こんにちは。はーねうすです。
今回は、「チャイコフスキー 弦楽セレナーデ/幻想序曲『ロメオとジュリエット』」を紹介します。
ともにチャイコフスキーを代表する著名な楽曲です。
古典に倣った中規模の弦楽と、標題をともなった大規模な管弦楽という、なんとも対照的な楽曲の組み合わせですね。
加えて、演奏はヘルベルト・フォン・カラヤン&ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団なので、とても贅沢な1枚のアルバムとなっています。
★打ち込みクラシック
DAW(Digital Audio Workstation)で入力したクラシック音楽のDTM(DeskTop Music)作品を紹介するコーナーを巻末に設けています。
今回紹介するアルバムの中から2曲をピックアップしていますので、是非お楽しみください。
対照的な作品のカップリングですね。
規模だけでなく、標題性を伴うか否かというのもポイントだな。
目次
【着想】古典と浪漫。
「チャイコフスキー 弦楽セレナーデ/幻想序曲『ロメオとジュリエット』」のコンテンツです。
弦楽セレナーデは、古典主義時代の形式に倣った楽曲です。一方幻想序曲は、如何にもロマン主義時代に開花した標題性を伴った楽曲です。チャイコフスキーの多様性を実感できるアルバムです。
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | 弦楽セレナーデ ハ長調 | 第1楽章:Pezzo in forma di Sonatina. Andante non troppo – Allegro moderato | Op.48 |
2 | 弦楽セレナーデ ハ長調 | 第2楽章:Valse. Moderato. Tempo di Valse | Op.48 |
3 | 弦楽セレナーデ ハ長調 | 第3楽章:Elegia. Larghetto elegiaco | Op.48 |
4 | 弦楽セレナーデ ハ長調 | 第4楽章:Tema russo. Andante – Allegro con sprito | Op.48 |
5 | 幻想序曲『ロメオとジュリエット』 | Andante non tanto quasi moderato – Allegro – Molto meno mosso – Allegro giusto – Moderato assai | ― |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.1」:「弦楽セレナーデ 第1楽章」
序奏ともいうべき、導入部の力強い合奏による主題があまりにも印象的な楽曲です。
主部はテンポの速さと、切れ目のないような連続性がとても心地の良く感じさせる構成になっています。
結尾には導入部の主題が再現されて締めくくられます。
楽想に「Pezzo in forma di Sonatina」(ソナチネ形式の小品)とあるように、古典主義時代の形式美に敬意を払ったかのような構成が特徴となっています。
かつて某転職支援/派遣サービス会社のCM曲で使用されたこともあったので、別の意味でも有名かもしれません。懐かしいですね。
「No.5」:「幻想序曲『ロメオとジュリエット』」
多様なモチーフの扱いが各テーマの輪郭線を明確にし、物語的な展開を一層際立たせた心躍る楽曲です。
シェイクスピアの悲劇「ロミオとジュリエット」のストーリーに登場する人物、情景を想起させるのに適した明快な旋律と音響、そして構成が特徴ですね。
お家間のいざこざというよりも、まるで抗争のような激しさを伴うモンタギュー家とキャピレット家の争いのテーマ。キーパーソンであり慈愛に溢れたローレンス僧の柔和なテーマ。そして悲劇的な結末を内包したロメオとジュリエットの愛のテーマ。などなどのドラマを彩る主要な要素を見事に結実した楽曲です。
最後に愛のテーマを変奏させたコーダで締めくくる演出も素敵です。
争いのテーマは、ビジュアルノベルゲーム「魔法使いの夜」(TYPE-MOON)のバトルシーンで使用されていましたね。ゲーム、とても楽しかったです。
<おすすめ度★★>
「No.4」:「弦楽セレナーデ 第4楽章」
清々しさと侘しさが同居したかのような、最終楽章を飾るフィナーレとしてとても華麗に仕上げられた楽曲です。
何かしらの幕引きを表現したかのような、憂いのある曲調の冒頭の曲調に惹き付けられます。
そして結末に向けて疾駆するような情景が浮かぶ、力強くかつ軽快で疾走感のある曲調が続きます。
最後には第1楽章の導入部が回顧的で懐古的に再現され、徐々に変形を加えられて締めくくられます。
「No.3」:「弦楽セレナーデ 第3楽章」
穏やかで瞑想風の冒頭と、哀愁と憧憬が入り混じったかのような主題が特徴の楽曲です。
曲想に「Elegia」(エレジー、悲歌)とありますが、長調の和声と速めのテンポ、そして力強い合奏で構成されているので、陰鬱な印象は薄いです。
でも聴くと「エレジー」という印象を受けるので、長調でこのような主題を描ける作曲家の技術に感服する楽曲でもあります。
<おすすめ度★>
「No.2」:「弦楽セレナーデ 第2楽章」
軽快なワルツで構成された楽曲です。
バロックや古典のメヌエット楽章の位置づけのような、軽いリズムと明るい旋律が印象的です。
純粋な器楽曲と、文学を題にした器楽曲という対照的な楽曲を楽しめるアルバムですね。
楽器編成の違いで、音楽の色合いが随分と異なりますね。
管楽の扱いで際立つな。裏方に回った場合と、主役を張った場合とでは音響の効果にも影響があるぞ。
【観想】絶対音楽と表題音楽。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
今回紹介したアルバムに収められた2作品は、どちらも器楽曲ではありますが、作曲上のアプローチが対照的です。
いわゆる「絶対音楽」と「標題音楽」の違いですね。
「弦楽セレナーデ」はチャイコフスキーが敬愛するモーツァルトの器楽曲に倣っています。形式を重んじて作曲された、純粋な音楽としての作品になっています。
一方「幻想序曲『ロメオとジュリエット』」は、チャイコフスキーが愛読したシェイクスピア作品である悲劇を題材にして作曲された、音楽以外の芸術を音楽で象った作品になっています。
前者を純粋性から「絶対音楽」、後者を標題性から「標題音楽」と呼ばれます。
音楽美学上の棲み分けという扱いを離れ、対立関係にまで発展させられた経緯を持ちます。有名なところで、ブラームス vs ワーグナーですね。発端は音楽美学者のハンスリックです。
いずれにせよ、チャイコフスキーは二項対立にされやすい音楽を、一方に偏ることなく作曲した芸術家だといえるでしょう。このアルバムが良い例ですね。
音楽家の略歴です。
<略歴> ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー 【露】1840-1893 作風は西ヨーロッパの伝統に根ざしたいわゆる<西欧派>または<折衷派>ではあるが、初期には国民楽派の<5人組>とも交流して国民主義的傾向を示した。外国での生活が多い時期には西欧派的作品が多く、1885年帰国してからは、これらを統合した思索性のあるロシア音楽を確立した。
音楽を、単純な二項対立では語られないと思うのですが。。。
カテゴライズして対立構造化し、バトルを楽しむというのは、今も昔の変わらんのかもしれんな。
【追想】多様な旋律と豊潤な和声。
盛り上げ効果を一望できるフルスコアです。
「チャイコフスキー 弦楽セレナーデ ハ長調 作品48」(全音楽譜出版社)と「チャイコフスキー 幻想的序曲『ロメオとジュリエット』」(日本楽譜出版社)です。
チャイコフスキーの音楽的な特徴を眺めるのに適した楽譜ですね。
「弦楽セレナーデ」は、音楽の肝となる「四声」がどのように流れていくのかが読みやすいです。
一方「幻想的序曲『ロメオとジュリエット』」では、テーマの輪郭線が明確なので、旋律を追うことで展開ポイントが抑えやすいです。
そして、チャイコフスキーならではの盛り上げ効果です。ここぞというところで全パートがほぼ同じ音型を描きます。一目見て分かります。
同じテーマでありながら、比較的穏やかに進行する箇所と、大いに盛り上げる箇所でどのような手法を使っているのかが分かります。とても勉強になります。
対照的な2作品ではありますが、作品に通底する「技法」といったものは変わらないのかもしれませんね。
後半に掛けて、各パートが同型で描かれている箇所が目立ってきます。
輪郭である旋律と同じ動きをさせることで、盛り上げの効果が得られているという典型だな。
【雑想】下手の横好き。(第88弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
「Studio One」シリーズで打ち込んだクラシック音楽をお披露目するコーナーです。
今回は、<おすすめ度★★★>として紹介したチャイコフスキーの「弦楽セレナーデ ハ長調 第1楽章」の序奏部と「幻想序曲『ロメオとジュリエット』」の「愛のテーマ」(ブログ管理者によるピアノ・アレンジ版)です。
他作品を含め、下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
引き続き、チャイコフスキー編でした。
規模感の異なる2作品でしたね。
渋くて粋な弦楽合奏の「弦楽セレナーデ」と、物語的な展開がたのしいまるで映画のような「幻想序曲『ロメオとジュリエット』」。シェイクスピア好きのブログ管理者としては、後者を推します。
次回は変則回になります。
では、また。
弦楽セレナーデには、どこか奥ゆかしさがありましたね。
古典に倣って、形式美と様式美と重点を置いたためかもしれんな。