こんにちは。はーねうすです。
今回は、「ドヴォルザーク:交響曲 第7&8番」を紹介します。
ドヴォルザークの3大交響曲と称されるうちの2曲が収められたアルバムになります。
交響曲 第9番「新世界より」に負けず劣らず、ドヴォルザークの豊かな曲想と創造性が魅力的な楽曲です。
演奏は、ニコラウス・アーノンクール氏の指揮、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団です。
ドヴォルザークの交響曲ですね。
ドヴォルザークが交響曲作家としての特色を強く示した作品だな。
目次
【着想】溢れ出すメロディーライン。
「ドヴォルザーク:交響曲 第7&8番」のコンテンツです。
ドヴォルザークが交響曲作家として、世に認められ始める切っ掛けとなる交響曲が収められています。交響曲 第9番ほどメジャーではありませんが、如何にもドヴォルザークらしいメロディーラインが随所に鏤められています。
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | 交響曲 第7番 ニ短調 | 第1楽章:Allegro maestoso | Op.70 |
2 | 交響曲 第7番 ニ短調 | 第2楽章:Poco adagio | Op.70 |
3 | 交響曲 第7番 ニ短調 | 第3楽章:Scherzo. Vivace | Op.70 |
4 | 交響曲 第7番 ニ短調 | 第4楽章:Finale. Allegro | Op.70 |
5 | 交響曲 第8番 ト長調 | 第1楽章:Allegro con brio | Op.88 |
6 | 交響曲 第8番 ト長調 | 第2楽章:Adagio | Op.88 |
7 | 交響曲 第8番 ト長調 | 第3楽章:Allegretto grazioso | Op.88 |
8 | 交響曲 第8番 ト長調 | 第4楽章:Allegro ma non troppo | Op.88 |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.5」:「交響曲 第8番 第1楽章」
歌劇的かつ物語的な展開が華々しく映える楽曲です。
冒頭の感傷的で甘美な旋律で示される主題の登場で、一気に作品の世界に引き込まれます。
管による場面転換の装置のように示される合図のようなモチーフなど、様々な動機が次々と登場するのが楽しいです。
また、独奏で示された主題が管弦楽に昇華されていくなど、主題の様が割りっぷりも魅力的な内容になっています。
「No.7」:「交響曲 第8番 第3楽章」
蠱惑的な旋律が魅力の、典雅なワルツの形式で構成された楽曲です。
センチメンタルな中に妖艶さを醸し出す、魅惑的で典型的なワルツを刻む主要主題と、上品で優雅さが漂う中間主題の対比が素敵です。
結尾では表情を一変させ、陽気に締めくくられます。
<おすすめ度★★>
「No.1」:「交響曲 第7番 第1楽章」
まるで歌劇の一幕を観賞しているかのような錯覚に陥る楽曲です。
多彩なモチーフが次々と登場して物語を紡いでいます。
ソロ・パートの扱いが、交響曲っぽくなくて新鮮です。
「No.6」:「交響曲 第8番 第2楽章」
妖精の棲む森に迷い込んだかのような錯覚にとらわれる、ファンタジックな楽曲です。
主要部で登場する、管楽にモチーフがチャーミングです。
そのモチーフが要所要所で、合いの手のように扱われているのが可愛らしいです。
中間部前に差し込まれる、弦楽のソロと管楽のアンサンブルも素敵です。
「No.4」:「交響曲 第7番 第4楽章」
深刻な佇まいで迫ってくる、劇場型の楽曲です。
雷鳴のように爆音を轟かせる主要主題、明るく弾むようなノリで盛り上げる副次主題の対比が印象的です。
中間部の小康を挟んで劇的に主題が回顧されて、しつこく感じる結尾で締めくくられます。
<おすすめ度★>
「No.2」:「交響曲 第7番 第2楽章」
沈鬱な装いが、次第に晴れ渡るかのように展開するのが魅力の楽曲です。
豪快な展開の後に登場する、管楽によるアンサンブルで歌われる旋律が、牧歌的で素敵です。
「No.3」:「交響曲 第7番 第3楽章」
威勢良く突き進んでは、小休止するかのような構成の楽曲です。
管弦楽による重厚な主要主題と、管楽で歌われる長閑な旋律が魅力の副次主題で構成されています。
「No.8」:「交響曲 第8番 第4楽章」
上質な式典音楽と歓喜の頌歌を混ぜ合わせたかのような楽曲です。
ファンファーレとして登場する主題が骨格となり、動静や強弱など起伏が激しい楽曲に一本筋を通しています。
恐ろしくド派手な管弦楽の合奏で締めくくられます。
経過句がどこにあるのか判別がつかないほど、メロディーラインが充実した作品ばかりです。
また、民族音楽の特徴を楽曲に溶け込ますことに秀でたドヴォルザークですが、これらの交響曲でも発揮されています。
とりわけ第8番では、スラヴィックな印象が色濃くなってると感じました。
如何にも民族音楽、というような特色で満たす訳ではないですね。
ドヴォルザークは民族音楽を借用するのではなく、その特徴を楽曲に織り込ませるのが巧みだったからだろうな。
【観想】稀代のメロディーメーカー。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
ドヴォルザークの魅力のひとつに、キャッチで親しみやすい旋律を挙げることができます。
耳に馴染みやすく、口ずさむことができるのも特徴ですね。
ブラームスが、「ドヴォルザークがゴミ箱に捨てた楽譜に書かれたモチーフで、交響曲を一本創れる」と言った、というエピソードが生まれるぐらいに豊富な曲想の作曲家です。
そんなドヴォルザークですが、余りにも曲想が豊かすぎて制御することに苦労したとのことです。
つまりは、「楽曲における統一性や機能性への落とし込み」に苦心した、ということになります。
動機の機能的な展開を重んじるソナタ形式などとは、相性が悪そうですよね。
それらを乗り越えて成功したのが、交響曲 第7番と言えるでしょう。
主題を見失うぐらい表情の豊か曲想が飛び交っているにも関わらず、調和が保たれています。
歌劇の序曲のような、物語的な展開を見せながら、しっかりと形式を踏んでいます。
感服するばかりですね。
音楽家の略歴です。
<略歴> アントニン・ドヴォルザーク
【チェコ】1841-1904
チェコ国民楽派最大の作曲家。国民音楽の創造に腐心していたスメタナから強い影響を受けた。1875年、オーストリア政府奨学金を獲得、その審査員の一人のブラームスの知遇を得て、作品が世に知られるようになり、また作風にもブラームスの影響が強く表われるようになった。しかし、これらを包含して国民主義的傾向はされに深められ、晩年に向けて一連の傑作を生む。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
豊かな曲想を制御するのに苦労したというのは、作曲家を志す者にとっては羨ましい話ですよね。
ドヴォルザークは、同時代の作曲家から嫉妬されていたというエピソードがあるぞ。
【追想】交響曲作曲家の萌芽。
曲想豊かな作曲家の横顔です。
「大作曲家 ドヴォルザーク」(クルト・ホノルカ[著]/岡本和子[訳]/音楽之友社)です。
当ブログ、「ドヴォルザーク ピアノ三重奏曲 第1・2番」でも取り上げさせていただきましたが、「交響曲 第7番」「交響曲 第8番」についても記載があります。
「交響曲 第7番」は「イギリスでの成功」という章で、取り上げられています。
109ページから112ページにわたって描かれています。
「『交響曲 第7番』の作曲にかり立てたのは、ブラームスの『交響曲 第三番』だった(中略)。ドヴォルザークの交響曲は、それまでのものと比べて≪チェコ的≫な要素は強いものの、表現に客観性を持たせているところなどは、最も≪ブラームス的≫だと言えるが、ヘ長調で書かれたブラームスの澄みきった響きの交響曲とは全く異なる作品になっている。」(110ページ抜粋)
ブラームスの影響下と、そこからの脱却を示す内容ですね。
「交響曲 第8番」は、「巨匠として、教師として」という章で取り上げられています。
「円熟期を迎えてから作曲された交響曲の中で最も自由な形で書かれている。(中略) 新しいテーマが次々と出てきては全く形式にとらわれずに発展していく第一楽章は、まるで生命力あふれる彩り鮮やかな絵物語のようである。(後略)」(122ページ抜粋)
溢れ出す曲想を、自身のスタイルに落とし込むことに成功しているということですね。
他章にも2交響曲に関するエピソードが記載されています。交響曲作曲家として、この2交響曲が如何に重要なポジションを占めているのかが分かります。
「証言」という章も面白いですよね。ドヴォルザークに対する、作曲家や作家が残した評価を掲載しています。
ブラームスが評価が良いよな。「あの男は、我々の仲間の誰よりも発想が豊かである。彼の捨てた素材をかき集めるだけで、主題をつなげていくことができる。」(207ペー抜粋)とあって、嫉妬心を包み隠さず打ち明けているぞ。
【雑想】下手の横好き。(第117弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。
DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。
下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
今回はドヴォルザーク編でした。
交響曲 第9番ほどの知名度はありませんが、ドヴォルザークの魅力に溢れた楽曲に違いはありません。
交響曲 第8番の第3楽章を初めて聴いて、第9番以外の交響曲にも興味を持ちました。
その魅力に取り憑かれるようにして購入したアルバムでした。
次回もドヴォルザーク編です。
では、また。
交響曲 第9番が有名すぎる、というのも問題なのかもしれませんね。
他の交響曲が霞んでしまうぐらいに、インパクトが強いには確かだからな。