こんにちは。はーねうすです。

今回は。「チャイコフスキー ピアノ三重奏曲『偉大なる芸術家の思い出』」を紹介します。

管弦楽曲やピアノ曲などと比べて、室内楽の分野では寡作のチャイコフスキーですが、ピアノと弦の組み合わせの楽曲は、この三重奏曲が唯一といって良い室内楽曲となっています。

アルバムに収められたのは1曲のみですが、かなり長大です。加えて演奏家がとても贅沢です。

ピアノのウラディミール・アシュケナージ氏、ヴァイオリンのイツァーク・パールマン氏、チェロのリン・ハレル氏といった超豪華メンバーによるアンサンブルを収めたアルバムは、クラシック・ファンにとって垂涎の1枚と言えるでしょう。

前回に引き続き、チャイコフスキーの室内楽曲ですね。ピアノ三重奏曲です。

チャイコフスキーは、ピアノを組み入れた室内楽をまったくといって良いほど作曲していないので、唯一無二の作品といって良いぞ。

【着想】ピアノと弦のアンサンブル。

「チャイコフスキー ピアノ三重奏曲『偉大なる芸術家の思い出』のコンテンツです。

「チャイコフスキー ピアノ三重奏曲『偉大なる芸術家の思い出』」です。
チャイコフスキー ピアノ三重奏曲「偉大なる芸術家の思い出」 レーベル[EMI CLASSICS]

チャイコフスキーは、音が馴染まないと言ってピアノと弦楽器の組み合わせに懐疑的で、作曲には難色を示していました。ですが、このアルバムに収められた1曲は、演奏家の手腕と作品解釈が相俟って、とても上品で素晴らしいアンサンブルになっています。

No.曲名(1)曲名(2)作品番号
1ピアノ三重奏曲 イ短調「偉大なる芸術家の思い出」第1楽章:悲劇的楽章 (モデラート・アッサイ ~ アレグロ・ジュスト)Op.50
2ピアノ三重奏曲 イ短調「偉大なる芸術家の思い出」第2楽章:主題と変奏Op.50
3ピアノ三重奏曲 イ短調「偉大なる芸術家の思い出」第2楽章:変奏終曲とコーダOp.50

ちょっとした所感です。

<おすすめ度★★★>

「No.1」:「ピアノ三重奏曲 第1楽章:悲劇的楽章」

哀愁郷愁の感が痛切に滲み出ていて、感傷的な旋律の背後に忍ばせた想念のようなものを感じ取れる楽曲です。

情感がとても豊かな曲想の数々に驚かされます。

第1主題の悲嘆の重々しさ、第2主題の明朗な軽やかさ、主題の間を繋ぐ経過句の美しさも侮れません。

楽器間の役割分担や主旋律の交代なども明確で、アンサンブルの魅力を十二分に味わえます。

<おすすめ度★★>

「No.3」:「ピアノ三重奏曲 第2楽章:変奏終曲とコーダ」

総まとめとして配置された、長大力強い華麗な終曲です。

華々しく彩られた回顧的な変奏曲の主題と、重くのし掛かる現実を表わした第1楽章の主題が織りなす壮大なフィナーレです。

消え入るようにフェードアウトする末尾も素敵です。

<おすすめ度★>

「No.2」:「ピアノ三重奏曲 第2楽章:主題と変奏」

様々な変奏手法を堪能できる楽曲です。

素朴愛らしい主題が格別です。変奏曲の主題の構造として適切ですが、意図的に変奏曲の主題向きに構築されたという様相はなく、とても自然発生的です。


便宜上<おすすめ度>を3つに分けていますが、本音はすべて<おすすめ度★★★>です。

独奏では演出できない、アンサンブルやセッションならではの魅力が詰まっています。

とくに変奏曲は明瞭です。各楽器が主演、助演を演じ、かつ裏方にも回るという役割を一聴で感じ取れます。主題が明確な分、楽器相互の千変万化を楽しめます。

「チャイコフスキー ピアノ三重奏曲『偉大なる芸術家の思い出』」です。
チャイコフスキー ピアノ三重奏曲「偉大なる芸術家の思い出」 レーベル[EMI CLASSICS]

1曲だけですが、総演奏時間は50分弱にはなりますね。大曲です。

うむ。2楽章の構成で、しかも第2楽章だけで30分近くもある。聴衆を飽きさせないよう彩り豊かに演奏することが、演奏家に求められるのかもしれないな。

【観想】追悼の系譜。

魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。

チャイコフスキーのピアノ三重奏曲には「偉大なる芸術家の思い出」という副題が付けられています。

これは、チャイコフスキーと深い交友関係にあったピアニスト/指揮者のニコライ・ルービンシュタインの死を悼んで作曲された作品のためです。

楽曲全体を占める、悲哀に満ちた情感は、チャイコフスキーにとって掛け替えのない存在を喪失したという痛切な思いが表出していると言えるでしょう。

そして、そのチャイコフスキーの死を悼んでピアノ三重奏曲を作曲したのが、ラフマニノフです。

「ピアノ三重奏曲 第2番 ニ短調」で、別名「悲しみの三重奏曲」です。

チャイコフスキーのピアノ三重奏曲と、曲調や構成から多くの類似点が伺えます。尊敬する先達への敬意に溢れています。

「系譜」というにはいささか強引かも知れませんが、両者とも「追悼」の念をピアノと弦の三重奏で表出した点に着目したいですね。

<略歴> ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
【露】1840-1893
作風は西ヨーロッパの伝統に根ざしたいわゆる<西欧派>または<折衷派>ではあるが、初期には国民楽派の<5人組>とも交流して国民主義的傾向を示した。外国での生活が多い時期には西欧派的作品が多く、1885年帰国してからは、これらを統合した思索性のあるロシア音楽を確立した。

ラフマニノフとチャイコフスキーって、面識があったんですね。

音楽院生であったラフマニノフの和声学の修了試験で、採点をしたのがチャイコフスキーだというエピソードがあるぞ。

【追想】作曲家の横顔です。

作品と生涯を学べる1冊です。

「大作曲家 チャイコフスキー」です。
大作曲家 チャイコフスキー エヴァレット・ヘルム[著] 許光俊[訳] 音楽の友社

「大作曲家 チャイコフスキー」(エヴァレット・ヘルム[著] / 許光俊[訳] / 音楽の友社)です。

チャイコフスキーの作品や生涯の解説だけでなく、図版も多いのでとても重宝する1冊です。

このシリーズ特有の「証言」も面白いです。作曲家に対する著名人の賛否両論を掲載する章なのですが、ことチャイコフスキーに限っては「賛」しか掲載されていません。
といっても、ラロシ、ドヴォルザーク、ストラヴィンスキー、ショスタコーヴィチの4名のみという分母数が圧倒的に少ないのも起因しているでしょう。

さて、今回紹介したアルバムに収録されている「ピアノ三重奏曲 イ短調」の副題である「偉大なる芸術家」=ニコライ・ルービンシュタインとの交友関係が、端々に描かれています。

必ずしも良好な関係なだけであった訳でもない、と知れるのも良いですね。

有名なところではルービンシュタインがチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調」を酷評したエピソードですね。このエピソードについては、「自立、仕事、進歩、退屈」という章に、生々しく描かれています。とても臨場感に溢れています。

このようなエピソードを知ることができる貴重な評論です。

確かピアノ協奏曲について、ルービンシュタインは手直しを要求したと聞いたことがあります。

結果として、チャイコフスキーは聞き入れず、1音符たりとも直さなかったという話だったな。

【雑想】下手の横好き。(第93弾)

クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。

DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。

DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。

下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。

・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)

クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。

・ミュージック(8bit クラシック_01)

クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。

・ミュージック(8bit クラシック_01)

長く続く趣味を持ちたいです。

引き続き、チャイコフスキー編でした。

チャイコフスキー唯一のピアノ三重奏曲というのありますが、演奏家の豪華さに惹き付けられたアルバムでした。

名曲を名演奏が後押しした典型と言えるアルバムですね。

さて、チャイコフスキー編は一端終了です。他にも交響曲、バレエ組曲やピアノ作品集といったアルバムが控えています。これらについては時期を改めて紹介しますね。

次回は、ムソルグスキーのアルバムを紹介します。

では、また。

チャイコフスキーですが、旋律の多様さに驚かされました。

多様なだけでなく、とても聴き馴染みやすい線で描かれているぞ。そのためか、音楽の専門家や愛好家からは「大衆向けすぎる」といって軽んじられる理由でもあるな。