こんにちは。はーねうすです。
今回は、「フォーレ 組曲『ドリー』(ピアノ作品全集 第3集)」を紹介します。
フランス近代音楽を代表するフォーレの、ピアノ曲だけを集めたアルバムの第3集です。
内訳は、「ヴァルス=カプリス」、「8つの小品」、「マズルカ」、「無言歌」と「組曲『ドリー』」などです。
ピアノ演奏は、ジャン=フィリップ・コラール氏です。
「第1集 (13の夜想曲 他)」については、「フォーレ 13の夜想曲 (ピアノ作品全集 第1集)」を、「第2集 (13の舟唄 他)」については、「フォーレ 13の舟唄 (ピアノ作品全集 第2集)」をご覧頂けると嬉しいです。
★打ち込みクラシック
DAW(Digital Audio Workstation)で入力したクラシック音楽のDTM(DeskTop Music)作品を紹介するコーナーを巻末に設けています。
今回紹介するアルバムの中から1曲をピックアップしていますので、是非お楽しみください。
引き続き、フォーレのピアノ曲集ですね。
全3集の第3弾にあたるアルバムだな。
目次
【着想】優雅なサロンの小品集。
「フォーレ 組曲『ドリー』(ピアノ作品全集 第3集)」のコンテンツです。
ピアノ曲としては、「夜想曲」や「舟唄」といった「単独作」を多く作曲したフォーレですが、このアルバムでは「8つの小品」や「ドリー」のように性格を異にする作品を纏めた小品集が収められています。そのためもあってか、サロン風の香りが漂う音楽集にもなっています。
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | 4つのヴァルス・カプリス | 第1番: イ長調 | Op.30 |
2 | 4つのヴァルス・カプリス | 第2番: 変ニ長調 | Op.38 |
3 | 4つのヴァルス・カプリス | 第3番: 変ト長調 | Op.59 |
4 | 4つのヴァルス・カプリス | 第4番: 変イ長調 | Op.62 |
5 | 8つの小品 | カプリッチョ 変ホ長調 | Op.84 |
6 | 8つの小品 | 幻想曲 変イ長調 | Op.84 |
7 | 8つの小品 | フーガ イ短調 | Op.84 |
8 | 8つの小品 | アダージェット ホ短調 | Op.84 |
9 | 8つの小品 | 即興 嬰ハ短調 | Op.84 |
10 | 8つの小品 | フーガ ホ短調 | Op.84 |
11 | 8つの小品 | 喜び ハ長調 | Op.84 |
12 | 8つの小品 | 夜想曲 変ニ長調 | Op.84 |
13 | マズルカ | 変ホ長調 | Op.32 |
14 | 3つの無言歌 | 第1番: 変イ長調 | Op.17 |
15 | 3つの無言歌 | 第2番: イ短調 | Op.17 |
16 | 3つの無言歌 | 第3番: 変イ長調 | Op.17 |
17* | ドリー (4手のピアノのための組曲) | I. 子守歌 | Op.56 |
18* | ドリー (4手のピアノのための組曲) | II. ミアウ | Op.56 |
19* | ドリー (4手のピアノのための組曲) | III. ドリーの庭 | Op.56 |
20* | ドリー (4手のピアノのための組曲) | IV. 子ねこのワルツ | Op.56 |
21* | ドリー (4手のピアノのための組曲) | V. やさしさ | Op.56 |
22* | ドリー (4手のピアノのための組曲) | VI. スペイン風ステップ | Op.56 |
23* | バイロイトの思い出 (4手のピアノのための)** | ― | ― |
**: アンドレ・メサジェ (共作)
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.17」:「ドリー (4手のピアノのための組曲) I. 子守歌」
ひたすらに優しい雰囲気で満たされた楽曲です。
キャッチな伴奏型と、愛らしく柔和なフレーズの旋律が印象的です。
終始優しさに包まれている心地よさに浸ります。
結尾では冒頭の主題が小さく再現されるのも印象的です。
「No.13」:「マズルカ」
洒落っ気のある、軽快なワルツのような楽曲です。
明るく跳ねるような律動と、メロディックな線が特徴の主要部の曲想に引き込まれます。
陰鬱気味の副次的な部位と、マズルカの特徴を強く伴った部位など、曲想も豊富な内容になっています。
「No.9」:「8つの小品 即興」
外連味がない、シンプルな線で描かれる動機が魅力的な楽曲です。
揺れ動く心境のように描かれるセンチメンタルな曲想が、赴くままに流れていくような様に魅了されます。
<おすすめ度★★>
「No.17」:「ドリー (4手のピアノのための組曲) II. ミアウ」
気まぐれに動き回っているかのような、活発な印象を受ける楽曲です。
コミカルな律動がとても印象的です。
「No.23」:「バイロイトの思い出 (4手のピアノのための)」
様々なモチーフが目まぐるしく変化し、展開してゆく楽曲です。
ワーグナーの楽劇に魅了され、その感動や興奮が色濃く前面に押し出された感があります。
楽劇「ニーベルングの指環」のモチーフを、パロディのように扱いながらも、どこかワーグナー音楽へのオマージュや憧れを感じさせる内容になっています。
「No.3」:「4つのヴァルス=カプリス 第3番」
力強く、派手目に展開する構成が印象的な楽曲です。
強弱、緩急のメリハリが効いています。
中間部に登場する、穏やかで蠱惑的な曲想が素敵です。
「No.7」:「8つの小品 フーガ」
バロック的で、淡泊な音型が絡み合って展開する楽曲です。
オーソドックスな形式と、控えめなロマンチシズムが溶け合った曲想と構成が魅力です。
「No.21」:「ドリー (4手のピアノのための組曲) V. やさしさ」
微睡みの只中にあるような、優柔な雰囲気が魅力の楽曲です。
何処か捉えどころのない線の動きが特徴です。
<おすすめ度★>
「No.11」:「8つの小品 喜び」
揺れ動く波間に漂うような雰囲気を持つ楽曲です。
そこはかとなく郷愁感があります。
「No.15」:「3つの無言歌 第2番」
歌唱的な旋律と、装飾的なピアノの動きが組み合わさった楽曲です。
繰り返される明瞭な動機がクセになります。
「No.20」:「ドリー (4手のピアノのための組曲) IV. 子ねこのワルツ」
軽やかにステップを踏みながら、闊歩している様を想起させる楽曲です。
唯我独尊的な姿勢で歩く様を、見事に音楽で表現しています。
「No.1」:「4つのヴァルス=カプリス 第1番」
流れるように軽やかな楽曲です。
キラキラと煌めくように降り注ぐ装飾が魅力的です。
「8つの小品」や「ドリー」のように、異なる形式や様式が纏められた楽曲群は、楽曲間の変化が明瞭で、聴いていて楽しくなりますね。
比較的短い楽曲も多いので、より一層サロンで好まれるような音楽の雰囲気を纏ったアルバムです。
8つの小品や、ドリーのような組曲風の小品集って、フォーレとしては珍しいみたいですね。
「夜想曲」や「舟唄」といった、明確な曲想の「単独作」を多く作曲しているからな。パッケージングされた作品群は稀だと思うぞ。
【観想】異色の楽曲。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
今回紹介したアルバムの中で、「バイロイトの思い出」という作品があります。
フォーレに期待する曲想を見事に裏切る、唯一無二の楽曲として異彩を放っています。
19世紀の音楽界の寵児、ワーグナーの楽劇をモチーフとして即興的に誕生した楽曲のようです。
ライナーノーツ(家里和夫氏[著])によると、「(前略) サロンでの一夜の即興から生まれたらしい。その時フォーレは共にバイロイトを経験したメサジェ*と並んでピアノに坐り、「指環」**のライトモチーフによって互いに突然の転調など相手を出し抜くような方法を駆使して競い合った」とあります。
*:フランスの作曲家 アンドレ・メサジェ (1853 – 1929) (ブログ管理者補注)
**: ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」(四部作) (ブログ管理者補注)
誕生の経緯やある種のパロディ音楽ともとれる作品ですが、ワーグナー作品へのオマージュとも言えそうです。
楽曲の端々から、興奮状態にあるフォーレの様相を伺えます。
当時の音楽界におけるワーグナーへの熱狂を、フォーレの異色作を通して知ることができますね。
音楽家の略歴です。
ガブリエル・ユルバン・フォーレ
【仏】1845-1924
ベルリオーズ、ワーグナーの強い影響下にフランス音楽の復興を志していたサン=サーンスから多くの感化を受ける。1871年設立の国民音楽協会に参画。パリのマドレーヌ協会のオルガニスト、パリ音楽院教授・同院長等を歴任。1909年には独立音楽協会を結成するなど、フランス近代音楽成立の準備段階としての純音楽の発展に貢献。歌曲、ピアノ曲、室内楽曲に傑作を残した。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
ところで、どうして「バイロイトの思い出」なのでしょうか。
バイロイト音楽祭での観劇によるものだからだな。この音楽祭はワーグナーが自身の楽劇「ニーベルングの指環」を上演するために創設されたもので、フォーレはそこで体験したワーグナー音楽で相当に興奮したようだぞ。
【追想】小粋なピアノ曲集。
愛らしい作品がコンパクトに収められています。
「フォーレ ピアノ小品集」(全音楽譜出版社)です。
今回紹介したアルバムの中では、「No.9 8つの小品 即興」、「No.15 3つの無言歌 第3番」、「No.17 『ドリー』第1曲」が収録されています。
なかでも、4手連弾の楽曲として有名な「ドリー 第1曲」がいいですね。
楽譜では「ベルリーズ」という名称が添えられています。アルバムに記載されているとおり「子守歌」という意味合いです。
伴奏型で印象的なフレーズを生んでいるのが特徴の本作ですが、譜面はとても淡泊です。
楽譜を見ているだけで、フォーレの優しさが伝わってきます。童心に返って作曲したフォーレの姿も伝わってきます。
そして、曲想指定です。とてもユニークです。
「そよ風がふいてほほえむように」がとても可愛らしいですね。
この楽譜集には、「如何にもピアノ的な技巧」といった側面の作品はありません。伴奏に載せて旋律を歌わせる、歌曲的な構造の作品がメインです。
歌曲的なフレーズで魅せるフォーレのピアノ作品集と言えるでしょう。
「ドリー」ですが、フォーレの作品の中でもかなりの有名作ですよね。
アンリ・ラボーというフランスの作曲家が管弦楽曲用に編曲して、より一層有名になったという経緯があるな。
【雑想】下手の横好き。(第110弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
「Studio One」シリーズで打ち込んだクラシック音楽をお披露目するコーナーです。
今回は、<おすすめ度★★★>として紹介したフォーレの「8つの小品 即興 嬰ハ短調」です。
他作品を含め、下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
今回でフォーレの回は一旦終了です。
劇音楽「ペレアスとメリザント」、「レクイエム」については機会を改めて紹介します。
今回紹介したアルバムで、フォーレのピアノ曲をコンプリートしました。
全集マニアとしては、嬉しくなってしまいます。
「全○集の第△集」というように纏めているアルバムは、とてもありがたいですね。
次回は、メトネルのピアノ曲集を紹介する予定です。
では、また。
フォーレのピアノ曲を総括した、っていう感じですね。
第1集や第2集のように、「夜想曲」や「舟唄」などの単独作を1括りにカテゴライズしているのが良かったよな。