こんにちは。はーねうすです。
今回は、「プロコフィエフ ピアノ・ソナタ Vol.1 (ピアノ・ソナタ 第8番 / 第9番 / トッカータ)」を紹介します。
プロコフィエフのピアノ・ソナタ全集の第1弾ですね。ボーナス・トラックのように、「トッカータ」が収録されているのは素敵ですね。
ピアノ演奏は、ピョートル・ドミトリエフ氏です。
・アルバムの原題は「SERGEI PROKOFIEV Piano Sonatas・Vol.1」です。
プロコフィエフのピアノ・ソナタ全集ですね。
「Vol.1」から「Vo.3」の、全3巻で構成されているな。
目次
【着想】ラストの2題。
「プロコフィエフ ピアノ・ソナタ Vol.1 (ピアノ・ソナタ 第8番 / 第9番 / トッカータ)」のコンテンツです。
プロコフィエフのピアノ・ソナタは、未完で断章のみが残されている第10番を除くと、すべてで9作品あります。このアルバムでは、ラストの2作品が収められていることになります。
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | Sonata No.8 | 1st mov: Andante dolce | Op.84 |
2 | Sonata No.8 | 2nd mov: Andante sognando | Op.84 |
3 | Sonata No.8 | 3rd mov: Vivace | Op.84 |
4 | Sonata No.9 | 1st mov: Allegretto | Op.103 |
5 | Sonata No.9 | 2nd mov: Allegretto strepitoso | Op.103 |
6 | Sonata No.9 | 3rd mov: Andante trnquillo | Op.103 |
7 | Sonata No.9 | 4th mov: Allegro con brio, ma non troppo presto | Op.103 |
8 | Toccata | ― | Op.11 |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.3」:「Sonata No.8 3rd mov」(ピアノ・ソナタ 第8番 第3楽章)
如何にもプロコフィエフらしい、リズムとテンポ感に満ちています。無窮動に動き回る音型と幅の広い和音が特徴ですね。
第8番のソナタを特徴付ける冒頭のモチーフが印象的です。
その後に続く、駆け回るようなパッセージとの組み合わせで構成されている第1の主題、何処か戯けたリズムとハーモニーで構成されてる第2の主題で綴られています。
また、中間部では酷く静まりかえった箇所が不気味さを伴っており、この点もプロコフィエフ作を特徴付ける要素として見なせそうです。
<おすすめ度★★>
「No.1」:「Sonata No.8 1st mov」(ピアノ・ソナタ 第8番 第1楽章)
調性からはみ出した曲調が特徴的な楽曲です。厳密な無調音楽でないところも特徴ですね。
静謐で単線のように動く旋律線を伴った主題が美しい静的な部位と、劇的で無窮動に展開する動的な部位の、対比構造が特徴的です。
「No.6」:「Sonata No.9 3rd mov」(ピアノ・ソナタ 第9番 第3楽章)
物静かなリード線と重苦しいバス線が組み合わさった抑制の効いた曲調で始まる楽曲です。
突如として始まる劇的な部位や、回帰するかのように改められる静謐な部位の配置は、ソナタの楽章というよりも、幻想曲やバラードといった独立した楽曲としての構造を伴っています。
「No.8」:「Toccata」(トッカータ)
同型反復で特徴付けられる楽曲で、終始激しく威圧的で野性味があります。
バロックや古典の主義や形式の上に、近現代の手法や時代精神を載せた野趣に溢れた作品です。
「No.5」:「Sonata No.9 2nd mov」(ピアノ・ソナタ 第9番 第2楽章)
如何にもプロコフィエフらしい、上昇型のスケールがモチーフになっている楽曲です。
中間部に配置された静寂さ纏った部位との対比も特徴となっていますね。
<おすすめ度★>
「No.2」:「Sonata No.8 3rd mov」(ピアノ・ソナタ 第8番 第2楽章)
古典主義時代の緩徐楽章に倣ったかのような、柔和な主題が印象的です。
「No.4」:「Sonata No.9 1st mov」(ピアノ・ソナタ 第9番 第1楽章)
控えめで落ち着いた曲調の部位と、ドラスティックに転じる部位の配置が特徴的です。
「No.7」:「Sonata No.9 4th mov」(ピアノ・ソナタ 第9番 第4楽章)
リズミカルで、何処かシニカルな印象を持たせる主題が特徴です。中間部では静謐な音響を伴っているのも特徴ですね。
「トッカータ」を除けば、プロコフィエフ晩年の作品群と言えますね。
前衛的な作風と、大衆への迎合を目指した作風とが綯い交ぜになったようなのも、プロコフィエフの晩年を特徴付ける要因なのかもしれませんね。
プロコフィエフのピアノには、どこか「鋼鉄」のようなイメージがあります。
堅固といったところだな。強烈なスタッカートで打鍵される、幅の広い和音のためかもしれんな。
【観想】前衛と調性。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
ピアノ・ソナタ 第8番は、第6番と第7番とのパッケージで「戦争ソナタ」とも呼ばれています。作品の内容が「戦争」に纏わる訳ではなく、単に「第二次世界大戦 (1939年 – 1944年)」の間に作曲されたためですね。
さて、第8番のソナタですが、調性からはみ出した感のある曲調のものから、調性を保った曲調のものがあって、面白いです。
例えば、「No.1」の「第1楽章」は、調性感が曖昧で、ふわりとした足場が不安定な曲調になっています。脱調性っといったところでしょうか。
対して、「No.2」の「第2楽章」は、古典的な曲想も相まって、調性感が明確です。
実際作品としては、調性音楽の位置づけで、主調は「変ロ長調」です。因みに第9番は「ハ長調」です。
プロコフィエフの晩年の作品には、前衛の精神を超えて、明快な作風に転じた時代や社会といった外圧もバックグラウンドにはあります。
そのようなプロコフィエフの遍歴を考慮すると、晩年の集大成といった傾向も見受けられて面白いですよね。
音楽家の略歴です。
<略歴> セルゲイ・セルゲーエヴィチ・プロコフィエフ 【露】1891-1953 帝政ロシア末期のロシア・モダニズムから、ソ連の社会主義リアリズムの時代にわたる長期の作曲活動によって、20世紀を代表する作曲家の一人。ロシア革命後、アメリカ、西ヨーロッパで活躍したが、1933年祖国に復帰。従来の前衛的なものから、ソ連の現状に合った大衆的方向に修正、明快で新鮮な作風をつくりあげた。
無調音楽ではないのですね。
厳密な意味でな。主調を回避するような「脱調性」といった音楽であることには間違いはないがな。
【追想】ピアニズムの歴史。
ロシア・ピアニズムの背景が知れる一冊です。
「ロシア・ピアニズムという贈り物」(原田英代[著] / みずず書房)です。
卓越したピアニストや作曲家を数多く誕生させ、かつ「ロシア的な響き」といった一種の特異性について探求した内容を記した一冊です。
ロシアにおける、音楽の黎明期から始まる壮大な内容でとても面白いです。
無論、プロコフィエフにも言及されています。
「プロコフィエフのラフマニノフ解釈」(274 – 275ページ)が新鮮でした。
勝手な思い込みで、プロコフィエフはラフマニノフを「認めていない」と考えていました。そのため、プロコフィエフが演奏するラフマニノフの「前奏曲 作品23-5」があると知って驚きました。
また、その演奏内容から導き出されるプロコフィエフによるラフマニノフ解釈も慧眼でした。
プロコフィエフによるラフマニノフの演奏ですか。気になりますね。
是が非でも聴いてみたいな。
【雑想】下手の横好き。(第70弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。
DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。
下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
引き続き、プロコフィエフ編でした。
今回紹介したアルバムは、プロコフィエフのピアノ・ソナタ全集で、全3巻の1巻目に相当します。
1巻目が「第8番」と「第9番」という、時系列に沿っていない収録スタイルに、幾分か驚かされましたね。
では、また。
次は「Vol.2」ですね、どのナンバリングが収録されているかが楽しみですね。
ランダム配置っぽいアルバムも、ひとくせあって面白いな。