こんにちは。はーねうすです。

今回は、「スクリャービン マズルカ (全集)」を紹介します。

マズルカと言えばショパンの作品群を思い浮かべますが、スクリャービンも活動の中期頃まで数多くのマズルカを作曲しています。

今回紹介するアルバムには、そのすべてが詰め込まれています。

ピアノ演奏は、ビアトリス・ロン氏です。

アルバムの原題は「SCRIABIN Mazurkas (Complete)」です。

★打ち込みクラシック

DAW(Digital Audio Workstation)で入力したクラシック音楽のDTM(DeskTop Music)作品を紹介するコーナーを巻末に設けています。
今回紹介するアルバムの中から1曲をピックアップしていますので、是非お楽しみください。

スクリャービンのマズルカですね。ショパンの同名曲が有名です。

スクリャービンのマズルカは、もろにショパンの影響下からスタートしているぞ。

【着想】追従から独創への発展。

「スクリャービン マズルカ (全集)」のコンテンツです。

「スクリャービン マズルカ (全集)」です。
スクリャービン マズルカ (全集) レーベル[NAXOS]

スクリャービンの初期作品群については、ロマン主義時代の先達に倣った作品が多いです。とりわけショパンについては、どこか追従していたといっても否定できないと思われます。とりわけ、マズルカについてはその色が濃いですね。

No.曲名(1)曲名(2)作品番号
1Ten MazurkasNo.1: B minorOp.3
2Ten MazurkasNo.2: F sharp minorOp.3
3Ten MazurkasNo.3: G minorOp.3
4Ten MazurkasNo.4: E majorOp.3
5Ten MazurkasNo.5: D sharp minorOp.3
6Ten MazurkasNo.6: C sharp minorOp.3
7Ten MazurkasNo.7: E minorOp.3
8Ten MazurkasNo.8: B flat minorOp.3
9Ten MazurkasNo.9: G sharp minorOp.3
10Ten MazurkasNo.10: E flat minorOp.3
11Two MazurkasNo.1: D flat majorOp.40
12Two MazurkasNo.2: F sharp majorOp.40
13Nine MazurkasNo.1: F majorOp.25
14Nine MazurkasNo.2: C majorOp.25
15Nine MazurkasNo.3: E minorOp.25
16Nine MazurkasNo.4: E majorOp.25
17Nine MazurkasNo.5: C sharp minorOp.25
18Nine MazurkasNo.6: F sharp majorOp.25
19Nine MazurkasNo.7: F sharp minorOp.25
20Nine MazurkasNo.8: B majorOp.25
21Nine MazurkasNo.9: E flat minorOp.25
22Two MazurkasNo.1: F major
23Two MazurkasNo.2: B minor

ちょっとした所感です。

<おすすめ度★★★>

「No.12」:「Two Mazurkas No.2: F sharp major」

幾分自由なテンポ感で展開する、即興性のある楽曲です。

感傷的と感じ取られる旋律と、機能性を少し外した和声進行の組み合わせは、どこか印象主義的な曲想とも受け取れます。

「No.15」:「Nine Mazurkas No.3: E minor」

憂鬱気味な感傷性が前面に出た、どこかしらノスタルジックな楽曲です。

穏やかに展開する中、時折現われる力強い変化が特徴です。

「No.16」:「Nine Mazurkas No.3: E major」

軽やかで、流れるようなパッセージで構成された楽曲です。

甘美で流麗な線で描かれる主要主題と、熱情的で幾分フラストレーションを吐き出したかのような副次主題の組み合わせが素敵です。

<おすすめ度★★>

「No.19」:「Nine Mazurkas No.7: F sharp minor」

マズルカに抱くイメージを伴わない、バラードのような楽曲です。

感傷的で熱情的な主要主題と、明るくて力強く歌う副次主題の組み合わせが特徴です。

「No.5」:「Ten Mazurkas No.5: D sharp minor」

穏やかで、落ち着いたテンポが特徴の楽曲です。

静けさのある音響の中に奏でられる、侘しい佇まいの旋律が印象的です。

「No.9」:「Ten Mazurkas No.9: G sharp minor」

ドラマティックに展開する楽曲です。

寂しげで優しく歌われる主部と、力強くエネルギッシュな中間部の対比が美しいです。

「No.11」:「Ten Mazurkas No.1: D flat major」

明るめの旋律と、強く刻まれるリズムが印象的な楽曲です。

機能和声から少しずれた、不思議な和音が魅力です。

「No.22」:「Two Mazurkas No.1: F major」

他作品には見受けられないような、陽気な雰囲気が特徴の楽曲です。

マズルカというよりも、テンポの速いワルツといった印象です。

<おすすめ度★>

「No.23」:「Two Mazurkas No.2: B minor」

アウトラインがとても明確で、センチメンタルな曲調が特徴の楽曲です。

中間部に登場する重厚で強固な打鍵も印象的です。

「No.4」:「Ten Mazurkas No.4: E major」

明るく前向きで、リズムも取りやすい楽曲です。

中間部で登場する、切なさを滲み出させる旋律が殊の外美しいです。

「No.17」:「Nine Mazurkas No.5: C sharp minor」

激性のある劇的な展開が特徴の楽曲です。

一段落ち着いた感のある中間部で展開される、静けさの中に響く旋律が美しいです。

「No.14」:「Nine Mazurkas No.2: C major」

リズム感を崩した上で構築する、幻想的な音響が楽しい楽曲です。

可愛らしい旋律も魅力的です。

「No.10」:「Ten Mazurkas No.10: E flat minor」

大規模で楽曲で、バラードのように展開される構成と曲想が特徴です。

陰鬱な雰囲気に包まれた主要主題と、力強い副次主題の組み合わせが物語性を誘発しています。


初期から中期にかけて作曲された作品群であるため、後期作品のようなエッジの効いた内容ではありません。

そのため、「独創性への気負い」といったものよりも、スクリャービン自身の個性を「マズルカ」というスタイルで、自由に磨き上げていったという感が強いです。

次第にポリフォニックな構造を多用するような点が、いかにもスクリャービンらしい様相への変貌として受け取れます。

「スクリャービン マズルカ (全集)」です。
スクリャービン マズルカ (全集) レーベル[NAXOS]

中期と呼ばれる、1900年頃までの作品群に相当するみたいですね。

機能和声の拡張や可能性を模索していた時代までだな。そのため、後期のような独創した和声で書かれたマズルカを聴くことはできないぞ。残念だが。

【観想】陰と陽。

魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。

ショパンの功績もあって、「マズルカ」というポーランドの民俗舞曲は一つのスタイルとして確立されました。

加えて、どこか「悲しげで寂しげ」なイメージも伴っています。(偏見かもしれませんが、これもショパンの影響のようなきがします)

スクリャービンのマズルカ群も、感傷的で陰鬱な様相で描かれた作品が目立ちます。

短絡的ではありますが、長短の調性を比較すると「長調」が8曲「短調」が15曲です。

マイナーキーを主調とする楽曲は、ロマン主義時代の流行でもありますので、なんとも言えませんが、スクリャービンの「マズルカ」にはその傾向が見受けられます。

そのため、メジャーキーで描かれた作品の「軽快さ」「明るさ」「可愛らしさ」といった曲調が際立ちます。

「No.22」の「Two Mazurkas No.1 F major」は、その典型とも言えそうですね。

音楽家の略歴です。

アレキサンドル・エコラエヴィチ・スクリャービン
【露】1872-1915
初期はショパン風のピアノ曲を作曲。にちにリスト、ワーグナーの影響により新しい和音の探求に進む。神智学に心酔して、自己の芸術を神秘主義的思想に結びつけ、神秘和音、音と色彩の合一など20世紀音楽で展開される大胆な試みの先駆けをなした。内面世界の自由な表現として、詩曲と名づけた独特のジャンルの創造は注目される。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)

マズルカに抱くイメージですか。芸術作品としては、ショパンの影響は否めませんね。

純粋に民俗舞踏としてのマズルカを聴いてみたいな。

【追想】調性記号の数。

嬰(♯)の黒鍵が占める割合が多いです。

「スクリアビン ピアノ曲集 第五巻 幻想曲 詩曲 小品集」です。
スクリアビン ピアノ曲集 第五巻 幻想曲 詩曲 小品集 全音楽譜出版社

「スクリアビン ピアノ曲集 第五巻 幻想曲 詩曲 小品集」(全音楽譜出版社)です。

今回紹介した「マズルカ」としては、作品番号25の2曲と作品番号40の2曲が収録されています。

内訳は、作品番号25からは「第2曲」と「第3曲」作品番号40からは「第1曲」と「第2曲」になります。

圧巻は、作品番号40の「第2曲」ですね。嬰へ長調で書かれた楽曲なので、調性記号の「♯」が6個ついています。ひぇ。

中間部では転調して、「♯」をひとつ増やした7個の嬰ハ長調になります。ひぇ。

勝手な思い込みかもしれませんが、スクリャービンの楽曲では、「嬰」(♯)側の調を多く採用している気がしてなりません。
(マズルカだけでも、全23曲中16曲が「嬰」(♯)を調性記号に採用しています。間違っていたらスミマセン。。。)

24の調を網羅した前奏曲集もありますので何とも言えませんが、スクリャービンの嗜好性を見ているようで面白いですね。

調号、多いと驚きますよね。

逆に譜読みが楽になる、とも言える。

【雑想】下手の横好き。(第99弾)

クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。

「Studio One」シリーズで打ち込んだクラシック音楽をお披露目するコーナーです。

今回は、<おすすめ度★★★>として紹介したスクリャービンの「2のマズルカ 作品40 第2曲 嬰ヘ長調」です。

作曲家:アレクサンドル・ニコラエヴィチ・スクリャービン 作曲年:1903

他作品を含め、下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。

・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)

クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。

・ミュージック(8bit クラシック_01)

長く続く趣味を持ちたいです。

前回から引き続き、スクリャービン編でした。

今回紹介した「マズルカ」は、スクリャービンがいかにショパンの影響下にあったかが知れる内容でもあったと思います。

とりわけ、初期の作品群からは顕著です。

しかし、次第にスクリャービンの個性が色濃く表出しだします。

機能和声の面も然る事ながら、ポリフォニックな構造を多用するようになり、いかにもスクリャービンらしい様相に変貌していきます。面白いですね。

次回はスクリャービンの「前奏曲」を紹介します。

では、また。

マズルカですが、やはりロマン主義時代の香りがしましたね。

スクリャービンがどのように先達を倣い、そして個性を磨き上げたのかが分かる作品群でもあったな。