こんにちは。はーねうすです。
今回は、「トルストイのワルツ ~ロシア文豪の音楽~」を紹介します。
音楽を専業としていない、小説家や画家、舞踏家が作った楽曲が収められたアルバムです。物珍しさに惹かれた一枚ですね。
主にピアノ曲と歌曲で構成されています。
ピアノ演奏は、レーラ・アウエルバッハ氏です。
お待ちかねの変則回ですね。
ロシアを代表する作家陣の音楽作品で、主にピアノ曲が集められているぞ。
目次
【着想】ロマン主義と近現代の音楽。
「トルストイのワルツ ~ロシア文豪の音楽~」のコンテンツです。
アルバムに収められている作曲者(小説家、画家、舞踏家)が活躍した時代と整合するように、作曲された楽曲の曲調も、19世紀から20世紀前半の音楽に近しい趣向になっています。
No. | 作曲者(本業) | 曲名 | 作品番号 |
1 | レフ・トルストイ(作家) | ワルツ ヘ長調 | ― |
2 | アレクサンドル・グリボエードフ(作家) | ワルツ 変イ長調 | ― |
3 | アレクサンドル・グリボエードフ(作家) | ワルツ ホ短調 | ― |
4 | ボリス・パステルナーク(作家) | 前奏曲 変ホ短調 | ― |
5 | ボリス・パステルナーク(作家) | 前奏曲 嬰ト短調 | ― |
6 | ボリス・パステルナーク(作家) | ピアノソナタ | ― |
7 | ウラジーミル・オドエフスキー(作家) | センチメンタルなワルツ | ― |
8 | ウラジーミル・オドエフスキー(作家) | カノン | ― |
9 | ウラジーミル・オドエフスキー(作家) | 子守歌 | ― |
10 | ウラジーミル・オドエフスキー(作家) | ワルツ | ― |
11 | ヴァシーリー・ポレーノフ(画家) | 別れの歌 | ― |
12* | ヴァシーリー・ポレーノフ(画家) | 我が心は暗く | ― |
13* | ヴァシーリー・ポレーノフ(画家) | 海へ | ― |
14* | パヴェル・フェドートフ(画家) | 可愛い女 | ― |
15* | パヴェル・フェドートフ(画家) | カッコウ | ― |
16* | セルゲイ・ディアギレフ(バレエ) | 憶えているかい、マリヤ | ― |
17 | ジョージ・バランシン(バレエ) | ヴァルス・レント | ― |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.6」:ボリス・パステルナーク「ピアノソナタ」
スクリアビンの第5番以降のピアノ・ソナタを彷彿とさせる楽曲です。
神秘的な音響で始まる冒頭が魅力的です。
急展開、緩急の落差などの要素が、如何にも20世紀音楽を感じさせます。
「No.5」:ボリス・パステルナーク「前奏曲 嬰ト短調」
後期ロマン主義で、どことなくスクリアビンの音楽を想起させる楽曲です。
力強い主題、急展開する構成などが特徴です。前奏曲としては構成の規模が大きい楽曲ですね。
<おすすめ度★★>
「No.1」:レフ・トルストイ「ワルツ ヘ長調」
優しさに満ちた典型的なワルツです。
どこと儚げで脆さも感じさせる、優美な楽曲です。
「No.8」:ウラジーミル・オドエフスキー「カノン」
バロック音楽の様式に倣った、多声部で構成された音楽です。
リズムに特徴があり、19世紀に好まれたスタイルを感じさせます。
「No.17」:ジョージ・バランシン「ヴァルス・レント」
瞑想的で穏やかに進行するワルツです。
感傷的で抑制された美しい楽曲です。
「No.2」:アレクサンドル・グリボエードフ「ワルツ 変イ長調」
軽やかなワルツで、ショパンの作品をイメージしてしまう楽曲です。
<おすすめ度★>
「No.15」:パヴェル・フェドートフ「カッコウ」
カッコウの鳴き声を模した箇所が印象的な歌曲です。
「No.12」:ヴァシーリー・ポレーノフ「我が心は暗く」
歌詞に即したメランコリックな曲調が特徴の楽曲です。
音楽を専業にしていないとはいえ、完成度が非常に高い作品ばかりで驚くばかりです。
本業である作品を知れば、なお一層、驚きを感じられます。
一聴して、プロの作品かと思わされる作品が多いですね。
アマチュアの域を脱している感があるな。
【観想】多才と多芸。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
収録されている楽曲のすべてが完成度の高い作品ばかりです。
そのため、作曲者の名前を挙げられない限り、「知られざる作曲家の作品」や「有名音楽家の隠れた名品」と受け取ってしまっても仕方がないというほど、素敵な楽曲ばかりです。
ロシアでは、専業の傍らで音楽や絵画などの芸術作品を発表した作家を輩出した時期がありました。(いわゆる日曜作家)
有名どころでは、「展覧会の絵」や「禿山の一夜」の作曲家モデスト・ペトローヴィチ・ムソルグスキー(1839 – 1881)ですね。
専業は公務員(官吏→文官)として生計を立てていました。(あまり優秀ではなかったそうです)
他にも、オペラ「イーゴリ公」の作曲家アレクサンドル・ポロディン(1833 – 1877)が有名ですね。
専業は化学で、アルデヒドの研究分野でかなりの評価を得ていたようです。
多才で多芸な逸材の宝庫ですね。
音楽家の略歴です。
レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ(作家) (1828 - 1910) 代表作:「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」 アレクサンドル・セルゲーヴィチ・グリボエードフ(作家) (1795 - 1829) 代表作:「知恵の悲しみ」 ボリス・レオニードヴィチ・パステルナーク(作家) (1890 - 1960) 代表作:「ドクトル・ジバゴ」 ウラジーミル・フュードロヴィチ・オドエフスキー(作家) (1804 - 1869) 代表作:「幽霊」「4338年」 ヴァシーリー・ドミトリエヴィチ・ポレーノフ(画家) (1844 - 1927) 代表作:「キリストの生涯」 パヴェル・アンドレーヴィチ・フェドートフ(画家) (1815 - 1852) 代表作:「貴族の朝食」 セルゲイ・パヴロヴィチ・ディアギレフ(バレエ) (1872 - 1929) 代表作:興行師/プロデューサー、雑誌「芸術世界」 ジョージ・バランシン(バレエ) (1904 - 1983) 代表作:振付師、「ミューズを率いるアポロ」
多才で多芸ですか。
いわゆるマルチタレントだな。必ずしもロシアに限ったことではないぞ。有名なところでは、メンデルスゾーンは画家としても成功していたと言われるほどの腕前だぞ。
【追想】長編の小説。
分冊化される長編の小説が多いです。
「アンナ・カレーニナ(上)」(トルストイ[作] / 中村融[訳] / 岩波文庫)です。
「上」「中」「下」の全3巻構成ですね。長編です。長いです。
(因みに同じ岩波文庫から出版されている「戦争と平和」は全6巻です。)
ロシア文学では、ツルゲーネフやチェーホフなどを好んでいましたが、トルストイでは唯一「アンナ・カレーニナ」を所有しています。
何度か映画化もされる小説ですね。
1997年に公開された「アンナ・カレーニナ」(ソフィー・マルソー(主演) / バーナード・ローズ(監督) / アメリカ)をレンタルビデオで鑑賞した記憶があります。
何にせよ、トルストイ作は長いのです。
本当に長いです。
冊子も分厚いよな。
【雑想】下手の横好き。(第78弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。
DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。
下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
変則回でした。
今回紹介したアルバムは、小説家や画家が手掛けた音楽作品が集められたアルバムでした。
各作家のプロフィールを見ると、幼少期からピアノなどの楽器を嗜んでいることが知られます。日常に音楽が溶け込んでいたことを窺い知れて面白いです。
次回は、ショスタコーヴィチ編に戻ります。
では、また。
音楽家以外が手掛けた音楽作品を聴くのも、楽しいですよね。
このようなアルバムに出会えるのも、貴重な体験だよな。