こんにちは。はーねうすです。

今回は、「バルトーク:ピアノ協奏曲全集」を紹介します。

20世紀を代表するハンガリーの作曲家であるバルトークの、ピアノ協奏曲3曲と、2台のピアノと打楽器のためのソナタを収めたアルバムになります。

ピアノはウラディミール・アシュケナージ氏、指揮はサー・ゲオルグ・ショルティ氏、管弦楽はロンドン・フィルハーモニー管弦楽団です。

バルトークのピアノ協奏曲がすべて収録されたアルバムですね。

2台のピアノと打楽器のためのソナタについては、管弦楽パートを加えた協奏曲版もあるようだぞ。

【着想】打楽器に変貌したピアノ。

バルトーク:ピアノ協奏曲全集」のコンテンツです。

「バルトーク:ピアノ協奏曲全集」です。
バルトーク:ピアノ協奏曲全集 レーベル[LONDON]

バルトークはピアノを旋律楽器としてだけでなく、打楽器のように扱うという点で他の作曲家と一線を画しています。その特色は、ピアノ協奏曲にも十二分に発揮されています。

CD1

No.曲名(1)曲名(2)作品番号
1ピアノ協奏曲 第1番第1楽章:アレグロ・モデラート – アレグロSz.83
2ピアノ協奏曲 第1番第2楽章:アンダンテSz.83
3ピアノ協奏曲 第1番第3楽章:アレグロ・モルトSz.83
4ピアノ協奏曲 第2番第1楽章:アレグロSz.95
5ピアノ協奏曲 第2番第2楽章:アダージョSz.95
6ピアノ協奏曲 第2番第3楽章:アレグロ・モデラートSz.95

CD1

No.曲名(1)曲名(2)作品番号
1ピアノ協奏曲 第3番第1楽章:アレグレットSz.83
2ピアノ協奏曲 第3番第2楽章:アダージョ・レリジオーソSz.83
3ピアノ協奏曲 第3番第3楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェSz.83
4*2台のピアノと打楽器のためのソナタ第1楽章:アッサイ・レントSz.95
5*2台のピアノと打楽器のためのソナタ第2楽章:レント・マ・ノン・トロッポSz.95
6*2台のピアノと打楽器のためのソナタ第3楽章:アレグロ・ノン・トロッポSz.95
*: ヴォフカ・アシュケナージ (2nd ピアノ)、デイヴィッド・コークヒル(打楽器)、アンドリュー・スミス(打楽器)

ちょっとした所感です。

<おすすめ度★★★>

「CD1_No.3」:「ピアノ協奏曲 第1番 第3楽章」

迫り来る強襲猛攻といった感が強いエネルギッシュな楽曲です。

高揚するリズムをピアノが奏でて管弦楽が威勢を持って歌うといった、はっちゃけた曲調が楽しいです。

後半に差し掛かり、不穏な管・弦・打の動きの中、無窮動に駆け巡るピアノに興奮します。

「CD2_No.2」:「ピアノ協奏曲 第3番 第2楽章」

哀愁感を伴った、まるで教会で奏でられる慰めの歌のような楽曲です。

弦が描く柔らかな線の上で奏でられるピアノによるコラールが、一際に美しいです。

まるでカタルシスに至ったかのような心境になります。

一転して軽やかな曲想を得た後、改めて慰めのような主題がピアノで歌われる演出に感動します。

<おすすめ度★★>

「CD1_No.1」:「ピアノ協奏曲 第1番 第1楽章」

野趣に溢れた、エネルギッシュな楽曲です。

豪胆な序奏に続き、激しく打ち鳴らされるピアノと弦楽と打楽の上で管楽が咆哮する第1主題。

静けさを纏いつつも戯けた感を醸す第2主題。

徐々にはちゃめちゃっぽく管弦楽が絡まり合う中、ピアノがリズム楽器然として打楽器のように振る舞って締めくくられます。

「CD1_No.5」:「ピアノ協奏曲 第2番 第2楽章」

静寂が過ぎて、まるで無の境地のような雰囲気の楽曲です。

弱音で示される弦楽が酷く静かで、ピアノで示される部位も少なくかつ弱音という、静謐というにはあまりにも静かすぎる感がします。

結尾前でティンパニーの唸りを伴ってピアノがコラールを奏でます。そして、弱音で奏でられる弦楽の主題に回帰します。

「CD2_No.4」:「2台のピアノと打楽器のためのソナタ 第1楽章」

表現主義的な曲想と構成が特徴の楽曲です。

淡々と徐々に音量を増すピアノと、祭り囃子のような律動を執拗に繰り返すリズムで構成されす主要主題がユニークです。

どの部位を切り取っても、律動による昂揚と興奮が味わえます。

「CD2_No.6」:「2台のピアノと打楽器のためのソナタ 第3楽章」

民俗舞曲風のアップテンポでコミカルなナンバー、といった体裁の楽曲です。

無窮動に動線を描くピアノと、それに呼応するかのように様々な打楽器群が掛け合う楽しい内容になっています。

<おすすめ度★>

「CD1_No.2」:「ピアノ協奏曲 第1番 第2楽章」

表現主義的な曲想の楽曲です。

不協和音を伴ったコードをピアノが淡々と奏でて、打楽器がメインになって応答するアンサンブルといった具合です。

「CD1_No.4」:「ピアノ協奏曲 第2番 第1楽章」

野性味が溢れる律動が支配的な楽曲です。

轟々と唸るような動機で構成された主要主題と、幾分旋律的な動機で構成された副次主題トの対比が特徴です。

「CD1_No.6」:「ピアノ協奏曲 第2番 第3楽章」

急速に展開しては、同型を執拗に繰り返したり、魅惑的な旋律を歌ったりと、気性の変化に富んだ摩訶不思議な楽曲です。

ピアノが極度に打楽器然とする部位が印象的です。クライマックスでは混沌めいた華麗さに目眩を覚えます。

「CD2_No.1」:「ピアノ協奏曲 第3番 第1楽章」

華やかな雰囲気を醸し出す楽曲です。

ピアノが旋律楽器としての役割を担っている、といった点が異様と感じとれるぐらいにバルトーク作としては異質な作品です。

「CD2_No.3」:「ピアノ協奏曲 第3番 第3楽章」

くるくると目まぐるしく駆け巡るような楽曲です。

勇壮な音響を奏でる管弦楽と、我が道を行くように軽やかな音を刻むピアノとの組み合わせが面白いです。

「CD2_No.5」:「2台のピアノと打楽器のためのソナタ 第2楽章」

幻想的な雰囲気に包まれた楽曲です。

ピアノが奏でる単調な音型が特徴の主要主題と、やはりピアノが奏でる個性的なリズムの中間主題の対比が面白いです。



打楽器的な扱いで登場したピアノが、途中で旋律楽器に切り替わったときの落差が堪らなく素敵な楽曲群ですね。

「バルトーク:ピアノ協奏曲全集」です。
バルトーク:ピアノ協奏曲全集 レーベル[LONDON]

作品番号が「Sz」となっていますね。

セールレーシ番号だな。セールレーシはハンガリーの音楽学者で、「バルトークの音楽作品と音楽学論文の目録」で記した番号に由来する。因みにバルトーク自身は、Opで作品番号を管理していたぞ。

【観想】打楽器に特化したソナタ。

魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。

今回紹介したアルバムで、とりわけユニークな作品は「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」です。

バルトークがいかに「打楽器」という楽器群を偏愛していたのかが分かる作品です。

他に類を見ない編成になっています。その内訳は次の通りです。

  • ピアノ ×2
  • ティンパニー ×3
  • 木琴 ×1
  • 懸垂シンバル ×2
  • 大太鼓 ×1
  • トライアングル ×1
  • タムタム ×1
  • 合わせシンバル ×1

ピアノ自体も「打楽器」的な用法になっていますので、バーバリズムの躍動感に満ち触れた内容になっています。

加えて、民族音楽の探求に根ざした音楽語法の使用も特徴となって表出しています。

「CD2_No.6」の「2台のピアノと打楽器のためのソナタ 第3楽章」は、その真骨頂といえる内容となっています。

2台のピアノと打楽器のためのソナタは協奏曲スタイルに編曲され、「2台のピアノ、打楽器と管弦楽のための協奏曲」としても発表されています。機会があれば聴いてみたいですね。

音楽家の略歴です。

バルトーク・ベーラ
【ハンガリー】1881-1945
ハンガリーの最大の作曲家であるのみならず、民俗的語法による現代的手法の開拓者として、20世紀音楽に絶大な影響を残す。従来ハンガリー民謡と考えられていたジプシー音楽に代わって、マジャール人の音楽を発掘し、作曲の基礎とした。1920年代からは、その語法を分解・再生産して新古典的技法のなかで発展させ、生命力に富んだ作品を生みだす。

ところで、タムタムってどんな楽器ですか。可愛らしい名前で気になりました。

銅鑼のような楽器だな。スタンドに吊された状態で、ヘッド付きのマレットで叩いて演奏する。重量感のある音が、長い時間持続するのが特徴だな。

【追想】広域な美学の見地。

美学上の位置づけが確認できます。

「美学事典 増補版」です。
美学事典 増補版 竹内敏雄[編修] 弘文堂

「美学事典 増補版」(竹内敏雄[編修] / 弘文堂)です。

音楽に限らず、美術、建築、詩文など芸術全般に関わる事象を、美学的な視座で纏められた事典です。

古今の哲学者、美学者の学識や見解が記載されており、芸術作品の論文的な研究には欠かせない1冊となっています。

今回紹介したバルトークについての、ほんの少し記載されています。

「音楽学の部 Ⅱ. 音楽の時代様式」という節の、「現代」という項に登場します。

内容としては、「現代様式」を「印象派、表現派、未来派、新音楽、新古典主義、新浪漫派」(355ページ抜粋/要約)と定義したうえで、「現代様式において忘れることのできぬ指導者」(355ページ抜粋)として、ウェーベルン、メシアン、ヴァレーズと名を連ねています。

紹介としては、正直物足りないのは否めませんが、広域に美学を論じた事典で名前が挙がっている点が重要なのだと感じました。

音楽に特化した書籍に関わらず、哲学的・美学的な見解から論じられる音楽の文献にも目を通したいですね。

ところで「編修」とはどのような立ち位置なのでしょうか。

「書籍」として編纂するといった点では「編集」と同じ仕事だな。「編修」の場合は様々な素材を集めて「事典・辞典」や「歴史書」といった形に整えることを指す場合が多いな。

【雑想】下手の横好き。(第115弾)

クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。

DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。

DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。

下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。

・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)

クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。

・ミュージック(8bit クラシック_01)

長く続く趣味を持ちたいです。

今回は、バルトークの単発回でした。

バルトークについては、「ルーマニア民俗舞曲」の作曲家というイメージが強く、民族音楽の探究者といった見方をしていました。

今回紹介したアルバムに出会って、前述の偏見を一変することができました。

現代音楽の中でも飛び切りチェレンジングな精神を持ち合わせた開拓者なのだと、つくづく感服させられました。

では、また。

確かに、民族音楽を題材した作曲家のイメージがありました。

民族音楽の研究者として超一流なうえ、現代音楽的な音楽語法の開拓者といった多面性がバルトークの魅力だな。