こんにちは。はーねうすです。

今回は、「チャイコフスキー/シベリウス:ヴァイオリン協奏曲」を紹介します。

両曲ともロマンチックな名曲です。

ヘルベルト・フォン・カラヤン氏指揮&ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏もさることながら、何よりもクリスチャン・フェラス氏の情感たっぷりな表現力が素晴らしいアルバムです。

★打ち込みクラシック

DAW(Digital Audio Workstation)で入力したクラシック音楽のDTM(DeskTop Music)作品を紹介するコーナーを巻末に設けています。
今回紹介するアルバムの中から1曲をピックアップしていますので、是非お楽しみください。

チャイコフスキーとシベリウスのヴァイオリン協奏曲ですね。どちらもロマン主義時代を飾る楽曲です。

加えて、国民主義的な傾向を持つ作曲家という共通点があるな。

【着想】北国のヴァイオリン。

「チャイコフスキー/シベリウス:ヴァイオリン協奏曲」のコンテンツです。

「チャイコフスキー/シベリウス:ヴァイオリン協奏曲」です。
チャイコフスキー/シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 レーベル[Deutsche Grammophon]

19世紀後期と20世紀初期に誕生した両曲ですが、ともにロマン主義時代を飾る名曲です。
加えて、ロシアとフィンランドという北国出身の作曲家の作品という共通点がありますね。

No.作曲家曲名(1)曲名(2)作品番号
1チャイコフスキーヴァイオリン協奏曲 ニ長調第1楽章:Allegro moderatoOp.35
2チャイコフスキーヴァイオリン協奏曲 ニ長調第2楽章:Canzonetta. Andante – attacaOp.35
3チャイコフスキーヴァイオリン協奏曲 ニ長調第3楽章:Finale. Allegro vivacissimoOp.35
4シベリウスヴァイオリン協奏曲 ニ長調第1楽章:Allegro moderatoOp.47
5シベリウスヴァイオリン協奏曲 ニ長調第2楽章:Adagio di moltoOp.47
6シベリウスヴァイオリン協奏曲 ニ長調第3楽章:Allegro, ma non tantoOp.47

ちょっとした所感です。

<おすすめ度★★★>

「No.1」:チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲 第1楽章」

ヴァイオリン独奏の美麗な音色と管弦楽の華麗な合奏の共演に、大変興奮させられる楽曲です。

ヴァイオリンの独奏で提示される第1主題と第2主題が、ともに抒情的明快です。

展開部の後に控えたカデンツァは、第1主題を極度に張り詰めた様相で緊張感に溢れています。

随所に厚みのある合奏で入り込んでくる管弦楽の構成も感動的です。

「No.4」:シベリウス「ヴァイオリン協奏曲 第1楽章」

荒涼とした風景を、音楽と音響で再現したかのような、とても魅惑的な楽曲です。

ヴァイオリン独奏で提示される第1主題は、寒々しさと荒々しさを描き出しているかのようです。一方、第2主題は心情の吐露のように、昂揚とした感があります。

そんな独奏を支えるかのように、管弦楽が寄り添っています。

長いカデンツァも綺麗な線が描かれています。

情景という現象と、情感という心象を表現したような楽曲です。

<おすすめ度★★>

「No.2」:チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲 第2楽章」

内省的感傷的な、モノローグのような楽曲です。

ヴァイオリン独奏による、物憂げで儚げな哀歌風の主要主題が、際だって美しいです。

管弦楽では、管楽が主線を担っている効果もあって、幻想的で夢幻的な空間が演出されています。

「No.5」:シベリウス「ヴァイオリン協奏曲 第2楽章」

緩やかで伸びのある旋律線で表現されている楽曲です。

ヴァイオリンの独奏で提示される、甘くて切ない情緒を内包した主要主題が魅力です。

管弦楽は魅惑的な音響効果を生み出すことで、ヴァイオリン独奏を支えています。

<おすすめ度★>

「No.6」:シベリウス「ヴァイオリン協奏曲 第3楽章」

リズミカルに弾んだ律動と、曲調の変化が特徴の楽曲です。

明朗で快活なイメージを持つ冒頭と、深刻で鬱屈としたイメージを持つ主部の対比が素敵です。

「No.3」:チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲 第3楽章」

迫り来る熱量が圧巻の楽曲です。

独奏と管弦楽による協奏スタイルの典型のような構成で、掛け合いが楽しい楽曲になっています。


ともに西洋音楽の形式と様式に沿った楽曲ですが、いずれも故国に根ざしたアイデンティティが曲想となって表現されていますね。

「チャイコフスキー/シベリウス:ヴァイオリン協奏曲です。
チャイコフスキー/シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 レーベル[Deutsche Grammophon]

北国の音楽ですか。シベリウスの方がより強く「北方」の雰囲気を音楽に閉じ込めている感がありますね。

西欧の中心から外れた北欧で、独自の音楽語法を築き上げたという点が関係するのかもしれないな。

【観想】ニュアンスと美技。

魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。

今回紹介したアルバムですが、何といってもソリストであるクリスチャン・フェラス氏の情感が豊かな表現力に魅了されます。

とりわけチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は、クリスチャン・フェラス氏の演奏が固定観念になってしまいました。

何といえばいいのでしょうか。ニュアンスが素晴らしいのですね。

例えば3連符をすべて同じ長さで演奏するのではなく、先頭を少し長く弾いたりする楽句があります。
また、アウフタクトを少し長く取ったりするなどがあります。

このような、楽譜とは少し異なるニュアンスが魅力なのかもしれません。

それからカデンツァです。

チャイコフスキーとシベリウスのカデンツァはともに技巧的です。それを見事な演奏で纏め上げています。

両曲ともに美麗な線を、圧巻のフレージングで描ききっています。まさに美技です。

音楽家の略歴です。

<略歴> ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
【露】1840-1893
作風は西ヨーロッパの伝統に根ざしたいわゆる<西欧派>または<折衷派>ではあるが、初期には国民楽派の<5人組>とも交流して国民主義的傾向を示した。外国での生活が多い時期には西欧派的作品が多く、1885年帰国してからは、これらを統合した思索性のあるロシア音楽を確立した。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)

<略歴> ジャン・シベリウス
【フィンランド】1865-1957
国民主義作曲家としてあらゆる分野の作品を多数残したが、直接民謡の旋律を用いることはなく、後期ロマン派およびロシア音楽の影響下に、フィンランド固有の音楽語法を消化する独特な様式を完成した。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)

美技ですね。いわゆるファインプレーというやつです。

スポーツで言うファインプレーとは意味合いが異なるぞ。この場合は美術を「ファインアート」という呼ぶことに近しいぞ。

【追想】長大な独奏楽器の譜面。

独奏ヴァイオリンの五線譜に見蕩れます。

「チャイコフスキー バイオリン協奏曲 ニ長調 作品25」です。
チャイコフスキー バイオリン協奏曲 ニ長調 作品25 全音楽譜出版社

「チャイコフスキー バイオリン協奏曲 ニ長調 作品25」(全音楽譜出版社)です。

音楽を聴きながら譜面を追うのが楽しい一冊です。

とくに第1楽章の提示部ですね。ほぼ休みなく演奏される独奏ヴァイオリンの譜面を追うのが楽しいです。

それから【観想】でも述べた、演奏家による「ニュアンス」といったものを発見するのも興趣です。

また、DAWなどのDTMでデータ入力をしていると、作曲家の仕事の素晴らしさだけでなく、演奏家と指揮者の技量が如何に凄まじいのかを思い知らされます。

そんな、愉悦と驚嘆を味わえる楽譜です。

音符の重ね方が独奏楽器用に思えませんね。

ピアノ協奏曲と同様、作曲当初は「演奏不可能」と一蹴されたようだぞ。

【雑想】下手の横好き。(第91弾)

クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。

「Studio One」シリーズで打ち込んだクラシック音楽をお披露目するコーナーです。

今回は、<おすすめ度★★★>として紹介したチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 第1楽章」提示部分の一部抜粋です。加えて、管弦楽のパートをピアノ用にアレンジさせていたあいています。

作曲家:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー 作曲年:1878年
(管弦楽パート・ピアノ編曲:HARNEUS)

他作品を含め、下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。

・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)

クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。

・ミュージック(8bit クラシック_01)

クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。

・ミュージック(8bit クラシック_01)

長く続く趣味を持ちたいです。

チャイコフスキー編に戻ってきました。

演奏家の技巧に魅了されるアルバムでしたね。

本編の【観想】でも述べましたが、表現力の凄さに圧倒されました。以降、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のイメージが、クリスチャン・フェラス氏の演奏で凝り固まってしまいました。

圧巻の演奏に心を奪われる体験ができるのも、協奏曲の魅力ですね。

次回はチャイコフスキーの弦楽四重奏曲を紹介します。

では、また。

独奏がヴァイオリンというだけでなく、北国出身でロマン主義時代の国民主義音楽の作曲家による作品という、共通点のある協奏曲でした。

加えて、ともに主調が「D (二)」というのもあるな。ヴァイオリンに適した調なのだろう。