こんにちは。はーねうすです。

今回は、「スクリャービン 前奏曲集 Vo.1」を紹介します。

スクリャービンにとっては、ライフワークとも言うべき「前奏曲」です。今回紹介するアルバムには、1896年辺りの初期に属する時代に作曲された楽曲が収録されています。

ピアノ演奏は、エフゲニー・ザラフィアンツ氏です。

アルバムの原題は「SCRIABIN Preludes, Vol.1」です。

★打ち込みクラシック

DAW(Digital Audio Workstation)で入力したクラシック音楽のDTM(DeskTop Music)作品を紹介するコーナーを巻末に設けています。
今回紹介するアルバムの中から1曲をピックアップしていますので、是非お楽しみください。

スクリャービンの前奏曲ですね。バッハやショパンの作品群と同じスタイルですね。

スクリャービンの場合は、曲数が段違いになっている。ライフワークだったといって過言ではないぞ。

【着想】浪漫と幻想。

「スクリャービン 前奏曲集 Vo.1」のコンテンツです。

「スクリャービン 前奏曲集 Vol.1」です。
スクリャービン 前奏曲集 Vol.1 レーベル[NAXOS]

初期の作品群ということもあり、ロマン主義の音楽家に影響を受けたことが顕著な楽曲が多いです。また、印象主義音楽の影響も随所に見受けられます。後期の作品群とは多分に異なったスクリャービンの端緒とも言える浪漫と幻想に溢れた作品群です。

No.曲名(1)曲名(2)作品番号No.曲名(1)曲名(2)作品番号
1PreludeB major (Op.2, No.2)Op.226Twenty-four PreludesNo.24: D minorOp.11
2Prelude C sharp minor for the left hand (Op.9, No.1)Op.927Six PreludesNo.1: C majorOp.13
3Twenty-four PreludesNo.1: C majorOp.1128Six PreludesNo.2: A minorOp.13
4Twenty-four PreludesNo.2: A minorOp.1129Six PreludesNo.3: G majorOp.13
5Twenty-four PreludesNo.3: G majorOp.1130Six PreludesNo.4: E minorOp.13
6Twenty-four PreludesNo.4: E minorOp.1131Six PreludesNo.5: D majorOp.13
7Twenty-four PreludesNo.5: D majorOp.1132Six PreludesNo.6: B minorOp.13
8Twenty-four PreludesNo.6: B minorOp.1133Five PreludesNo.1: A majorOp.15
9Twenty-four PreludesNo.7: A majorOp.1134Five PreludesNo.2: F sharp minorOp.15
10Twenty-four PreludesNo.8: F sharp minorOp.1135Five PreludesNo.3: F majorOp.15
11Twenty-four PreludesNo.9: E majorOp.1136Five PreludesNo.4: C sharp minorOp.15
12Twenty-four PreludesNo.10: C sharp minorOp.1137Five PreludesNo.5: C sharp minorOp.15
13Twenty-four PreludesNo.11: B majorOp.1138Five PreludesNo.1: B majorOp.16
14Twenty-four PreludesNo.12: G sharp minorOp.1139Five PreludesNo.2: G sharp minorOp.16
15Twenty-four PreludesNo.13: G flat majorOp.1140Five PreludesNo.3: G flat majorOp.16
16Twenty-four PreludesNo.14: E flat minorOp.1141Five PreludesNo.4: E flat minorOp.16
17Twenty-four PreludesNo.15: D flat majorOp.1142Five PreludesNo.5: F sharp majorOp.16
18Twenty-four PreludesNo.16: B flat minorOp.1143Seven PreludesNo.1: D minorOp.17
19Twenty-four PreludesNo.17: A flat majorOp.1144Seven PreludesNo.2: E flat majorOp.17
20Twenty-four PreludesNo.18: F minorOp.1145Seven PreludesNo.3: D flat majorOp.17
21Twenty-four PreludesNo.19: E flat majorOp.1146Seven PreludesNo.4: B flat majorOp.17
22Twenty-four PreludesNo.20: C minorOp.1147Seven PreludesNo.5: F minorOp.17
23Twenty-four PreludesNo.21: B flat majorOp.1148Seven PreludesNo.6: B flat majorOp.17
24Twenty-four PreludesNo.22: G monirOp.1149Seven PreludesNo.7: G minorOp.17
25Twenty-four PreludesNo.23: F majorOp.11

ちょっとした所感です。

<おすすめ度★★★>

「No.38」:「Five Preludes No.1 B major」

夢想の只中にいるような、夜想曲風の楽曲です。

どこか気怠げな同型の伴奏の上に歌われる、穏やかで優美な旋律がとても素敵です。

夢見心地に浸る夢想的な音響に癒やされます。

「No.47」:「Seven Preludes No.5 F minor」

急速に下降する線で描かれた主題が特徴の楽曲です。

熱情的で熱量の高い、重く鋭い伴奏も魅力です。

「No.10」:「Twenty-four Preludes No.8 F sharp minor」

感傷性に終始したかのような、メランコリックな楽曲です。

昂揚する感情を強く抑制したかのような展開に、秘められた想念を感じさせられます。

「No.14」:「Twenty-four Preludes No.12 G sharp minor」

夢見るような淡い線で紡ぎ出される、愛らしい楽曲です。

少し気怠さを感じさせる伴奏が、不思議な音響空間を演出しています。

<おすすめ度★★>

「No.47」:「Seven Preludes No.1 D minor」

調性感を崩しかのような、一風変わった旋律が特徴の楽曲です。

他の前奏曲とは一味違った魅力に満ちています。

「No.7」:「Twenty-four Preludes No.5 D major」

穏やかで優しさに包まれた楽曲です。

高音域で奏でられる装飾のような旋律線がとても美しいです。

「No.18」:「Twenty-four Preludes No.16 B flat minor」

バラードのような展開を期待させる構成の楽曲です。

重苦しい雰囲気から、力強い重厚な様変わりを遂げる展開は、ショスタコーヴィチの音楽を先取りしたかのようです。

「No.23」:「Twenty-four Preludes No.21 E flat major」

夢見心地の状態で、朦朧とした中に漂っているかのような楽曲です。

幻想的で、優しさに満ちた甘美な音響が素敵です。

<おすすめ度★>

「No.48」:「Seven Preludes No.6 B flat major」

ひたすらに穏やかで、憧憬のような切なさに溢れた楽曲です。

「No.6」:「Twenty-four Preludes No.4 E minor」

陰鬱な雰囲気を漂わせる楽曲です。

穏やかに流れる中、ある種の異様さを感じさせる音響が構築されています。

「No.22」:「Twenty-four Preludes No.20 C minor」

劇性を伴った、大変ドラマティックな構成の楽曲です。

圧倒的にシューマン風のロマン主義で装った仕上がりになっています。

「No.30」:「Six Preludes No.4 E minor」

軽やかに舞うかのような、軽快な楽曲です。

装飾的に描かれる旋律が素敵です。

「No.35」:「Five Preludes No.3 E major」

分散和音の連なりで構成された楽曲です。

明るくて爽快感に満ちていて、穏やかな心境にあるかのようです。


神秘和音という独自の音楽語法を導き出したスクリャービンとは、全く異なる一面を覗かせる作品群となっています。

ロマン主義時代の先達に倣った様式や形式が随所に垣間見られます。また、印象主義音楽的な音響の使用からは、独自の機能和声を模索する姿勢を感じさせられます。

初期のスクリャービンが、感受性を理知的に処理している様が窺い知れる楽曲群です。

「スクリャービン 前奏曲集 Vol.1」です。
スクリャービン 前奏曲集 Vol.1 レーベル[NAXOS]

中後期にある尖った印象は皆無ですね。ロマン主義の香りに満ちています。

変な言い方だが、安心して聴いていられるな。

【観想】フィールドとショパンの影響。

魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。

全作品の9割方をピアノ曲で占めるスクリャービンの作品からは、ピアノ作品をメインに据えた作曲家からの影響を端々に感じ取ることができます。

とりわけ、フィールドショパンですね。

アイルランド出身のフィールドは、夜想曲の創始者としても有名です。そして、19世紀の初頭、ロシアを訪問します。

元は、ロシアにおけるピアノ製造の問題を解決する目的で、師であるクレメンティに同行したようですが、定住するほど彼の地が気に入ったようです。

そこで、ピアノ演奏の手ほどきをし、「ジュ・ペルレ」という独自の奏法を伝授しました。

スクリャービンの前奏曲には、夜想曲風の楽曲が多く存在します。直接とは言えませんが、フィールドの作品やピアノ奏法から影響を受けているであろうことを感じ取ることができます。

同じくフィールドの影響を受けたであろうショパンからも、当然のように影響を受けています。

曲想もさることながら、構造や構成の面でも傾倒していたことを伺わせます。

「Twenty-four Preludes (24の前奏曲)」は、ショパンの同タイトル作品に倣い、調性を同じ配列で組んでいます。

独自の音楽語法を構築する使命感に満ちた中後期とは異なり、ピアノという楽器に期待する音楽世界を模索していたスクリャービンの思惑を感じ取ることができますね。

音楽家の略歴です。

アレキサンドル・エコラエヴィチ・スクリャービン
【露】1872-1915
初期はショパン風のピアノ曲を作曲。にちにリスト、ワーグナーの影響により新しい和音の探求に進む。神智学に心酔して、自己の芸術を神秘主義的思想に結びつけ、神秘和音、音と色彩の合一など20世紀音楽で展開される大胆な試みの先駆けをなした。内面世界の自由な表現として、詩曲と名づけた独特のジャンルの創造は注目される。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)

ピアノ奏法といえばフィールドの「ジュ・ペルレ」が有名ですね。

ショパンはピアノ演奏後に、聴衆から「フィールドの弟子か?」と問われるほど、フィールドの奏法は影響力が大きかったようだな。

【追想】独特の揺らぎ感。

連符とリズムのズレから生じる言い知れない心地よさ。

「スクリアビン ピアノ曲集 第四巻・前奏曲集」です。
スクリアビン ピアノ曲集 第四巻・前奏曲集 全音楽譜出版社

「スクリアビン ピアノ曲集 第四巻・前奏曲集」(全音楽譜出版社)です。

今回紹介したアルバムとしては、「24の前奏曲 作品番号11」「6つの前奏曲 作品13」「5つの前奏曲 作品15」「5つの前奏曲 作品16」が収められています。

初期作品群には、ロマン主義時代の影響もあり、楽譜からも読み取ることができます。

とりわけ、多様な連符と小節線を跨ぐ拍子から生まれるクロス・リズムが顕著ですね。

「5つの前奏曲 作品15」の第1曲や、「5つの前奏曲 作品16」の第2では、16分音符の5連符が主要なモチーフとなって登場します。

「24の前奏曲 作品番号11」の第1曲や第19曲に現われる、小節線を跨いだ伴奏型も特徴です。

これらが織り込まれることで、クロス・リズムになります。そこから生まれるズレが、独特の揺らぎ感を効果として楽曲に与えています。

数は少ないですが、15/8拍子といった変拍子や混合拍子の使用にも、リズム感の上でのロマン主義時代の先達からの影響が伺えます。

クロス・リズムですが、楽譜を見ていると頭がクラクラします。

シューマンが好んだ技法だな。旋律と伴奏の音符の配置にズレが、独特な揺らぎを生じさせる効果になっているぞ。

【雑想】下手の横好き。(第100弾)

クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。

「Studio One」シリーズで打ち込んだクラシック音楽をお披露目するコーナーです。

今回は、<おすすめ度★★★>として紹介したスクリャービンの「5つの前奏曲 作品16 第1曲 ロ長調」です。

作曲家:アレクサンドル・ニコラエヴィチ・スクリャービン 作曲年:1894-1895

他作品を含め、下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。

・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)

クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。

・ミュージック(8bit クラシック_01)

長く続く趣味を持ちたいです。

前回から引き続き、スクリャービン編でした。

今回紹介した「前奏曲」は、スクリャービンとってはライフワークとも呼べる創作の要でした。

今回紹介したアルバムでは、初期の前奏曲がピックアップされていました。そのため、ロマン主義時代の芳香が漂う楽曲ばかりとなっています。

そのような先達の影響下にあっても、いかにもスクリャービンらしい独自性がある書法も見受けられます。新しい機能和声の発明に乗りかかったかのような作品も所々にあります。

次回もスクリャービンの「前奏曲」を紹介します。

では、また。

スクリャービンの前奏曲全集の前半、といった所でしたね。

後半は中後期の作品の占める割合が高くなるから、より一層スクリャービンの独自世界が展開されるぞ。