こんにちは。はーねうすです。
今回は、「ショスタコーヴィチ オーケストラ歌曲とワルツ集」を紹介します。
ショスタコーヴィチの作品としては、珍しい部類に入る歌曲が収められたアルバムですね。
加えて、ショスタコーヴィチのライフワークでもあった映画音楽の中から、ワルツばかりを集めたという面白い構成になっています。
面白い組み合わせですね。
ショスタコーヴィチ作としては、聴く機会が少ない歌曲が収められているのが貴重だな。
目次
【着想】シニカルな歌曲とキャッチなワルツ。
「ショスタコーヴィチ オーケストラ歌曲とワルツ集」のコンテンツです。
風刺の効いた詩や批評などの文芸作品を元にした歌曲群は、如何にもショスタコーヴィチらしい趣向になっています。
反して、カップリングとして収められた映画音楽は、大衆受けしそうなキャッチな響きに彩られていますね。
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1* | レビャードキン大尉の4篇の詩 <フョードル・ドストエフスキーの『悪霊』から> | 1. レビャードキン大尉の恋 | Op.146 |
2* | レビャードキン大尉の4篇の詩 <フョードル・ドストエフスキーの『悪霊』から> | 2. ゴキブリ | Op.146 |
3* | レビャードキン大尉の4篇の詩 <フョードル・ドストエフスキーの『悪霊』から> | 3. 家庭教師のための舞踏会 | Op.146 |
4* | レビャードキン大尉の4篇の詩 <フョードル・ドストエフスキーの『悪霊』から> | 4. 晴れやかな人 | Op.146 |
5* | 風刺詩(過去の絵) <サーシャ・チョールヌイの詩による5つのロマンス> | 1. 批評家へ | Op.109 |
6* | 風刺詩(過去の絵) <サーシャ・チョールヌイの詩による5つのロマンス> | 2. 春の目覚め | Op.109 |
7* | 風刺詩(過去の絵) <サーシャ・チョールヌイの詩による5つのロマンス> | 3. 子孫 | Op.109 |
8* | 風刺詩(過去の絵) <サーシャ・チョールヌイの詩による5つのロマンス> | 4. 誤解 | Op.109 |
9* | 風刺詩(過去の絵) <サーシャ・チョールヌイの詩による5つのロマンス> | 5. クロイツェル・ソナタ | Op.109 |
10* | 雑誌『クラカディール』24号(1782)の詞による5つのロマンス <1965年8月30日付> | 1. 直筆の供述書 | Op.121 |
11* | 雑誌『クラカディール』24号(1782)の詞による5つのロマンス <1965年8月30日付> | 2. 無理な頼み | Op.121 |
12* | 雑誌『クラカディール』24号(1782)の詞による5つのロマンス <1965年8月30日付> | 3. 分別 | Op.121 |
13* | 雑誌『クラカディール』24号(1782)の詞による5つのロマンス <1965年8月30日付> | 4. イリンカと羊飼い | Op.121 |
14* | 雑誌『クラカディール』24号(1782)の詞による5つのロマンス <1965年8月30日付> | 5. 思いがけない喜び | Op.121 |
15* | 私の作品全集への序文と序文についての短い考察 | ― | Op.123 |
16 | 映画音楽からの8つのワルツ | 映画音楽<マキシムの帰還>から | Op.45 |
17 | 映画音楽からの8つのワルツ | 映画音楽<黄金の山々>から | Op.30 |
18 | 映画音楽からの8つのワルツ | 映画音楽<箕チューリン>から | Op.78 |
19 | 映画音楽からの8つのワルツ | 映画音楽<ピラゴフ>から | Op.76 |
20 | 映画音楽からの8つのワルツ | 映画音楽<馬あぶ>から | Op.97 |
21 | 映画音楽からの8つのワルツ | 映画音楽<第一梯団>から | Op.99 |
22 | 映画音楽からの8つのワルツ | 映画音楽<団結>(大河の歌)から | Op.95 |
23 | 映画音楽からの8つのワルツ | 劇付随音楽<人間喜劇>から | Op.37 |
トーマス・ザンデリンク(指揮)、ロシア・フィルハーモニー管弦楽団
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.21」:「映画音楽からの8つのワルツ 映画音楽<第一梯団>から」
ムード音楽のような曲調と展開、明快で記憶に残りやすいキャッチな旋律が特徴の楽曲です。
有名な楽曲で、作曲者がショスタコーヴィチだと知って驚く作品のひとつですね。
「No.19」:「映画音楽からの8つのワルツ 映画音楽<ピラゴフ>から」
長閑な雰囲気を醸す、旋律が美しい楽曲です。
次第に豪奢な舞踏会の様相へと転じているかのような構成が面白いです。
<おすすめ度★★>
「No.9」:風刺詩(過去の絵) <サーシャ・チョールヌイの詩による5つのロマンス> 5. クロイツェル・ソナタ」
悲嘆めいた歌唱の後、すっと入り込んでくるヴァイオリンの音色が印象的な楽曲です。
タイトルになっているベートーヴェンの楽曲を惹起させる工夫や、ドラマ性、展開や変転などが織り込まれた内容の充実した楽曲です。
「No.15」:「私の作品全集への序文と序文についての短い考察」
色々と詰め込まれた情報密度の濃い、シニカルな楽曲です。
一瞬多重化(合唱)する声楽の箇所がユニークです。因みに「ドミトリー・ショスタコーヴィチ」という歌詞の部分です。
「No.5」:「風刺詩(過去の絵) <サーシャ・チョールヌイの詩による5つのロマンス> 1. 批評家へ」
短い楽曲の中に、見事に内容が圧縮された作品です。
起伏と諧謔を伴った曲想がユニークな楽曲です。
<おすすめ度★>
「No.12」:「雑誌『クラカディール』24号(1782)の詞による5つのロマンス <1965年8月30日付> 3. 分別」
まるで呪詛のように、抑揚のない歌唱が特徴の楽曲です。
「No.17」:「映画音楽からの8つのワルツ 映画音楽 <黄金の山々>から」
陰鬱なオーケストラと、弦を爪弾いたような音との組み合わせの冒頭が印象的な楽曲です。
徐々に明快で陽気なワルツに転じていく様も素敵ですね。
「No.20」:「映画音楽からの8つのワルツ 映画音楽 <馬あぶ>から」
休息を思わせる、伸びやかで優しげな曲想が特徴の楽曲です。
「No.23」:「映画音楽からの8つのワルツ 劇付随音楽 <人間喜劇>から」
陽気に弾けた、まるで生を謳歌しているかのような力強さを感じる楽曲です。
ショスタコーヴィチのシニカルな部分が前面でた歌曲、というのが面白いアルバムですね。
映画音楽では、大衆性、娯楽性を汲み取った上で、「映画という総合芸術の一部としての音楽の在り方」を示しているとも受け取れるアルバムですね。
映画音楽には、聴き応えがありますよね。
ワルツばかりを集めた、というのもユニークだよな。
【観想】ピアノ・パートのオーケストラ・アレンジ。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
今回紹介させていただいたショスタコーヴィチの歌曲ですが、原曲はすべてピアノ伴奏です。
アルバムでは、管弦楽曲に編曲されていますね。
編曲者は、「No.1」から「No.14」がボリス・ティシチェンコ氏で、「No.15」がレオニード・デェシャードニコフ氏です。
伴奏部を管弦楽が担当する歌曲の場合は、とても華やかで煌びやかな、そして豪華な印象になります。
伴奏部をピアノが担当する歌曲の場合とは、趣が異なります。
そのため、ピアノ伴奏部を管弦楽に編み直した場合、印象が異なってしまうのかもしれません。
正直なところ、今回紹介したアルバムの「ピアノ伴奏の原曲版」を聴いたことがないので、なんとも観想が難しいですね。いつか聴いてみたいです。
音楽家の略歴です。
<略歴> ドミートリイ・ドミートリエヴィチ・ショスタコーヴィチ 【露】1906-1975 1920年代には西ヨーロッパのモダニズムの傾向を吸収した斬新な作品を展開。第2次大戦をはさむ10年間は、伝統的様式を重んじた壮大な作品を生んだ。'60年代からは西ヨーロッパの前衛的技法に近づき、人間の内面的苦悩を表現する傑作を残す。つねにソ連音楽の第一人者であると同時に、20世紀最大の作曲家の一人。 (「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
ピアノ伴奏部のオーケストラ・アレンジですか。確かに心象が変わるかもしれませんね。
原曲の本質を如何に損なわないかが、編曲者の手腕とも言えそうだな。
【追想】ピアニスト・ショスタコーヴィチ。
卓越したピアノの腕前です。
「ロシア・ピアニズムという贈り物」(原田英代[著] / みずず書房)です。
卓越したピアニストや作曲家を数多く誕生させ、かつ「ロシア的な響き」といった一種の特異性について探求した内容を記した一冊です。
ショスタコーヴィチについても言及されています。
ショスタコーヴィチが、とても優秀なピアニストでもあったことは有名です。1927年開催の第1回ショパン・コンクールのファイナリストに入選したことが綴られています。
また、ショスタコーヴィチの演奏を記録した音源が残っているようですので、いつか聴いてみたいです。
ショスタコーヴィチが残したコメントなんかもエピソードとして載っていますね。
如何にもショスタコーヴィチらしい皮肉なので、真正面から受け止めると誤解を招いてしまうよな。
【雑想】下手の横好き。(第80弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。
DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。
下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
引き続き、ショスタコーヴィチ編でした。
今回紹介したアルバムは、ショスタコーヴィチの歌曲と映画音楽のカップリングですたね。
歌曲については、いつか原曲であるピアノ伴奏版と聴く比べてみたいですね。オーケストラ・アレンジを学ぶ良い経験になります。
さて、ショスタコーヴィチ編については今回で一段落です。まだ交響曲全集がありますが、別の機会に譲りたいと思います。
次回からは、ストラヴィンスキー編です。
では、また。
ショスタコーヴィチの交響曲全集の紹介ですが、いつになることやら。
全15曲だからな。じっくり時間を掛けるのもよいだろうな。