こんにちは。はーねうすです。

今回は、「小川典子, 滝廉太郎から坂本龍一までを弾く – 日本のピアノ曲 80年の歩み -」を紹介します。

19世紀末から20世紀全般における、日本の近現代音楽を代表する作曲家によるピアノ曲を収録したアルバムです。

ピアノ演奏は、小川典子氏です。

原題は、「JUST FOR ME, NORIKO OGAWA PLAYS JAPANESE PIANO MUSIC」です。

★打ち込みクラシック

DAW(Digital Audio Workstation)で入力したクラシック音楽のDTM(DeskTop Music)作品を紹介するコーナーを巻末に設けています。
今回紹介するアルバムの中から2曲をピックアップしていますので、是非お楽しみください。

やってきました、変則回ですね。

日本の作曲家による「ピアノ曲」を集めたアルバムのようだな。

【着想】現代日本のピアノ曲。

「小川典子, 滝廉太郎から坂本龍一までを弾く – 日本のピアノ曲 80年の歩み -」のコンテンツです。

「小川典子, 滝廉太郎から坂本龍一までを弾く - 日本のピアノ曲 80年の歩み -」です。
小川典子, 滝廉太郎から坂本龍一までを弾く – 日本のピアノ曲 80年の歩み - レーベル[BIS]

クラシック音楽の系統に属する、近現代音楽におけるピアノ音楽の経緯と推移を堪能できるアルバムです。

No.作曲家曲名(1)曲名(2)作品番号
1TAKI, RentarōTwo Piano PiecesMenuetto in B minor
2TAKI, RentarōTwo Piano PiecesGrudge
3MITSUKURI, ShūkichiThree Piano Pieces after the FlowerNight RhapsodyOp.16
4MITSUKURI, ShūkichiThree Piano Pieces after the FlowerSakuraOp.16
5MITSUKURI, ShūkichiThree Piano Pieces after the FlowerEs ist März, der FrühlingOp.16
6SUGAWARA, MeiroSteam
7HASHIMOTO, KunihiroThree piano piecesPluie dans la rue
8HASHIMOTO, KunihiroThree piano piecesSorite de leçon de la petite danseuse
9HASHIMOTO, KunihiroThree piano piecesNocturne
10KIYOSE, YasujiRyūkyū DanceAndante
11KIYOSE, YasujiRyūkyū DanceLento
12KIYOSE, YasujiRyūkyū DanceAndante
13KANAI, kikukoRyūkyū Dance: Maidens Under the Moon
14HAYASAKA, FumioAutumn
15KOYAMA, KiyoshigeKagome-Variation
16YASHIRO, AkioNocturne
17NAKATA, YoshinaoVariational Étude
18SAKAMOTO, RyūichiPiano SuiteVivace scherzando
19SAKAMOTO, RyūichiPiano SuiteLento
20SAKAMOTO, RyūichiPiano SuiteRisolute
21SAKAMOTO, RyūichiJust For Me

ちょっとした所感です。

<おすすめ度★★★>

「No.13」:KANAI, kikuko「Ryūkyū Dance: Maidens Under the Moon」

(金井喜久子「琉球舞踏曲:月夜の乙女たち」)

琉球音楽を西洋音楽の構造に組み込んだ楽曲です。

琉球音階がペンタトニックでもあるので、印象主義音楽のように処理されています。それらが伴奏型やパッセージに現れていて、とてもユニークです。

「No.2」:TAKI, Rentarō「Two Piano Pieces『Grudge』」

(滝廉太郎「憾」)

一貫して同型のモチーフで象られて構成された楽曲です。

激情的な曲調と重厚な伴奏が特徴の楽曲です。

滝の代表作である歌曲群に見られる柔らかなイメージとは異なっていて、良い意味で滝に抱く固定観念を払拭してくれる作品です。

<おすすめ度★★>

「No.17」:NAKATA, Yoshinao「Variational Étude」

(中田喜直「変奏的練習曲」)

規模が大きい、自由な変奏曲風に展開する練習曲です。

ドラスティックな変化を見せる重厚な曲想、感傷的優美なモチーフが詰まった楽句、無窮動に駆け巡るパッセージなど、バラエティに富んでいます。

「No.21」:SAKAMOTO, Ryūichi「Just For Me」

(坂本龍一「ぼく自身のために」)

表現主義的な構造を多分に盛り込んだ楽曲です。

調性音楽と無調音楽の狭間を漂うかのような、不思議な感覚とともに、幾許かの感傷性を享受する曲調が特徴です。

「No.7」:HASHIMOTO, Kunihiro「Three piano pieces『Pluie dans la rue』」

(橋本國彦「雨の道」)

曲調、構成、調性のいずれもが自由で、束縛から放たれた感のある楽曲です。

幾分かは印象主義音楽の書法を想起させられます。

「No.14」:HAYASAKA, Fumio「Autumn」

(早坂文雄「秋」)

ロマン主義的な楽曲です。ショパンの夜想曲から発展したような、フランス風の愛らしい楽曲です。

<おすすめ度★>

「No.1」:TAKI, Rentarō「Two Piano Pieces『Menuetto in B minor』」

古典に倣った形式と構造が明快な楽曲です。

トリオ部の可愛らしく仕上げられています。

「No.4」:MITSUKURI, Shūkichi「Three Piano Pieces after the Flower『Sakura』」

(箕作秋吉「花に因んだ3つのピアノ曲『さくら さくら』」)

「さくら」の主題を使用した、自由な変奏曲です。

技巧的な展開に重点があるというよりも、感傷的なテーマの発展と、和声の変化が特徴的な楽曲です。


近代日本が西洋音楽を、どのように受け取り、発展したのかが分かるアルバムですね。民俗的な要素を加えて発展させたパターンや、純粋に西洋器楽曲の系統を踏襲して現代音楽を発展させたパターンなどがあり、面白いです。

「小川典子, 滝廉太郎から坂本龍一までを弾く - 日本のピアノ曲 80年の歩み -」です。
小川典子, 滝廉太郎から坂本龍一までを弾く – 日本のピアノ曲 80年の歩み - レーベル[BIS]

日本の西洋近代化の歴史を端緒とした、日本の音楽史を聴いている感じになりますね。

西洋への憧憬と、東洋の同一性が綯い交ぜになった感があるな。

【観想】世界で初の録音。

魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。

今回紹介したアルバムに収められた楽曲は、「日本で誕生したピアノ曲」という特異性があります。

オーソドックスなクラッシック音楽と比しても知名度が低いため、レコードなどの録音媒体に記録されることも稀のようです。

そのため、今回紹介したアルバムには、「世界初録音」となる楽曲が多数含まれています。

「No.3」~「No.5」:箕作秋吉「花に因んだ3つのピアノ曲」

「No.6」:菅原明朗「水煙」

「No.7」~「No.9」:橋本國彦「3つのピアノ曲」

「No.10」~「No.12」:清瀬保二「琉球舞踏」

「No13」:金井喜久子「琉球舞踏曲『月夜の乙女たち』」

「No.14」:早坂文雄「秋」

「No.16」:矢代秋雄「夜曲」

「No.18」~「No.20」:坂本龍一「ピアノ組曲」

ほとんどですね。

無論、「世界初録音」という物珍しさだけのアルバムではありません。

とりわけ滝廉太郎の「メヌエット」と「憾」は貴重です。滝が残したたった2つの器楽曲というだけでなく、近代日本における「西洋音楽」の黎明期に作曲された「器楽曲」という点が貴重と言えます。

そんな貴重な2曲も収められた、素敵なアルバムです。

音楽家の略歴です。

<略歴> 瀧廉太郎
【日】1879-1903
東京音楽学校で小山作之助らに学ぶ。1897年に「日本男児」を作曲し、雑誌「音楽」に発表。1900年「メヌエット」を作曲、「組曲『四季』」を出版する。1901年ドイツのライプチヒ音楽学校に合格するが、感冒にかかる。1902年に帰国。1903年に遺作となる「憾」を作曲する。同年に逝去。
(瀧廉太郎全曲集「瀧廉太郎年譜一覧」よりブログ管理者により作成)

世界で初めて録音がされた、ということですね。

商業上の目的としては、あまり人口に膾炙した作品ではないため敬遠されていた、というのも理由かもしれんな。

【追想】瀧廉太郎の全曲集。

瀧廉太郎の全作品が詰まっています。

「瀧廉太郎 全曲集 作品と解説」です。
瀧廉太郎 全曲集 作品と解説 小長久子[編] 音楽之友社

「瀧廉太郎 全曲集 作品と解説」(小長久子[編] / 音楽之友社)です。

瀧廉太郎が残した、現存する楽曲の楽譜すべてが収められています。

1897年に発表された「日本男児」から、1903年の没年に作曲された「憾」までが網羅されています。

また、作曲ではなく、「作歌」として残された詩も収録されています。

「古城」「砧」「枯野の夕景」ですね。

また、山田耕筰が編曲した「荒城の月」と「秋の月」の楽譜もあり、とても貴重です。

23年という短い一生の中で、これほどの作品を残したのかと、改めて驚かされる一冊です。

全点が網羅されていますね。

途轍もなく貴重だな。

【雑想】下手の横好き。(第72弾)

クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。

「Studio One」シリーズで打ち込んだクラシック音楽をお披露目するコーナーです。

今回は、<おすすめ度★★★>として紹介した瀧廉太郎の「憾」と<おすすめ度★★>として紹介した瀧廉太郎の「メヌエット」です。

作曲家:瀧廉太郎 作曲年:1903 (憾)
作曲家:瀧廉太郎 作曲年:1900 (メヌエット)

他作品を含め、下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。

・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)

クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。

・ミュージック(8bit クラシック_01)

長く続く趣味を持ちたいです。

今回は変則回でした。

とても珍しい、日本の作曲家の作品集でしたね。しかも「ピアノ曲」に限ったラインナップでした。

なかなか聴く機会のないアルバムを見つけると、嬉しくなりますよね。

次回からは、またプロコフィエフ編に戻ります。

では、また。

珍しい作品を収めたアルバムで、とても新鮮でした。

このようなアルバムに出会うと、幸せに感じるよな。