後年にブラームスがピアノ独奏曲で愛好することになった<インテルメッツォ>というジャンルにも接近した感覚もここにある。」と評しています。
[第5楽章]
フィナーレに相応しい豪壮な主要主題が特徴的な楽曲です。
主要主題の反復に挟まれた2つの副主題も素敵です。優美で歌唱的なひとつめの副主題、晴れ晴れとして勇壮的なふたつめの副主題の配置がいいですね。
結尾も各部位のモチーフが詰め込まれていて、勢いとも相まって盛り上がりを効果的に演出しています。
<おすすめ度★★>
「CD1_No.4」:「ピアノ・ソナタ 第1番 第4楽章」
前進的な印象を受ける、どこか晴れ晴れとした曲調の楽曲です。
繰り返される力強い同型の音型で構成された主要主題が特徴的です。
結尾も勇壮で、フィナーレに相応しい楽曲になっています。
「CD1_No.5」:「ピアノ・ソナタ 第2番 第1楽章」
豪胆で劇的、ヒステリックとさえ言えそうな第1主題が特徴の楽曲です。
そんな激情的な曲調の隙間に差し込まれたかのような、優しげな旋律を持つ第2主題とのバランスが素敵ですね。
提示部を圧縮した、展開部での技巧的な処理も素晴らしいです。
「CD2_No.23」:「4つのバラード 第1番」
とても静かな主題で、まるでやさしく語りかけてくるようです。中間部では劇的に転換し、ドラマを盛り上げています。
ブラームスのバラードは、ショパンのバラードとは一味異なった内容ですね。
語りかけてくるような曲調とドラスティックな転換点が見事に配置された楽曲です。ドラマティックな展開を期待させるよりも、均整の取れた楽曲に重点を置いたという趣向を感じ取れる楽曲です。
<おすすめ度★>
「CD1_No.2」:「ピアノ・ソナタ 第1番 第2楽章」
陰があり暗い曲調の主題が、徐々に過食されていくような楽曲です。
「CD1_No.9」:「スケルツォ」
主要主題のモチーフがキャッチで、記憶に残りやすい楽曲です。
高音域と低音域の役割が各所で変化するのが面白い構成となっています。
ブラームスの最初期の楽曲というだけあって、野心的な作品が多いという印象を受けるアルバムですね。
ピアノ・ソナタでは、冒頭から勢いづく楽曲が多い気がしますね。
最初期の作品に見られる傾向かもしれんな。だが、緩徐楽章の静謐な雰囲気は、後年の作風に通じるところがあるぞ。
【観想】ピアノとキャリア。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
ブラームスは、ピアニストとして音楽家のキャリアをスタートさせています。
最初期に発表した作品は、自然とピアノ曲が中心になっていますね。
作品番号では、「ピアノ・ソナタ 第1番」が「作品番号1」となっています。
ですが、実際は「作品番号4」の「スケルツォ」、「作品番号2」の「ピアノ・ソナタ 第2番」の後に作曲されています。
つまり、正式に作品番号が付いた楽曲としては、「スケルツォ」が最初に作曲された作品となるわけですね。
そんな「スケルツォ」ですが、1851年に完成したブラームスが18歳のときの作品です。
ですが、初演は16年後の1867年だそうです。加えて、ブラームス自身の演奏だったということです。
自作品に対して厳しい姿勢をとっていたブラームスのことです。最初の作品に対して慎重になていたのかも知れませんね。
音楽家の略歴です。
<略歴> ヨハネス・ブラームス 【独】1833-1897 大バッハ、ベートーヴェンと並びドイツ音楽の「3B」と称される。初期にはピアノ曲、歌曲、室内楽曲を中心に作曲、後期は交響曲、協奏曲等の大作が多い。ロマン派音楽のなかにありながら純音楽の伝統に固執、歌劇や標題音楽は手掛けなかった。新古典派とも呼ばれ、形式主義美学を主張するE.ハンスリックから強く支持された。 (「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
ピアニストとしてのスタートですか。ロマン主義の音楽家に見られる傾向でしょうか。
専業作曲家という方が珍しい時代ではあるな。ピアノは自身の作品を発表するのに、最も適した楽器という点も見逃せないぞ。
【追想】初期の譜面。
音域の広さに驚かされます。
「ブラームス ピアノ曲集1」(門馬直美[解説] / 全音楽譜出版社)です。
今回紹介したアルバムの楽曲が、すべて網羅された楽譜です。
一見して分かるのですが、音域の広さに驚かされます。
上段では、1オクターブ上げて演奏する「8va」の表記が随所にあります。
また下段では、高域や低域に関わらず、五線譜から外れている箇所が見受けられます。
そして、和音です。片手では届かない和音については、両手で補い合う形にしていたり、アルペジオで崩して演奏するような指示でなされています。
19世紀のピアノは、鉄鋼による強靱なフレームが作られるようになり、音域の幅が現在の形に完成されました。
そのような情勢にあって、ブラームスも音域の可能性にチャレンジしたと考えても不思議ではないと思います。
確かに「8——」といった表記が多いですね。
圧倒的な音域の扱いに驚嘆していまうよな。
【雑想】下手の横好き。(第64弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
「Studio One」シリーズで打ち込んだクラシック音楽をお披露目するコーナーです。
今回は、<おすすめ度★★★>として紹介したブラームスの「ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調 第3楽章」です。
作曲家:ヨハネス・ブラームス 作曲年:1853
他作品を含め、下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
引き続き、ブラームス編でしたね。
前回に紹介した「ピアノ名演集」とは対照的に、最初期に作曲されたブラームスの初々しさが詰まったアルバムでしたね。
少年期から青年期にかけて制作された楽曲群ということもあり、前進的でエネルギーに満ちた作品が多いですね。
とりわけバッハやベートーヴェンといった先達をリスペクトしていたことが見て取れる作品もあります。また、同じロマン主義時代の先輩である、シューマンやショパンを意識していたことを匂わせる作品もあります。
そのため、ブラームスに特有の「難渋」や「晦渋」といったイメージは若干希薄ですね。
ですが、所々にみられるポリフォニックな処理は如何にもブラームスといった感があり、「渋い」といった評価に違いはないと思います。
では、また。
若き日のブラームスですか。威勢があって良いですよね。
学んだことを表現したいといった気負いもあったのかもしれんな。