こんにちは。はーねうすです。

今回は、「フォーレ 13の夜想曲 (ピアノ作品全集 第1集)」を紹介します。

フランス近代音楽を代表するフォーレの、ピアノ曲だけを集めたアルバムの第1集です。

内訳は、「夜想曲」「主題と変奏」「バラード」「前奏曲」でCDは2枚組です。

ピアノ演奏は、ジャン=フィリップ・コラール氏です。

フォーレのピアノ曲集ですね。

全3集の第1弾にあたるアルバムだな。

【着想】ピアノ曲のエレガンス。

「フォーレ 13の夜想曲 (ピアノ作品全集 第1集)」のコンテンツです。

「ォーレ 13の夜想曲 (ピアノ作品全集 第1集)」です。
フォーレ 13の夜想曲 (ピアノ作品全集 第1集) レーベル[EMI CLASSICS]

楽曲の形式には先達のショパンやリストなどの影響を色濃く感じる内容になっています。ですが、様式にはフォーレ独特の美意識が詰め込まれている内容になっています。

CD1

No.曲名(1)曲名(2)作品番号
1夜想曲 (全13曲)第1番:変ホ短調Op.33-1
2夜想曲 (全13曲)第2番:ロ長調Op.33-2
3夜想曲 (全13曲)第3番:変イ長調Op.33-3
4夜想曲 (全13曲)第4番:変ホ長調Op.36
5夜想曲 (全13曲)第5番:変ロ長調Op.37
6夜想曲 (全13曲)第6番:変ニ長調Op.63
7夜想曲 (全13曲)第7番:嬰ハ短調Op.74
8夜想曲 (全13曲)第8番:変ニ長調Op.84-8
9夜想曲 (全13曲)第9番:ロ短調Op.97
10夜想曲 (全13曲)第10番:ホ短調Op.99
11夜想曲 (全13曲)第11番:嬰ヘ短調Op.104-1

CD2

No.曲名(1)曲名(2)作品番号
1夜想曲 (全13曲)第12番:ホ短調Op.107
2夜想曲 (全13曲)第13番:ロ短調Op.119
3 ~ 14主題と変奏 嬰ハ短調主題、第1変奏 ~ 第11変奏Op.73
15バラード 嬰ヘ長調Op.19
16前奏曲 (全9曲)第1番:変ニ長調Op.103
17前奏曲 (全9曲)第2番:嬰ハ短調Op.103
18前奏曲 (全9曲)第3番:ト短調Op.103
19前奏曲 (全9曲)第4番:ヘ長調Op.103
20前奏曲 (全9曲)第5番:ニ短調Op.103
21前奏曲 (全9曲)第6番:変ホ短調Op.103
22前奏曲 (全9曲)第7番:イ長調Op.103
23前奏曲 (全9曲)第8番:ハ短調Op.103
24前奏曲 (全9曲)第9番:ホ短調Op.103

ちょっとした所感です。

<おすすめ度★★★>

「CD1_No.5」:「夜想曲 (全13曲) 第5番:変ロ長調」

短いモチーフが断片的に組み合わされた、自由な曲想が特徴の楽曲です。

主要部の多様かつ明朗に変化する旋律と律動がユニークで素敵です。

一転、中間部では熱情的で流れゆくパッセージが強調され、その下で歌われる旋律が魅惑的です。

主要部と中間部のコントラストが面白い内容になっています。

「CD1_No.8」:「夜想曲 (全13曲) 第8番:変ニ長調」

アラベスク模様で象られた、とても爽やかな楽曲です。

流れるように紡がれる線がとても美しいです。

「CD2_No.3 ~ No.14」:「主題と変奏 嬰ハ短調」

古典派風の重厚な主題が、バロック風、ロマン派風と装いを改める様が楽しい楽曲です。

調性に変化がないにも関わらず、動静、緩急などの変化でバラエティを豊かにしています。

とりわけ第9変奏のクリスタルのような透明感のある曲想がすてきです。

唯一調性を変えた第11変奏の、達観したかのような清涼感のある曲想も素敵です。

「CD2_No.15」:「バラード 嬰ヘ長調」

物語の主部とも言える、甘く歌われる主要主題が殊更に美しい楽曲です。

波瀾万丈なドラマというよりは、情景の移り変わりを心象で捉えて写し取ったかのような、穏やかな展開が特徴です。

耽美な世界に惹き付けられます。

「CD2_No.1」:「夜想曲 (全13曲) 第12番 ホ短調」

ミステリアスドラマティックな展開が特徴の楽曲です。

曲調が夜想曲風というだけで、曲想と構成は自由な体裁の幻想曲です。

波濤のように迫り来る、濁りを伴うパッセージに酔いしれます。

<おすすめ度★★>

「CD1_No.3」:「夜想曲 (全13曲) 第3番:変イ長調」

安穏柔和な音響に包まれた楽曲です。

中間部で展開される「旋律」「伴奏」「装飾」を司る声部の変化が素敵です。

「CD1_No.9」:「夜想曲 (全13曲) 第9番:ロ短調」

他の夜想曲では感じ取られない、何処か不穏な雰囲気を漂わせた曲想が特徴の楽曲です。

沈鬱な低音部と、軽妙な高音部が絡み合う様がとてもユニークです。

「CD2_No.2」:「夜想曲 (全13曲) 第13番:ロ短調」

淡さ儚さが同居した、憧憬の心情を描いたかのような楽曲です。

起伏の激しい曲想の中に忍ばせた、感傷性と情熱性を感じます。

「CD2_No.17」:「前奏曲 (全9曲) 第2番:嬰ハ短調」

無窮動の旋律とリズミカルな律動が特徴の楽曲です。

流れるパッセージの旋律と、短く刻むスタッカートの伴奏で構成された主部が特徴的です。

コーダでは一転してコラール風になります。

<おすすめ度★>

「CD1_No.4」:「夜想曲 (全13曲) 第4番:変ホ長調」

安らぎで満たされた主要部と、熱情的な中間部の対比が特徴の楽曲です。

熱情的な高揚の後、回想のように回帰し、穏やかに幕が閉じられます。

「CD2_No.18」:「前奏曲 (全9曲) 第18番:ト短調」

メランコリックな音響と、センチメンタルな旋律の組み合わせが特徴の楽曲です。

中間部以降に展開される、昂揚感に満ちた熱情的な曲想に感情が揺さぶられます。

「CD2_No.19」:「前奏曲 (全9曲) 第4番:ヘ長調」

明るくリズミカルなモチーフで構成された、キャッチな曲調が特徴の楽曲です。

明るい中にも、何処か切なさを滲ませています。

「CD2_No.23」:「前奏曲 (全9曲) 第8番:ハ短調」

スタッカートで刻まれる、等間隔のリズムが心地よい楽曲です。


ロマン主義や印象主義とは異なった、どこか精神性や宗教観が織り込まれているのがフォーレの特徴かもしれませんね。

「ォーレ 13の夜想曲 (ピアノ作品全集 第1集)」です。
ォーレ 13の夜想曲 (ピアノ作品全集 第1集) レーベル[EMI CLASSICS]

確かに、ショパンやリストとは異なる感じがしますね。

先達に敬意を払いながらも、フォーレ独自の精神性で描かれているためだろうな。

【観想】エスプリのアプローチ。

魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。

フォーレの音楽には、どこか肩肘張らないエレガンスというものを感じることができます。

「伝統音楽の継承」、「新しい音楽の開拓」といった堅苦しさがないのも特徴です。

無論、独自性を求めなかったという訳ではなく、表立たせない慎ましやかさがあったためだと言えるでしょう。

それはフォーレが教会音楽で育った精神性が深く関わっているのかもしれません。

ピアノ曲も同じ趣向のようです。

古典主義やロマン主義の影響を受けながらも、どこか異なるアプローチを見いだせます。

「CD2_No.3 ~ No.14」の「主題と変奏」が好例と言えるでしょう。

ライナーノーツ(家里和和夫氏[著])では「堅固な構成と巧智な主題の発展を行いながら、それが少しもいかつい印象を与えることなくこの作曲家独自の詩的な抒情性の中に見事な融合を見せている」と評し、「古今の変奏曲の中でも際だった存在」と記しています。

フランス近代音楽の中にあって、ロマン主義や印象主義とは異なった、どこかエスプリを感じさせる楽曲がフォーレの特徴と言えるでしょう。

音楽家の略歴です。

ガブリエル・ユルバン・フォーレ
【仏】1845-1924
ベルリオーズ、ワーグナーの強い影響下にフランス音楽の復興を志していたサン=サーンスから多くの感化を受ける。1871年設立の国民音楽協会に参画。パリのマドレーヌ協会のオルガニスト、パリ音楽院教授・同院長等を歴任。1909年には独立音楽協会を結成するなど、フランス近代音楽成立の準備段階としての純音楽の発展に貢献。歌曲、ピアノ曲、室内楽曲に傑作を残した。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)

精神性と宗教観ですか。ピアノ曲にも滲み出ているのですね。

幼少期には教会音楽を親しんだり、青年期にはマドレーヌ教会のオルガニストを務めたというのも影響がありそうだな。

【追想】時には鋭利な音楽評。

脚注にも注目です。

「ドビュッシー 音楽論集 反好事家八分音符氏 (ムッシュー・クロッシュ・アンティディレッタント)」です。
ドビュッシー 音楽論集 反好事家八分音符氏 (ムッシュー・クロッシュ・アンティディレッタント) クロード・ドビュッシー[著] / 平島正郎[訳] 岩波文庫

「ドビュッシー 音楽論集 反好事家八分音符氏(ムッシュー・クロッシュ・アンティディレッタント)」(クロード・ドビュッシー[著] / 平島正郎[訳] / 岩波文庫)です。

19世紀~20世紀のフランス音楽を代表する、クロード・ドビュッシーによる自選音楽評論集です。

ドビュッシーの甘口辛口で織りなすエッセイ風の語り口が楽しい評論です。

時には賞賛、時には辛辣といった装いで、如何にもドビュッシーらしくて面白いです。

さて本編ですが、フォーレについての明確な音楽評は書かれていません。

ですが「ローマ賞とサン=サーンスとをめぐる対話」という評論の脚注で登場します。

「ローマ賞」についての脚注に、「フォーレはパリのコンセルヴァトワール出身者でなかったため、コンクールに参加する資格がなかった。」(39ページ抜粋)とあります。

こういった形でフォーレの経歴を知るのも面白いですよね。

ところで、「コンセルヴァトワール」とは何ですか。

フランスの文化遺産や自然遺産を管理・保護する目的で設立されている団体や組織の総称だな。音楽に限ればフランス国立高等音楽院が挙げられるぞ。

【雑想】下手の横好き。(第107弾)

クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。

DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。

DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。

下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。

・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)

クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。

・ミュージック(8bit クラシック_01)

長く続く趣味を持ちたいです。

今回は、フォーレのピアノ曲でした。

フォーレのピアノ作品は、曲数のそう多くないため「全集」として纏めやすいのかもしれません。

ただそれ以上に、フォーレのピアノ曲すべてに「収録するのに値する完成度」があるのだと思います。

ピアノで奏でる純音楽の極み、といった所でしたね。

次回は、変則回です。

では、また。

古典主義やロマン主義とは異なったピアノ曲、という感じでしたね。

近代フランスおけるピアノ音楽のひとつのかたち、といったところだな。