こんにちは。はーねうすです。
今回は、「ストラヴィンスキー 春の祭典[ピアノ版]」を紹介します。
バレエ音楽「春の祭典」をピアノ2台にアレンジされた楽曲を収録したアルバムです。
ピアノ演奏は、ファジル・サイ氏です。ピアノ2台分を単独で演奏した多重録音ですね。
ストラヴィンスキーのバレエ音楽ですね。
ピアノ用にアレンジされたアルバムだが、原曲に劣らない迫力に満ちた内容になっているな。
目次
【着想】エントロピーとバーバリズム。
「ストラヴィンスキー 春の祭典[ピアノ版]」のコンテンツです。
オーケストラの楽曲である「春の祭典」を、2台のピアノで演奏するという野心的なアルバムです。しかも、2つのパートを単独で演奏し、重ね録りするという演奏家の作品に対する信念を感じさせる内容になっています。
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | 春の祭典 第1部「大地礼讃」 | 序奏 | ― |
2 | 春の祭典 第1部「大地礼讃」 | 春の兆し – 乙女たちの踊り | ― |
3 | 春の祭典 第1部「大地礼讃」 | 誘拐の遊戯 | ― |
4 | 春の祭典 第1部「大地礼讃」 | 春のロンド | ― |
5 | 春の祭典 第1部「大地礼讃」 | 敵対する部族の遊戯 | ― |
6 | 春の祭典 第1部「大地礼讃」 | 賢者の行進 | ― |
7 | 春の祭典 第1部「大地礼讃」 | 大地へのくちづけ | ― |
8 | 春の祭典 第1部「大地礼讃」 | 大地の踊り | ― |
9 | 春の祭典 第2部「いけにえ」 | 序奏 | ― |
10 | 春の祭典 第2部「いけにえ」 | 乙女たちの神秘的な集い | ― |
11 | 春の祭典 第2部「いけにえ」 | 選ばれた乙女への賛美 | ― |
12 | 春の祭典 第2部「いけにえ」 | 祖先の呼び出し | ― |
13 | 春の祭典 第2部「いけにえ」 | 祖先の儀式 | ― |
14 | 春の祭典 第2部「いけにえ」 | いけにえの踊り(選ばれた乙女) | ― |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.2」:「春の祭典 第1部「大地礼讃」春の兆し – 乙女たちの踊り」
冒頭の力強い打鍵が、原初的な躍動を思わせる楽曲です。
既存の形式や構成、和声進行とった伝統を度外視したかのような曲調に満ちあふれています。
「No.3」:「春の祭典 第1部「大地礼讃」誘拐の遊戯」
轟音のように呻きを挙げる、エネルギーの塊が暴発したかのような音響が印象的な楽曲です。
混沌とした世界観を醸し出した内容になっています。
「No.4」:「春の祭典 第1部「大地礼讃」春のロンド」
静謐な印象を持った旋律で構成された前半と、激しく重厚な打音の連続で構成された後半の対比が特徴の楽曲です。
嵐の後の静けさのような部位と、それを覆す騒音のような部位で構成されています。
<おすすめ度★★>
「No.8」:「春の祭典 第1部「大地礼讃」大地の踊り」
ピアノを叩き付ける奏法と、ピアノ線を直に弾く奏法が組み合わさった楽曲です。
途轍もなく豪胆な楽曲ですね。
「No.11」:「春の祭典 第2部「いけにえ」選ばれた乙女への賛美」
挙動が四散するかのような、動機の展開が著しく変化する楽曲です。
「No.13」:「春の祭典 第2部「いけにえ」いけにえの踊り(選ばれた乙女)」
重厚な和音で打ち出される律動と、激しく打ち鳴らされる旋律が、何時止むことなく進行する、旋律と狂気を伴った楽曲です。
「No.1」:「春の祭典 第1部「大地礼讃」序奏」
神秘的な旋律から、徐々に混沌めいた音響に発展する楽曲です。
その後に展開する物語への期待感と、不穏な雰囲気が演出されています。
<おすすめ度★>
「No.6」:「春の祭典 第1部「大地礼讃」賢者の行進」
音と音をぶつかり合わせたかのような、激しい衝撃の音響が特徴の楽曲です。
「No.7」:「春の祭典 第1部「大地礼讃」大地へのくちづけ」
ピアノ線を直に弾く演奏で表現された、ユニークな楽曲です。
「No.9」:「春の祭典 第2部「いけにえ」序奏」
抑制された曲調で進行する、静けさに満たされた、どこか印象主義的な音響が特徴の楽曲です。
まるでエントロピーとバーバリズムを体感しているかの様なアルバムですね。
おすすめという便宜上、各曲を分解して紹介していますが、やはり冒頭から結尾まで通してきくのがベストです。
何よりも、ファジル・サイ氏の演奏とその表現力に圧倒され、興奮します。
管弦楽のピアノ・アレンジとは思えないほど、完成された内容ですね。
楽器の個性をフルに生かしているので、独立した楽曲としても遜色のない作品だな。
【観想】多重録音の妙技。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
今回紹介したアルバムは、「春の祭典」というオーケストラ作品をピアノ2台で演奏するという大胆な内容になっています。
加えて、ファジル・サイ氏が2つのパートを単独で演奏し、重ね録りした「多重録音」という構造になっています。
コンサートなどのライブ演奏では実現が不可能な内容ですね。
「録音技術」によって表現が可能になった演奏スタイルで、ピアニストのグレン・グールド氏も多重録音した楽曲を残しています。
ともかく、ファジル・サイ氏の作品へのアプローチには感服させられます。
ストラヴィンスキーの作品に対する敬意もさることながら、「音作り」にたいする信念と野心が感じ取れます。
ラナーツノートでは、ファジル・サイ氏がファジル・サイ氏にインタビューをするという構成で、音楽に対する哲学を語っています。このような面にも、ファジル・サイ氏の芸術性を感じ取れます。
音楽家の略歴です。
<略歴> イーゴリ・フョードロヴィチ・ストラヴィンスキー 【露→米】1882-1971 ペテルブルク大学で法律を専攻しながらリムスキー=コルサコフに個人教授をうける。1908年、ロシア・バレエ団のための一連の作品「火の鳥」「ペトルーシュカ」「春の祭典」を発表してセンセーションを巻き起こした(第1期)。強烈なリズム感の解放、管弦楽の大胆な極限的効果によってバーバリズム(原始主義)と呼ばれる。第1次大戦後、客観化されたリズムの遊戯を模索、アメリカから興ったジャズの影響を採り入れて新古典主義の時代に入る(第2期)。1952年、従来否定的であった12音技法初めて用い、新しい転換を行うが(第3期)、それ以後の作品には楽壇をリードするほどの力はなくなった。 (「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
多重録音ですね。演奏家のこだわりが滲み出ています。
奏法にも着目だな。ところどころでピアノ線を直接爪弾く奏法が駆使されているぞ。
【追想】音楽家の生涯です。
作風の変遷を追うことができます。
「大作曲家 ストラヴィンスキー」(ヴォルフガング・デームリンク[著] / 長木誠司[訳] /音楽之友社)です。
多くの図版と写真が掲載されていて、とても重宝する良書です。
ストラヴィンスキーと言えば、作風を時期に応じて変えた作曲家で、その点をシェーンベルクに揶揄されたことでも有名です。
とりわけ「シェーンベルクの没後」とタイトル付けされた節には、変転を「良し」とした作曲家の終末を感じ取ることができ、感傷的になってしまいます。
音楽家としては「芸術性の模索」であっても、他作曲家や評論家からは「一貫性がない」「節操がない」として批評されてしまう、という点が心苦しいですね。
そんな音楽家のバックグラウンドを覗き見ることができる一冊です。
ストラヴィンスキーとシェーンベルクですね。同時代に活動した音楽家同士の因縁を感じます。
とりわけシェーンベルク側は辛辣だな。ストラヴィンスキーを批判した内容で作品を残しているぞ。
【雑想】下手の横好き。(第81弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。
DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。
下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
今回から、ストラヴィンスキー編に入りました。
今回紹介したアルバムは、ストラヴィンスキーのバレエ音楽を2台のピアノ用にアレンジしたアルバムでした。
しかも、ファジル・サイ氏がひとりでピアノ2台分を演奏するという、豪胆な試みに感嘆させらる内容でした。
ファジル・サイ氏のアルバムにはいつも驚かされるばかりです。おすすめは「ブラック・アース」です。いつか紹介したいと思います。
では、また。
ストラヴィンスキーの楽曲も然る事ながら、演奏家の技量に魅了されるアルバムでした。
アルバムの帯にあった黒田恭一氏の「ピアノに淫している」という表現が、的を射ていて、「まさに!」と思わされるよな。