こんにちは。はーねうすです。

今回は、「ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲『アメリカ』/ スメタナ:弦楽四重奏曲『わが生涯より』」を紹介します。

19世紀のチェコを代表する2作曲家の弦楽四重奏曲を収めたアルバムです。

ともに晩年作曲された円熟期の作品がカップリングされています。

演奏は、エマーソン弦楽四重奏団です。

ドヴォルザークとスメタナの室内楽ですね。

交響曲や交響詩の作曲家というイメージが強い作曲家だが、室内楽といった小規模編成の作品にも秀でているぞ。

【着想】円熟期の室内楽。

ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲『アメリカ』/ スメタナ:弦楽四重奏曲『わが生涯より』」のコンテンツです。

「ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲『アメリカ』/ スメタナ:弦楽四重奏曲『わが生涯より』」です。
ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲『アメリカ』/ スメタナ:弦楽四重奏曲『わが生涯より』 レーベル[Deutsche Grammophon]

チェコの出身、19世紀の後半、晩年の作品という共通点が多く見受けられます。円熟期の室内楽といった点も含め、かなり渋く味わい深いです。

No.作曲家曲名(1)曲名(2)作品番号
1*ドヴォルザーク弦楽四重奏曲 第12番 ヘ長調『アメリカ』第1楽章:Allegro ma non troppoOp.96
2*ドヴォルザーク弦楽四重奏曲 第12番 ヘ長調『アメリカ』第2楽章:LentoOp.96
3*ドヴォルザーク弦楽四重奏曲 第12番 ヘ長調『アメリカ』第3楽章:Molto vivaceOp.96
4*ドヴォルザーク弦楽四重奏曲 第12番 ヘ長調『アメリカ』第4楽章:Finale. Vivace, ma non troppoOp.96
5**スメタナ弦楽四重奏曲 第1番 ホ短調『わが生涯より』第1楽章:Allegro vivo appassionato
6**スメタナ弦楽四重奏曲 第1番 ホ短調『わが生涯より』第2楽章:Allegro moderato à la Polka
7**スメタナ弦楽四重奏曲 第1番 ホ短調『わが生涯より』第3楽章:Largo sostenuto
8**スメタナ弦楽四重奏曲 第1番 ホ短調『わが生涯より』第4楽章:Vivace
*: ユージン・ドラッカー(第1ヴァイオリン)、フィリップ・セッツァー(第2ヴァイオリン)、ローレンス・ダットン(ヴィオラ)、デイヴィッド・フィンケル(チェロ)
**: フィリップ・セッツァー(第1ヴァイオリン)、ユージン・ドラッカー(第2ヴァイオリン)、ローレンス・ダットン(ヴィオラ)、デイヴィッド・フィンケル(チェロ)

ちょっとした所感です。

<おすすめ度★★★>

「No.2」:ドヴォルザーク「弦楽四重奏曲 第12番 第2楽章」

物憂げ寂寥感を伴った、優美な楽曲です。

伸びのある感傷的な旋律で構成されていて、終始メランコリックな雰囲気を漂わせた曲想が美しいです。

「No.8」:スメタナ「弦楽四重奏曲 第1番 第4楽章」

歓喜悲愴を体現した、ドラマチックな一遍の悲劇といった楽曲です。

ボヘミア調の明るく喜びに満ち溢れたかのような主題が、無音の休止を挟んだ後激変します。

その後に登場する、モスキート音のように聴覚を刺激するヴァイオリンが印象的です。

絶望感で一杯になる強烈な悲劇性を持つ主題、まるで希望も救済もないかのように、静かに寂しく綴じられます。

「No.7」:スメタナ「弦楽四重奏曲 第1番 第3楽章」

悲嘆に暮れた、哀歌のような寂しさを伴う楽曲です。

エレジーのように歌われる主題が殊更に物悲しくも、甘美に鳴り響きます。

劇的な高潮を挟み、哀愁が漂うセンチメンタルな主題が高らかに歌われる部位が酷く美しいです。

<おすすめ度★★>

「No.1」:ドヴォルザーク「弦楽四重奏曲 第12番 第1楽章」

牧歌的郷愁を感じさせる楽曲です。

民謡調の喜びに満ちた第1主題と、少し愁いを帯びた第2主題で構成されています。

激しく揺れ動く展開部の後、色合いを変えた形で提示部が再現されて締めくくられます。

「No.3」:ドヴォルザーク「弦楽四重奏曲 第12番 第3楽章」

民俗舞曲を思わせる、明朗憂愁が綯い交ぜになった楽曲です。

敬愛する自然を表わすかのように、鳥の鳴き声や風の音を模した音響を織り交ぜています。

「No.5」:スメタナ「弦楽四重奏曲 第1番 第1楽章」

劇的な展開を伴う、物語性の構成を持つ楽曲です。

熱情的で苛烈な第1主題と、感傷的でロマンチックな第2主題の対比が印象的です。

昂揚感に満ちた展開を挟み、酷くセンチメンタルな曲想の部位を経過して締めくくられます。

<おすすめ度★>

「No.4」:ドヴォルザーク「弦楽四重奏曲 第12番 第4楽章」

活気と活力が全面に溢れ出した楽曲です。

多様なモチーフが頻出する、表情が豊かで楽しい内容になっています。

「No.6」:スメタナ「弦楽四重奏曲 第1番 第2楽章」

陽気なダンスミュージックといった様相の楽曲です。

弾むような律動で構成される主要主題と、波間に揺れて漂っているかのような副次主題との対比が面白いです。



ドヴォルザークの作品は、交響曲で聴かれる華やかさはないものの、内包する「趣」といった点では、室内楽曲でも通底していると感じる内容でしたね。

一方スメタナの作品は、交響詩で見受けられる風景画のような「趣」は少なく、自身の内的な吐露といった心象のある作品でしたね。

「ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲『アメリカ』/ スメタナ:弦楽四重奏曲『わが生涯より』」です。
ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲『アメリカ』/ スメタナ:弦楽四重奏曲『わが生涯より』 レーベル[Deutsche Grammophon]

民謡調の旋律やリズムが印象的に感じる曲が多いですよね。

ボヘミア民謡や黒人霊歌といった、ローカル色のある特徴を昇華したといった点で共通しているな。

【観想】対照的な室内楽。

魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。

今回紹介したドヴォルザークとスメタナの弦楽四重奏曲ですが、「チェコの出身、19世紀の後半、晩年の作品」といった多くの共通点が見受けられます。

ですが、内容としてはとても対照的です。

ドヴォルザークの作品は、「遠く異郷の地で得た感動や、ホームシックによる望郷」を描いた「随筆」といった傾向を持つ作品です。

一方、スメタナの作品は、「順風満帆や艱難辛苦などの悲喜交々を経験した、作曲家人生経験の回顧」を描いた「自叙伝」といった傾向を持つ作品です。

とりわけ後者は、とても内省的な面が強いです。一連の交響詩群とは明らかに異なる「内向的」な印象が強いです。

とりわけ「No.8」の最終楽章は、聴覚障害を煩った作曲家の絶望感を見事に描いています。

明るく活発な、アイデンティティともいえるボヘミアの民俗音楽で彩られた曲調が、一転して悲劇的で悲愴な曲調に移る展開は、作曲家の絶望を強く印象づけています。

弦楽四重奏というジャンルの奥深さを知ることができる、素敵なカップリングのアルバムですね。

音楽家の略歴です。

<略歴> アントニン・ドヴォルザーク
【チェコ】1841-1904
チェコ国民楽派最大の作曲家。国民音楽の創造に腐心していたスメタナから強い影響を受けた。1875年、オーストリア政府奨学金を獲得、その審査員の一人のブラームスの知遇を得て、作品が世に知られるようになり、また作風にもブラームスの影響が強く表われるようになった。しかし、これらを包含して国民主義的傾向はされに深められ、晩年に向けて一連の傑作を生む。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)

<略歴> ベドルジハ・スメタナ
【チェコ】1824-1884
チェコ国民楽派の祖。初期はショパン弾きにピアニストとして知られた。チェコ国民音楽の創造に情熱をかたむけ、国民歌劇の作曲にとりくむとともに、プラハの国民劇場の創設を推進。連作交響詩「わが祖国」をはじめ、室内楽、ピアノ曲の一連の傑作を残す。

スメタナは、聴覚に障害を持った作曲家だったんですね。

1874年には完全に失聴したそうだ。連作交響詩は失聴後に完成されているぞ。悲劇に臆することなく作曲を続けた偉大な作曲家だな。

【追想】異郷での望郷。

故郷を離れた作曲家の横顔です。

「大作曲家 ドヴォルザーク」です。
大作曲家 ドヴォルザーク クルト・ホノルカ[著] / 岡本和子[訳] 音楽之友社

「大作曲家 ドヴォルザーク」(クルト・ホノルカ[著]/岡本和子[訳]/音楽之友社)です。

当ブログ、「ドヴォルザーク ピアノ三重奏曲 第1・2番」でも取り上げさせていただきましたが、「弦楽四重奏曲 第12番 ヘ長調『アメリカ』」についても記載があります。「新世界より」という章で取り上げられています。

「スピルヴィルで書いた最初の作品、『弦楽四重奏曲第十二番 ヘ長調≪アメリカ≫』を早く自分の耳で確かめたくて、うずうずしていたのである。」(142ページ抜粋)とあります。

「気分が良い時期に、あっという間に書かれたこの作品は、彼の室内楽曲の中でもしばしば演奏される曲となった・さすがのドヴォルザークでも、作曲への欲求がよほど強くない限り、これほど短期間で曲を書き上げることはできない。彼は、わずか三日で四つの楽章のスケッチを終え、十四日後には作曲を完成してしまった。」(142ページ抜粋)とあります。

「弦楽四重奏曲 第12番 ヘ長調『アメリカ』」が一気呵成に書き上げられたことがわかるエピソードとしてとても面白いですね。

アメリカという異郷の地で出会った「スピルヴィルの町」のチェコ系住民の歓待がとても嬉しかったのでしょう。

また、様々な畑や森林に囲まれた、自然の豊かな風景がドヴォルザークにとって故郷を思わせる穏やかな環境だったということもありそうです。

ところで「スピルヴィルの町」って何ですか。

アメリカのアイオワ州にある町だな。ドイツのバイエルン地方出身のシュピールマンが造った町だと言われているぞ。ドヴォルザークが訪れた当時は、トウモロコシやジャガイモ畑、森林といった土地だったそうだ。

【雑想】下手の横好き。(第116弾)

クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。

DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。

DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。

下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。

・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)

クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。

・ミュージック(8bit クラシック_01)

長く続く趣味を持ちたいです。

今回から再びドヴォルザーク回に入りました。

音楽の基礎である「四声」が色濃く反映される弦楽四重奏曲は、作曲家にとっても重要なレパートリーだったことが窺い知れる内容のアルバムでしたね。

ドヴォルザークとスメタナのカップリングでしたが、とても対照的な印象を受けました。

前者は「異郷で得た喜び」といった外的な心象、後者は「人生を回顧して得た悲喜劇」といった内的な心象を描いているといった様相を感じ取ることができました。

次回はドヴォルザークの交響曲を紹介する予定です。

では、また。

確かに、対照的な2作品でしたね。

ある意味、狙った企画だったのかもしれないな。