こんにちは。はーねうすです。
今回は、「プロコフィエフ ピアノ・ソナタ Vol.3 (第2番/第4番/第6番)」を紹介します。
一連のプロコフィエフのピアノ・ソナタ全集のラストを飾るアルバムですね。
ピアノ演奏は、ピョートル・ドミトリエフ氏です。
・アルバムの原題は「SERGEI PROKOFIEV Piano Sonatas・Vol.3」です。
前々回に引き続き、プロコフィエフのピアノ・ソナタ全集ですね。
偶数番が集められたラインアップで構成されているな。
目次
【着想】ソナタの変遷。
「プロコフィエフ ピアノ・ソナタ Vol.3 (第2番/第4番/第6番)」のコンテンツです。
初期に属するロマンティックな楽曲から、オリジナルな前衛の響きを有する楽曲まで、プロコフィエフのピアノ・ソナタの変遷が垣間見られるアルバムです。
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | Sonata No.2 | 1st mov: Allegro ma non troppo | Op.14 |
2 | Sonata No.2 | 2nd mov. Scherzo. Allegro marcato | Op.14 |
3 | Sonata No.2 | 3rd mov. Andante | Op.14 |
4 | Sonata No.2 | 4th mov. Vivace | Op.14 |
5 | Sonata No.4 “From Old Notebooks” | 1st mov. Allegro molto sostenuto | Op.29 |
6 | Sonata No.4 “From Old Notebooks” | 2nd mov. Andante assai | Op.29 |
7 | Sonata No.4 “From Old Notebooks” | 3rd mov. Allegro con brio, ma non leggiere | Op.29 |
8 | Sonata No.6 | 1st mov. Allegro moderato | Op.82 |
9 | Sonata No.6 | 2nd mov. Allegetto | Op.82 |
10 | Sonata No.6 | 3rd mov. Tempo di valzer lentissimo | Op.82 |
11 | Sonata No.6 | 4th mov. Vivace | Op.82 |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.8」:「Sonata No.6 1st mov. 」(「ピアノ・ソナタ 第6番 第1楽章」)
第7番、第8番とともに「戦争ソナタ」と称される楽曲の属する、最初の楽曲です。
暴力的とも言える打鍵が繰り返される強烈な主題と、静けさの中で穏やかに歌われる優美な主題のコントラストが特徴の楽曲です。
加えて、鍵盤上を激しく動き回る機械的な音型の主題などが合わさった、複合的に構成されたユニークな楽曲です。
「No.4」:「Sonata No.2 4th mov.」(「ピアノ・ソナタ 第2番 第4楽章」)
無窮動に駆け回る、軽やかなモチーフの連続が特徴の楽曲です。
目まぐるしく姿形を変える楽想が印象的で、落ち着きを与えないような、幾分攻撃的な曲調が面白いです。
「No.6」:「Sonata No.4 2nd mov.」(「ピアノ・ソナタ 第4番 第2楽章」)
不穏な重低音の動きに支配された導入と、続く高音域で奏でられる美麗な旋律線の組み合わせが美しい楽曲です。
中間部の瞑想的な曲調が印象派風で、とりわけ優美です。
後半に控えたドラスティックな変化の後に訪れる、静寂な部位も殊更美しい楽曲です。
<おすすめ度★★>
「No.10」:「Sonata No.6 3rd mov. 」(「ピアノ・ソナタ 第6番 第3楽章」)
表現主義的な主題に、印象主義的な雰囲気を纏わせた不思議な曲調が特徴の楽曲です。
中間部に配置された楽想が、一際美しく彩られています。
「No.1」:「Sonata No.2 1st mov.」(「ピアノ・ソナタ 第2番 第1楽章」)
ロマン主義的な冒頭からは想像もできない、期待を裏切られるように変化する構成がユニークな楽曲です。
緩急が入り乱れたり、突拍子もなく強弱を付けたり、同型を執拗に繰り返したりなど、情緒不安定な様相が特徴です。
「No.7」:「Sonata No.4 3rd mov」(「ピアノ・ソナタ 第4番 第3楽章」)
軽やかに弾む様を描くような曲調が印象的な楽曲です。
中間部では愛らしい旋律が姿を現し、癒やしの時間を与えてくれます。
コーダは終楽章に相応しく、派手に締めくくられます。
<おすすめ度★>
「No.5」:「Sonata No.4 1st mov.」(「ピアノ・ソナタ 第4番 第1楽章」)
低音部の重苦しい和音と、高音部の軽く弾んだ装飾的な音型との組み合わせが印象的な楽曲です。
「No.9」:「Sonata No.6 2nd mov.」(「ピアノ・ソナタ 第6番 第2楽章」)
同音反復型の伴奏の上に、目まぐるしく変化する旋律が印象的な楽曲です。
一聴して如何にもプロコフィエフ的な構造だと理解できるのも特徴です。
「No.11」:「Sonata No.6 4th mov.」(「ピアノ・ソナタ 第6番 第4楽章」)
無窮動に動き回る、不気味さと陽気さが入り混じった曲調が特徴です。
猛スピードで締めくくられるコーダも印象的です。
鈍重で暴力的、鋭利で攻撃的な面が際立つかと思いきや、優美で繊細な旋律が歌われる面など、様々な情趣が入り混じっていてとてもユニークです。プロコフィエフの楽曲に一貫して感じ取られる心象を多分に含んだアルバムですね。
鈍重で鋭利…、確かにプロコフィエフの楽曲に備わった心象ですね。
特徴の一面ではあるな。ピアノ曲以外を聴くとまた違った心象を受けると思うぞ。
【観想】調性の表記。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
プロコフィエフのピアノ・ソナタ全集として紹介させていただいた、「プロコフィエフ ピアノ・ソナタ Vol 1 ~ Vol.3」ですが、アルバムでは調性の表記がありませんでした。
プロコフィエフの作品では、主調として調性はあっても、そこから外れていたり、崩れている点が魅力でもありますので、「調性表記」は必須とはならないのかも知れません。
ですが、折角なので一覧として纏めておこうと思います。
・第1番:ヘ短調
・第2番:ニ短調
・第3番:イ短調
・第4番:ハ短調
・第5番:ハ長調
・第6番:イ長調
・第7番:変ロ長調
・第8番:変ロ長調
・第9番:ハ長調
・第10番:ホ短調 (未完)
楽譜を見ると直ぐに理解できるのですが、シャープやフラットなどの臨時記号のオンパレードです。主調が度外視されている様が良く分かります。
面白いですね。
音楽家の略歴です。
<略歴> セルゲイ・セルゲーエヴィチ・プロコフィエフ 【露】1891-1953 帝政ロシア末期のロシア・モダニズムから、ソ連の社会主義リアリズムの時代にわたる長期の作曲活動によって、20世紀を代表する作曲家の一人。ロシア革命後、アメリカ、西ヨーロッパで活躍したが、1933年祖国に復帰。従来の前衛的なものから、ソ連の現状に合った大衆的方向に修正、明快で新鮮な作風をつくりあげた。
調性表記をならべると、却って特徴のない楽曲群と思えてしまいます。
確かに不思議だよな。それだけクラシック音楽と調性表記が馴染んでいるのだろう。
【追想】ピアニストの系譜。
ルーツが面白いです。
「ロシア・ピアニズムという贈り物」(原田英代[著] / みずず書房)です。
卓越したピアニストや作曲家を数多く誕生させ、かつ「ロシア的な響き」といった一種の特異性について探求した内容を記した一冊です。
ロシア・ピアニズムの礎となった音楽家として、ジョン・フィールドの存在を挙げています。(22~30ページ)
アイルランドのピアニスト、ジョン・フィールドは1802年にサンクトペテルスブルクに渡り、その後定住したようです。(フィールドいえば、ノクターンの創始者としても有名です)
その後、ピアノ音楽の教育者としてピアノ演奏技術を普及させていく運びとなったみたいですね。
そのピアノ演奏技術は「ジュ・ペルレ」と呼ばれる奏法でう。
面白いエピソードとしては、ラフマニノフの祖父であるアルカージー・アレクサンドロヴィチ・ラフマニノフがフィールドに師事したアマチュア音楽家で、「ジュ・ペルレ」を身につけたそうです。
因みに、「ジュ・ペルレ」はフランス語「Ju Perlé」で「真珠の響き」という訳になります。
ジョン・フィールドですか。どのようなピアニストなのでしょうか。
18世紀末から19世紀中頃の音楽家で、特に「ノクターン(夜想曲)」を創始した作曲家として有名だな。
【雑想】下手の横好き。(第73弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。
DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。
下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
変則回を挟んでのプロコフィエフ編でした。
今回紹介したアルバムは、プロコフィエフのピアノ・ソナタ全集で、全3巻の3巻目に相当します。ピアノ・ソナタ全集としてはラストになりましたね。
Vo.2と同様に「第2番」、「第4番」と「第6番]という、偶数番を揃えたチョイスが面白いですよね。
次回は、プロコフィエフのピアノ協奏曲を紹介する予定です。
では、また。
ピアノ・ソナタの全集が終わりましたね。
前衛的な現代音楽に触れる、良い機会になったな。