こんにちは。はーねうすです。
今回は、「チャイコフスキー 交響曲 第6番 ロ短調 作品74『悲愴』(ピアノ独奏版)」を紹介します。
チャイコフスキーにとって畢竟の作品である「交響曲 第6番 ロ短調」の全楽章を、ヴァルター・ニーマンによってピアノ独奏用に編曲された楽曲を収めたアルバムです。
また、本楽曲の「世界初録音」となるアルバムでもあります。
ピアノ演奏は、岡城千歳氏です。
★打ち込みクラシック
DAW(Digital Audio Workstation)で入力したクラシック音楽のDTM(DeskTop Music)作品を紹介するコーナーを巻末に設けています。
今回紹介するアルバムの中から1曲をピックアップしていますので、是非お楽しみください。
今回からチャイコフスキー編に入りますね。
とはいえ、交響曲の原曲ではなく、ピアノ編曲版の紹介になるがな。
目次
【着想】ピアノで奏でる交響の世界。
「チャイコフスキー 交響曲 第6番 ロ短調 作品74『悲愴』(ピアノ独奏版)」のコンテンツです。
長大な交響曲を、ピアノ1台で演奏するというチャレンジングな内容になっています。また、世界初録音という点も加えて、なかなかに意欲的なアルバムとなっています。
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1* | 交響曲 第6番 ロ短調 | 第1楽章:アダージョ ~ アレグロ・ノン・トロッポ | Op.74 |
2* | 交響曲 第6番 ロ短調 | 第2楽章:アレグロ・コン・グラツィア | Op.74 |
3* | 交響曲 第6番 ロ短調 | 第3楽章:アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ | Op.74 |
4* | 交響曲 第6番 ロ短調 | 第4楽章:アダージョ・ラメントーソ | Op.74 |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.1」:「交響曲 第6番 第1楽章」(ピアノ独奏版)
チャイコフスキーの旋律美を、余すところなく詰め込んだ楽曲です。
厳粛な音響で始められる、何かしら予感めいた導入部から印象的です。
連打で刻まれる、嵐がように襲い来るかのような第1主題は圧巻です。
そして、晴れ渡り澄みきったかのような第2主題が続きます。第1主題とは対比的で、甘美で抒情的な旋律で構成されています。その後の経過句も素敵です。
圧縮された長大な展開部の後、第2主題をメインに再現部を盛り上げます。
徐々にトーンダウンするかのような結尾に入り、静かに締めくくられます。
<おすすめ度★★>
「No.4」:「交響曲 第6番 第4楽章」(ピアノ独奏版)
終楽章としては珍しい、緩徐楽章で構成されています。
そして、全体を物憂げで感傷的な雰囲気に包まれています。
特に、陰鬱な主題が印象的です。どこか厭世的な香がします。
消え入るように幕を閉じるエンディングには、胸が締め付けられる思いがします。
「No.2」:「交響曲 第6番 第2楽章」(ピアノ独奏版)
5拍子で刻まれる、軽快で流麗なメヌエットを思わせる楽曲です。
明快な旋律は、チャイコフスキーのバレエ組曲に似通った箇所があり、心地よい気分で満たされます。
<おすすめ度★>
「No.3」:「交響曲 第6番 第3楽章」(ピアノ独奏版)
活気があり、とても楽観的で肯定感に満ちた楽曲です。
非常にエネルギッシュであり、かつ派手な締めくくり方をするので、終楽章かと勘違いしてしまいます。
原曲である管弦楽曲と聴き比べると、なお一層ピアノ独奏の凄味を感じ取れるアルバムです。
確かに、第3楽章と第4楽章とでは、緩急の落差を強く感じますね。
緩徐楽章をラストにした構成は、チャイコフスキーの生涯を論ずる上で多様な憶測を生むポイントにもなっているな。
【観想】交響曲のピアノ・アレンジ。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
ライナーノーツ(松永晴紀氏著)によると「メンデルスゾーンはゲーテにベートーヴェンの『運命』を弾いて聞かせて感銘を与え、リストは「田園」やベルリオーズの『幻想交響曲』を弾いてオーケストラ以上の効果を上げて聴衆にアピールした」とあります。
今日のように、録音メディアが発達していなかった時代にあって、家庭などの環境ではピアノによる演奏が、その代わりとなっていたと思われます。
ただ、前述のようにメンデルスゾーンやリストのように、卓越した演奏家が演じると趣が異なってきます。まるで原曲とは別の世界を垣間見せたことでしょう。
今回紹介した、ヴァルター・ニーマンによるチャイコフスキーの「交響曲 第6番 ロ短調」の独奏版は、岡城千歳氏の超絶技巧とも相俟って、「ピアノ用に書かれた長大で深遠なソナタ」と勘違いしそうになるほど秀逸な楽曲となっています。
交響曲をピアノ用に編曲した版としては、リストによるベートーヴェンの交響曲群が有名です。リストに限らず、ヴィルトオーゾのピアノによる交響曲の世界を、色々と堪能したいですね。
音楽家の略歴です。
<略歴> ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー 【露】1840-1893 作風は西ヨーロッパの伝統に根ざしたいわゆる<西欧派>または<折衷派>ではあるが、初期には国民楽派の<5人組>とも交流して国民主義的傾向を示した。外国での生活が多い時期には西欧派的作品が多く、1885年帰国してからは、これらを統合した思索性のあるロシア音楽を確立した。
ところで、ヴァルター・ニーマンとはどのような方なのでしょうか。
20世紀中頃までにドイツのドイツの作曲家で、音楽評論家でもあるな。
【追想】圧縮されたピアノ・アレンジ。
ピアノ譜で読む交響曲です。
「新世界 悲愴をピアノで」(KYODO-MUSIC)です。
ドヴォルザークの「交響曲 第9番『新世界より』」とチャイコフスキーの「交響曲 第6番『悲愴』」の全楽章を、水城郁夫氏によってピアノ用に編曲された楽譜です。
全楽章といっても、まるごとすべてという訳ではありません。各楽章は短く圧縮された形で編曲されています。
経過句や再現部を除くなどの手法で、短縮化されていますが、楽曲の本質は損なわれていません。見事な構成になっています。
ピアノ演奏としては、ハイレベルなスキルを要求されます。
「管弦楽曲のフル・スコアを読むのは苦手、ピアノ・スコアで読んでみたい」という願望に適しています。
また、ピアノ譜を通して管弦楽曲の構造を知る手立てとしても重宝します。DAWなどのDTMで打ち込みにながら、勉強するのにも向いています。
すごい。ピアノ・スコアが黒い音符で満ちあふれています。
圧縮された感があって、興奮するよな。
【雑想】下手の横好き。(第87弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
「Studio One」シリーズで打ち込んだクラシック音楽をお披露目するコーナーです。
今回は、<おすすめ度★★★>として紹介したチャイコフスキーの「交響曲 第6番 ロ短調 第1楽章」をピアノ用に編曲された作品です。(【追想】で紹介した「KYODO-MUSIC」の版です)
他作品を含め、下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
今回からチャイコフスキー編になります。
初手から「交響曲のピアノ編曲」という変則的な回になってしまいました。
チャイコフスキーのピアノ曲は、決して少なくはありません。ですが、規模の大きな作品は多くないでしょう。なので、このような交響曲のピアノ・アレンジが魅力的に思えるのです。
次回は、ピアノ協奏曲になります。
では、また。
強固で堅実なピアノ演奏が印象的なアルバムでした。
世界初録音ということもあって、他の追随を許さないという雰囲気もよかったな。