こんにちは。はーねうすです。
今回は、「ラフマニノフ 2台のピアノのための作品全集」を紹介します。
アンドレ・プレヴィン氏とウラディミール・アシュケナージ氏の名コンビで聴くピアノの交響的な世界は、とても華やかです。
また、アシュケナージ氏の演奏による「練習曲集『音の絵』」もすべて納められているので、「全集」の2種盛りになっています。興奮しますね。
・CD2枚組のボリュームになります。
ピアノを2台使用した楽曲って、珍しい気がします。
有名なところでは、モーツァルトのソナタがあるぞ。
目次
【着想】2台の音響。
「ラフマニノフ 2台のピアノのための作品全集」のコンテンツです。
2台のピアノによる作品は、同じくピアニスト2名で奏でる連弾曲よりも制限が少ないため、自由さを感じますね。また、楽器の配置の効果もあって、音響上の効果が1台よりも豊かに感じます。(ケースにひびが入っていますね。ひょんなことでよく割ってしまいます。)
CD1
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | ロシア狂詩曲(2台のピアノのための) | ― | ― |
2 | 2台のピアノのための組曲 第1番「幻想的絵画」 | 第1楽章:舟歌 | Op.5 |
3 | 2台のピアノのための組曲 第1番「幻想的絵画」 | 第2楽章:夜・・・愛 | Op.5 |
4 | 2台のピアノのための組曲 第1番「幻想的絵画」 | 第3楽章:涙 | Op.5 |
5 | 2台のピアノのための組曲 第1番「幻想的絵画」 | 第4楽章:復活祭 | Op.5 |
6 | 2台のピアノのための組曲 第2番 | 第1楽章:序奏 | Op.17 |
7 | 2台のピアノのための組曲 第2番 | 第2楽章:ワルツ | Op.17 |
8 | 2台のピアノのための組曲 第2番 | 第3楽章:ロマンス | Op.17 |
9 | 2台のピアノのための組曲 第2番 | 第4楽章:タランテラ | Op.17 |
10 | 練習曲「音の絵」 | 第1番 ヘ短調 | Op.33 |
11 | 練習曲「音の絵」 | 第2番 ハ長調 | Op.33 |
12 | 練習曲「音の絵」 | 第3番 ハ短調 | Op.33 |
13 | 練習曲「音の絵」 | 第4番 ニ短調 | Op.33 |
14 | 練習曲「音の絵」 | 第5番 変ホ短調 | Op.33 |
15 | 練習曲「音の絵」 | 第6番 変ホ長調 | Op.33 |
16 | 練習曲「音の絵」 | 第7番 ト短調 | Op.33 |
17 | 練習曲「音の絵」 | 第8番 嬰ハ短調 | Op.33 |
CD2
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | 交響的舞曲(2台のピアノのための) | 第1曲:ノン・アレグロ | Op.45a |
2 | 交響的舞曲(2台のピアノのための) | 第2曲:アンダンテ・コン・モート | Op.45a |
3 | 交響的舞曲(2台のピアノのための) | 第3曲:レント・アッサイ – アレグロ・ヴィヴァーチェ | Op.45a |
4 | 練習曲「音の絵」 | 第1番 ハ短調 | Op.39 |
5 | 練習曲「音の絵」 | 第2番 イ短調 | Op.39 |
6 | 練習曲「音の絵」 | 第3番 嬰ヘ短調 | Op.39 |
7 | 練習曲「音の絵」 | 第4番 ロ短調 | Op.39 |
8 | 練習曲「音の絵」 | 第5番 変ホ短調 | Op.39 |
9 | 練習曲「音の絵」 | 第6番 イ短調 | Op.39 |
10 | 練習曲「音の絵」 | 第7番 ハ短調 | Op.39 |
11 | 練習曲「音の絵」 | 第8番 ニ短調 | Op.39 |
12 | 練習曲「音の絵」 | 第9番 ニ長調 | Op.39 |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「CD1_No.5」:「組曲 第1番 第4楽章:復活祭」
終曲に相応しく、昂揚感のある曲想がとても印象的です。
ひたすらに繰り返される音型が徐々に高音域に近づいていく様と、打ち鳴らされる低音域の重奏が相まって、とても感動的です。ピアノの全音域を使っていそうです。
ライナーノーツ(斉藤弘美氏著)では、「復活祭のにぎわいを表す冒頭の軽快なモティーフ(第1ピアノ)と鐘の音を模したモティーフ(第2ピアノ)が執拗に繰り返され、クライマックスを築いて行く。」と評しています。
<おすすめ度★★>
「CD1_No.15」:「練習曲『音の絵』第6番 変ホ長調」
「CD1_No.17」:「練習曲『音の絵』第8番 嬰ハ短調」
「CD2_No.9」:「練習曲『音の絵』第6番 イ短調」
「練習曲『音の絵』」では、「CD1_No.15」の「練習曲 第6番 変ホ長調」の快活で派手な曲調、「CD1_No.17」の「練習曲 第8番 嬰ハ短調」のドラマティックな展開、「CD2_No.9」の「練習曲 第6番 イ短調」の無窮動に駆け上がる感覚がとても魅力的ですね。
<おすすめ度★>
「CD1_No.8」:「2台のピアノのための組曲 第2番 第3楽章:ロマンス」
「CD1_No.6」~「CD1_No.9」の「組曲 第2番」は全般的にラフマニノフ節です。ラフマニノフにしては珍しく長調が基調になっていて、抒情と優美が際立っています。
なかでも「CD1_No.8」の「第3楽章:ロマンス」は、掛け値なしにラフマニノフの十八番です。
2台のピアノで奏でる音楽って、音響効果上でも独特ですよね。
特に快活でスピーディな楽曲の場合に、際立つ感じがするだろう。
【観想】2台の共演。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
アルバムとしては、ラフマニノフがモスクワ音楽院在学中(1891年)に書いた「CD1_No.1」の「ロシア狂詩曲」と、最後の創作となった「CD2_No.1」~「CD2_No.3」の「交響的舞曲」の対比が面白いですね。前者は、軽快で、明快。活気に溢れた若さを感じます。後者は緻密に描かれた構造を持った作品で、円熟の達観を感じます。
演奏では、プレヴィン氏とアシュケナージ氏の共演が素敵ですね。ともにピアニスト兼指揮者として活躍されていて、ピアノ協奏曲でも共演もしています。(当ブログ「ラフマニノフ ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 / パガニーニの主題による狂詩曲」をご覧いただければ嬉しいです。)
ライナーノーツ(斉藤弘美氏著)では、「アンサンブルの駆け引きの絶妙さはいうに及ばず、お互いの十八番のラフマニノフを屈託なく大らかに歌い上げている。」と評しています。このようなアルバムに出会えて幸せですね。
音楽家の略歴です。
<略歴> セルゲイ・ヴァシリエヴィチ・ラフマニノフ 【露】1873-1943 チャイコフスキーの影響を強くうけたモスクワ学派の様式を守り、ピアノ曲を中心にしたあらゆる分野の作品を残す。ロシア革命でスイスに亡命、その後はもっぱらピアノ・ヴィルトゥオーソとしてヨーロッパ、アメリカで活躍。 (「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
この共演は素敵ですね。息もぴったりな印象を受けます。
ともにピアニストであり、指揮者でもあるからな。アンサンブルの理想型だよ。
【追想】練習曲の音符たち。
踊る音符の魅力です。
練習曲(エチュード)といえば、ショパンの「Op.10」と「Op25」を真っ先に思い浮かべるでしょう。また、バッハの平均律クラーヴィアに見られる24の調を網羅する形式が半ば特徴になっています。
ラフマニノフについては、その定義に則っていませんね。見事に短調だらけです。「音の絵」と題しているように、ピアノの演奏効果による表現に重点があるように感じますね。
「CD1_No.11」の「第2番 ハ長調」の華麗に舞う様や、「CD2_No.10」の「第7番 ハ短調」の全般的に陰鬱な雰囲気もあり、バラエティに富んでいます。
「ラフマニノフ 練習曲集『音の絵』」(和田則彦[監修] ドレミ楽譜出版社)では、「19世紀に発達した種々のピアノ演奏技術の習得に役立つと共に、高度な音楽性も併せ備えています。それに加えて「絵画的」の形容に相応しく、詩的な情感に溢れた描写性豊かな表現が、一層近代的な色彩感をもたらしていることも事実」と評しています。
五線の上を駆け回る音符の数々に、興奮せずにはいられません。
練習曲とは名ばかりのような…。極度な難曲に思えます。
20世紀の作品だからな。発達しつくした感のある演奏技巧の、さらに上を目指すような役割を担っているのだろう。
【雑想】下手の横好き。(第15弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。
DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。
下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
引き続き、ラフマニノフ編でしたね。
結局、ピアノ曲のアルバム紹介に舞い戻りました。
「2台のピアノ」で演奏される作品は、クラシック音楽の世界でも、メジャーな部類ではないのかも知れません。そのため、却ってこのラフマニノフ作は際だった感がありますね。
特に今回紹介した「組曲 第1番」の「第4楽章:復活祭」は、繰り返し聴きたくなる中毒性のある楽曲です。
では、また。
2台のピアノで演奏される重厚感に、圧倒されるアルバムでしたね。
演奏家2名の息の合っていて、1台では味わえない音響が楽しめたな。