こんにちは。はーねうすです。
今回は、「フォーレ 13の舟唄 (ピアノ作品全集 第2集)」を紹介します。
フランス近代音楽を代表するフォーレの、ピアノ曲だけを集めたアルバムの第2集です。
内訳は、「舟唄」と「即興曲」です。
ピアノ演奏は、ジャン=フィリップ・コラール氏です。
「第1集 (13の夜想曲 他)」については、「フォーレ 13の夜想曲 (ピアノ作品全集 第1集)」をご覧頂けると嬉しいです。
前々回に引き続き、フォーレのピアノ曲集ですね。
全3集の第2弾にあたるアルバムだな。
目次
【着想】ピアノの流麗な線。
「フォーレ 13の舟唄 (ピアノ作品全集 第2集)」のコンテンツです。
楽曲の形式としては、メンデルスゾーンやショパンら先達の作品に倣っています。その上に載せられた抒情性や幻想性は、フォーレの冴えの極みと言えます。
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | 舟唄 | 第1番: イ短調 | Op.26 |
2 | 舟唄 | 第2番: ト長調 | Op.41 |
3 | 舟唄 | 第3番: 変ト長調 | Op.42 |
4 | 舟唄 | 第4番: 変イ長調 | Op.44 |
5 | 舟唄 | 第5番: 嬰ヘ短調 | Op.66 |
6 | 舟唄 | 第6番: 変ホ長調 | Op.70 |
7 | 舟唄 | 第7番: ニ短調 | Op.90 |
8 | 舟唄 | 第8番: 変ニ長調 | Op.96 |
9 | 舟唄 | 第9番: イ短調 | Op.101 |
10 | 舟唄 | 第10番: イ短調 | Op.104-2 |
11 | 舟唄 | 第11番: ト短調 | Op.105 |
12 | 舟唄 | 第12番: 変ホ長調 | Op.106bis |
13 | 舟唄 | 第13番: ハ長調 | Op.116 |
14 | 即興曲 | 第1番: 変ホ長調 | Op.25 |
15 | 即興曲 | 第2番: ヘ短調 | Op.31 |
16 | 即興曲 | 第3番: 変イ長調 | Op.34 |
17 | 即興曲 | 第4番: 変ニ長調 | Op.91 |
18 | 即興曲 | 第5番: 嬰ヘ短調 | Op.102 |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.3」:「舟唄 第3番 変ト長調」
テンポが速められた夜想曲のような曲想で、抒情的な旋律が特徴の楽曲です。
装飾的に紡がれる旋律が印象的な主要主題と、揺れ動くように展開する起伏の大きい中間主題の構成がとても魅惑的です。
「No.15」:「即興曲 第2番 ヘ短調」
動静の落差が魅惑的な楽曲です。
絶え間なく進行する流麗な主要主題と、抒情的に歌い上げられる愛らしい副次主題のバランスがとても素敵です。
<おすすめ度★★>
「No.1」:「舟唄 第1番 イ短調」
流麗に紡がれる線の中に、少し陰のある曲調を忍ばせているのが印象的な楽曲です。
流れるように高音域へ駆け上がる線が特徴の主要主題と、中間部の力強く奏でられるパッションの対比が良いです。
「No.8」:「舟唄 第8番 変ニ長調」
他の舟唄にはみられないような、切れのあるリズムが特徴の楽曲です。
波のうねりを模したかのように描くパッセージが、様を変えて登場するユニークな楽曲です。
「No.12」:「舟唄 第12番 変ホ長調」
明るくて軽妙な、穏やかな流れに乗った曲想が特徴の楽曲です。
装飾付きで歌われる高音域の旋律が、軽やかで素敵です。
「No.16」:「即興曲 第3番 変イ長調」
多様なモチーフに魅了される楽曲です。
自由に曲想を上品にコーティングして綴る、軽妙洒脱な観がとても素敵です。
「No.18」:「即興曲 第5番 嬰ヘ短調」
無窮動に駆け巡る線が魅力的な楽曲です。
明確な主題の構築よりも、線の中に編み込まれた動機の操作に重みをおいたような印象を受けます。
<おすすめ度★>
「No.14」:「即興曲 第1番 変ホ長調」
素直にショパン的な楽曲です。
同型の反復と強弱のメリハリがある主要主題と、高音域で奏でられる装飾的な線と低音域歌われる主旋律の組み合わせが特徴です。
「No.13」:「舟唄 第13番 ハ長調」
華美な装飾を配した、何処か達観したかのような楽曲です。
リズムに比重があり、バルカローレのリズムに明確にしたかのような形式主徴に感じられます。
「No.14」:「舟唄 第4番 変イ長調」
バルカローレの律動が明快な楽曲です。
同型で示される揺らぎが特徴の主要部と、高音の装飾の下で歌われる旋律が特徴の中間部の組み合わせが良いです。
「No.5」:「舟唄 第5番 嬰ヘ短調」
のし掛かるような重みのある低音部の動きと、目まぐるしく旋回する高音部の動きが特徴の楽曲です。
「No.9」:「舟唄 第9番 イ短調」
もの思いに耽っているような、陰鬱な旋律が特徴の楽曲です。
徐々に感が極まったかのように展開します。
舟唄では、静から動、動から静へと進行するドラマティックな展開の楽曲が多いように感じられました。
即興曲では、ロマン主義時代の先達のように、自由な曲想をピアノに載せた軽妙さがありました。
教会旋法を用いた「フォーレ節」といったものが、生涯を通じてブレることのないことを強く感じさせる内容でしたね。
舟唄ですが、高音域で奏でられる装飾的な線が印象的ですね。
その装飾の下で主旋律を歌う楽曲が多いのも特徴かもしれんな。
【観想】ピアノで奏でる波間のゴンドラ。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
「舟唄」というタイトルの楽曲を、多くの作曲家が取り組んでいます。
ピアノ単独作品に目を向けると、メンデルスゾーンの「無言歌集 第2巻」にある「ヴェネチアの舟唄」、ショパンの「舟唄」、チャイコフスキーの「四季」にある「6月 -舟唄-」が有名ですよね。
ただ、どの作曲家も作曲数は1、2曲といったところで、「曲集」などの纏まった楽曲群の中の1曲といった体裁になっています。
フォーレの「舟唄」は、ショパンの作品と同様に独立した単独曲です。
ですが、ショパンの場合は1曲のみですが、フォーレは13曲も書き上げっています。
それほど、フォーレにとって思い入れのある楽曲形式だったのでしょうか。
ライナーノーツ(家里和夫氏[著])によると、1890年に初めてヴェネチアを訪問するよりも前に「舟唄」(「No.1 第1番 イ短調」~「No.4 第4番 変イ長調」) を書いていたようです。
そして、1920年に再度ヴェネチアを訪問した後に、最期の1曲である「No.13 第13番 ハ長調」を書き上げたそうです。
音楽的には、メンデルスゾーンやショパンの作品よりもより自由度が高い逸楽的な傾向にあります。
真意は分かりませんが、ヴェネチアという土地への憧れと、自身の曲想を載せる表現形式として理想型が合致した結果だったのかもしれませんね。
音楽家の略歴です。
ガブリエル・ユルバン・フォーレ
【仏】1845-1924
ベルリオーズ、ワーグナーの強い影響下にフランス音楽の復興を志していたサン=サーンスから多くの感化を受ける。1871年設立の国民音楽協会に参画。パリのマドレーヌ協会のオルガニスト、パリ音楽院教授・同院長等を歴任。1909年には独立音楽協会を結成するなど、フランス近代音楽成立の準備段階としての純音楽の発展に貢献。歌曲、ピアノ曲、室内楽曲に傑作を残した。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
色々な作曲家が「舟唄」を作曲していますね。
ピアノ曲以外では、オッフェンバックの「ホフマンの舟唄」が有名だな。
【追想】作曲家の横顔。
経歴で読み解く作曲家の素顔です。
「大作曲家たちの履歴書」(三枝成彰[著] / 中央公論社)です。
ベートーヴェンやショパンなど作曲家を、日本で流通している「履歴書用紙」のフォーマットで示すといった、ユニークな導入が特徴の1冊です。
とりわけ「金運」という欄に興味がそそられます。
また、「代表曲、あるいは転機となった曲」「三枝のこの一曲」というのも面白いです。作曲家ならではの観点を知ることができます。
さて、フォーレは12番目(位置づけとして「第12章」、357 ~ 381ページ)に紹介されています。
「音楽的な背景や、世界情勢がどのように作曲家を形作ったのか」といった「一般的な音楽史」だけでなく「容貌や気質、家庭環境や結婚観」などの「タブロイド的な情報」もあって楽しく読むことができます。
「パリ音楽院の教授となったフォーレは、ほとんど『オペレッタ作曲家養成学校」になりきっていた同校に容赦なくメスを入れ、純粋な音楽の形に戻そうと徹底的な改革を行った。(中略) 教会旋法を用いた独特の音は、ラヴェル、ドビュッシーら印象派、そして後のサティが誕生する大きな布石となった。」(364ページ抜粋)と記しています。
音楽的な面だけでなく、教育の面で功績もあって「フランス音楽の祖」「フランス音楽の確立者」という評がなされるのですね。
近代フランス音楽の祖、という位置づけのようですね。
音楽作品だけでなく、パリ音楽院での教授による後進の育成で果たした役割が強力だったようだな。
【雑想】下手の横好き。(第109弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。
DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。
下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
前々回を引き継いで、フォーレのピアノ曲でした。
フォーレは、30代あたりからピアノ曲を多く書きはじめ、その後の生涯を通じるジャンルとしています。
一連のピアノ作品群の創作は1922年に作曲した夜想曲が最期のようです。舟唄は、その前年の1922年で綴じています。
全曲を通して聴くと、作曲家の生涯を覗いたようで、感慨深くしみじみとします。
次回もフォーレのピアノ曲集です。
では、また。
フォーレのピアノ曲ですが、「ブレがない」というも特徴のように感じました。
一貫した「フォーレ節」だな。