こんにちは。はーねうすです。
今回は、「カルメン幻想曲/ムター、ヴァイオリン名曲集」を紹介します。
名ヴァイオリニストであるアンネ=ゾフィー・ムター氏の華麗で妖艶な美技を堪能できる1枚です。
演目も、アルバムタイトルであるサラサーテの楽曲を筆頭に、マスネやラヴェルなどの有名曲が収められています。
指揮は、ジェイムズ・レヴァイン氏で、演奏はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団です。
★打ち込みクラシック
DAW(Digital Audio Workstation)で入力したクラシック音楽のDTM(DeskTop Music)作品を紹介するコーナーを巻末に設けています。
今回紹介するアルバムの中から1曲をピックアップしていますので、是非お楽しみください。
変則回ですね。ヴァイオリンの楽曲ばかりを集めたアルバムのようです。
名ヴァイオリニストであるアンネ=ゾフィー・ムター氏の美技を堪能できる内容にもなっているぞ。
目次
【着想】舞い踊るヴァイオリンの美技。
「カルメン幻想曲/ムター、ヴァイオリン名曲集」のコンテンツです。
バロック・ロマン・印象などの様式性と、スペイン・イタリア・フランスなどの地域性で彩られた楽曲が収録されています。各時代・各地域の最高峰ともいえるヴァイオリンの技巧が織り込まれていますので、その違いを聴き比べるのも一興です。
No. | 作曲家 | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | サラサーテ | ツィゴイネルワイゼン | ― | Op.20 |
2 | ヴィエニャフスキ | 伝説曲 | ― | Op.17 |
3 | タルティーニ | ソナタ 第4番『悪魔のトリル』 | Largetto affettuo – Allegro moderato – Andante | ― |
4 | ラヴェル | ツィガーヌ | ― | ― |
5 | マスネ | タイスの瞑想曲 | ― | ― |
6 | サラサーテ | カルメン幻想曲 | Introduction. Allegro moderato | Op.25 |
7 | サラサーテ | カルメン幻想曲 | 1. Moderato | Op.25 |
8 | サラサーテ | カルメン幻想曲 | 2. Lento assai | Op.25 |
9 | サラサーテ | カルメン幻想曲 | 3. Allegretto moderato | Op.25 |
10 | サラサーテ | カルメン幻想曲 | 4. Moderato | Op.25 |
11 | フォーレ | 子守歌 | ― | Op.16 |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.1」:サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」
数多あるヴァイオリン曲の中でも、屈指の有名曲です。
冒頭に管弦楽で奏でられる悲劇的な様相の導入で、一気にその音楽世界に引き込まれます。
ヴァイオリン独奏による哀愁が漂う旋律と即興演奏のような部位、一転して激しいチャルダーシュで展開する部位など、バラエティが豊富な曲想に魅了されます。
徹頭徹尾、ヴァイオリンの華麗さが際立つ楽曲です。
「No.6」~「No.10」:サラサーテ「カルメン幻想曲」
ジョルジュ・ビゼーのオペラ「カルメン」のモチーフを題材に描かれた組曲です。
元が有名なオペラということもあり、耳に馴染みのある旋律が技巧的なパッセージとなって登場する様に昂揚し、興奮します。
とりわけ、「No.9」と「No.10」で繰り広げられる技巧の数々は驚嘆です。
幅の広い音域での跳躍的な昇降や小刻みのボーイングで生まれる音響は、ヴァイオリンでしか味わえない代物です。
<おすすめ度★★>
「No.4」:ラヴェル「ツィガーヌ」
ボヘミアンの悲哀や哀愁を音楽にしたかのような、異国情緒に溢れた楽曲です。
ヴァイオリン独奏で紡ぎ出される音は、技巧的な難度と華やかさも相俟って、ヴァイオリン特有の音色を最大限に引き出しているかのようです。
そして、ハープを主軸とした合奏による伴奏が加わると、印象派の世界が色濃くなります。
東洋や中近東の様相が加味されて、一層エキゾチックな曲想に拍車がかかります。
「No.3」:タルティーニ「ソナタ 第4番『悪魔のトリル』」
バロック時代に誕生したとは思えない、大変ロマンティックな楽曲です。
穏やかで優美な線で描かれる第1楽章、軽やかでリズミックな動きが支配的な第2楽章、トリルの加飾が特徴の第3楽章で構成されています。
とりわけ、副題の元となった第3楽章のトリルは必聴です。その他の装飾音とは一線を画した、重要なモチーフとして鳴り響きます。
「No.10」:フォーレ「子守歌」
子守歌と呼ぶには、余りにも感傷的すぎる旋律が印象的な楽曲です。
揺蕩うように流れゆくヴァイオリンの主線は、弦楽の伴奏に埋もれてしまいそうなほどか弱い線で描かれています。
ヴァイオリンの音色で演出された儚い世界に惹き付けられます。
<おすすめ度★>
「No.5」:マスネ「タイスの瞑想曲」
マスネの名前を聞いて、まず思い浮かべる代表曲です。
柔らかで伸びのある線で描かれる優美な旋律が特徴です。
そっと支えているかのようなハープの伴奏も魅力のひとつです。
まるで天にでも昇っていくかのような心地よさがあります。
「No.2」:ヴィエニャフスキ「伝説曲」
独奏ヴァイオリンの物憂げな旋律が一際美しい楽曲です。
中間部からは、朗らかで爽やかな、優しさに満ち足りた曲想が展開されます。
超絶的な技巧で描かれる線や、まるで歌唱のように描かれる線など、ヴァイオリンでしか堪能できない音響に魅了されるアルバムですね。
時代精神や民族性といった要素が色濃い感じがします。
作曲家がヴァイオリンという楽器に込めた想念も加味されているので、より「濃厚なヴァイオリン世界」と感があるよな。
【観想】技巧と音響の調和。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
今回紹介したアルバムに収められた楽曲は、いずれもヴァイオリンという楽器に精通した作曲家が創出した音楽です。
そのため、演奏上の技巧性と、楽器特有の音響効果が見事に調和した内容になっています。
その音楽性を踏まえ、十全な技巧と深い情趣によって奏でるアンネ=ゾフィー・ムター氏の華麗で妖艶なヴァイオリンの音色に魅了されます。
とりわけサラサーテの楽曲です。
「ツィゴイネルワイゼン」では、即興演奏のような演出力やチャルダーシュの急速展開を美麗に滑走する様に魅了されます。
「カルメン幻想曲」では、重奏やピチカート、振り幅の広いビブラートや小刻みなボーイングなど、ヴァイオリンの技巧的なパッセージを、これでもかと言わんばかりに披露されています。
猛スピードで滑走したり、ダイナミックに跳ね回ったりする技巧。感傷や悲哀を歌うかのように描く情趣。華麗で妖艶な舞に興奮します。
音楽家の略歴です。
パブロ・デ・サラサーテ 【西】1844-1908 19世紀のヴァイオリン・ヴィルトゥオーソの一人。美しい音色と、細かい技巧的演奏で知られ、ヨーロッパ、南北アメリカ、中近東、南アフリカ各地に演奏旅行。自らの演奏用にその技巧を駆使した小品を作曲。 (「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
ところで、チャルダーシュとは何ですか。
ハンガリーで誕生した音楽のジャンルだな。遅い部分の「ラッス」と速い部分の「フリス」が特徴として挙げられるぞ。
【追想】即興性が肝腎。
即興性をピアノで再現しています。
「全音ピアノピース ツィゴイネルワイゼン」(全音楽譜出版社)と「歌劇『タイス』瞑想曲」(日本楽譜出版社)です。
前者の特徴は、随所に配置されたフェルマータとリトルダントです。
ツィゴイネルワイゼンの魅力のひとつに「即興演奏」のような演出があります。フェルマータとリトルダントは、その効果の一部を担っているといえるでしょう。
ピアノ独奏用に編曲された楽譜では、管弦楽パートと独奏パートの棲み分けも加わり、より一層「即興性」を如何に譜面に落とし込まれているのか肝腎のように思えます。
後者の特徴は、ピアノ伴奏版の併録です。
原曲ではハープで奏でられていた伴奏の部位を、ピアノが受け持つような形で編曲されています。
原曲版の音楽を聴きながら、編曲版の譜面を追うのも楽しいですよね。
演奏家の解釈に委ねる即興的な部位を譜面にするのって、難しそうですね。
発想記号には自由な演奏を促すものもあるが、「即興演奏にようにしてください」という意味にはならないよな。数多の演奏家による解釈が積み重なり、「即興演奏風のスタイルが適した音楽」ができあがるのかもな。
【雑想】下手の横好き。(第102弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
「Studio One」シリーズで打ち込んだクラシック音楽をお披露目するコーナーです。
今回は、<おすすめ度★★★>として紹介したサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」のピアノ編曲版です。
他作品を含め、下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
今回は変則回でした。
アンネ=ゾフィー・ムター氏のヴィオリンに終始魅了される内容でしたね。
華麗な技巧と濃厚な情趣が溶け合った、美麗な音楽性に感服です。
アルバムのタイトルにもなっているサラサーテの「カルメン幻想曲」は、アンネ=ゾフィー・ムター氏の美技を堪能できる逸品と言えるでしょう。
次回はスクリャービン編に戻ります。
では、また。
アンネ=ゾフィー・ムター氏のヴァイオリン、素敵でしたね。
技術面に加え、どこか妖艶めいた表現力も魅惑的だったよな。