こんにちは。はーねうすです。

今回は、「軍隊行進曲/ベスト・オブ・ホロヴィッツ」を紹介します。

20世紀を代表する名ピアニストである、ウラディーミル・ホロヴィッツ氏の演奏を収録したオムニバスアルバムです。

録音が1985年から1989年になりますので、ホロヴィッツ氏の最晩年の収録とも言える内容になっています。

★打ち込みクラシック

DAW(Digital Audio Workstation)で入力したクラシック音楽のDTM(DeskTop Music)作品を紹介するコーナーを巻末に設けています。
今回紹介するアルバムの中から1曲をピックアップしていますので、是非お楽しみください。

ホロヴィッツ氏のピアノ名曲集ですね。

晩年の演奏で衰えは否めないが、巨匠が到達した解釈の極みを感じ取ることができるぞ。

【着想】巨匠のレパートリー。

軍隊行進曲/ベスト・オブ・ホロヴィッツ」のコンテンツです。

「軍隊行進曲/ベスト・オブ・ホロヴィッツ」です。
軍隊行進曲/ベスト・オブ・ホロヴィッツ レーベル[Deutsche Grammophon]

20世紀を代表するピアノのヴィルトゥオーソであるホロヴィッツ氏の演奏が収録されています。イタリア・バロックから近代ロシアまで、幅の広い様式のレパートリーに驚かされます。

No.作曲家曲名作品番号
1J.S.バッハコラール前奏曲『いざ来れ、異教徒の救い主よ』BWV659
2ショパンスケルツォ 第1番 ロ短調Op.20
3シューベルト即興曲 変イ長調D899-4
4シューマンノヴェレッテ ヘ長調Op.21-1
5ラフマニノフ前奏曲 嬰ト短調Op.32-12
6モシュコフスキー練習曲 ヘ長調Op.72-6
7D.スカルラッティソナタ ロ短調K.87 (L.33)
8D.スカルラッティソナタ ホ長調K.135 (L.224)
9リスト即興曲 (夜想曲) 嬰ヘ長調S.191
10リスト忘れられたワルツ 第1番
11スクリャービン練習曲 嬰ニ短調Op.8-12
12シューベルト軍隊行進曲 変ニ長調D733-1
13モーツァルトアダージョ ロ短調K.540
14シューベルト楽興の時 第3番 ヘ短調D780-3
15リストセレナーデS.560-7
16シューマントロイメライ
17モシュコフスキー火花Op.36-6

ちょっとした所感です。

<おすすめ度★★★>

「No.16」:シューマン「トロイメライ」

郷愁感が強く刻み込まれる、ノスタルジックな楽曲です。

多声部的な構造を持った内容で、主題が回帰する際に和声を変えて演出されるのが印象的です。

「No.11」:スクリャービン「練習曲 嬰ニ短調」

熱情的で激性を伴う、昂揚感を煽られる楽曲です。

主題の再現で登場する内声部の和音の連打に、否応なく興奮します。

「No.15」:リスト「セレナーデ」

真正のロマン主義音楽を体現した楽曲です。

甘く憂いを帯びた旋律が、声部を変えて登場します。

歌曲を器楽曲に置き換えたかのような、旋律が主導となった構成になっています。

<おすすめ度★★>

「No.1」:J.S.バッハ「コラール前奏曲『いざ来れ、異教徒の救い主よ』」

厳かな雰囲気の中に、抒情性を忍び込ませた楽曲です。

穏やかな弱音で進行する中に、感極まったかのように強音が登場し、感情に訴えかけてきます。

「No.2」:ショパン「スケルツォ 第1番 ロ短調」

熱情を帯びた、疾駆するようなサウンドが印象的な楽曲です。

目まぐるしく揺れ動く主要主題と、甘美で夢心地になる子守歌のような副次主題との対比が素敵です。

「No.5」:ラフマニノフ「前奏曲 嬰ト短調」

幻想的な音響空間で歌われる、メランコリックな旋律が美しい楽曲です。

装飾音のように奏でられる高音部と、感傷的な線を描く中音部の組み合わせが素敵です。

「No.7」:D.スカルラッティ「ソナタ ロ短調」

物悲しい旋律が印象的な楽曲です。

主と副の声部で多重に奏でられる多旋律の構造が、如何にもバロックらしくて素敵です。

「No.10」:リスト「忘れられたワルツ」

軽やかに、縦横無尽に跳ね回るように進行する、不思議な音響も魅力的な楽曲です。

主調を設定しないような和声が、印象主義や表現主義の予兆のような存在となっています。

「No.12」:シューベルト「軍隊行進曲 変ニ長調」

柔和で優しさの塊のような、明朗な楽曲です。

シンプルでキャッチな旋律、明確な行進曲のリズムの配置が素敵です。

原曲の連弾の要素でもある多重性を損なわない演奏が凄絶です。

「No.13」:モーツァルト「アダージョ ロ短調」

憂いを帯びた、緩やかで愛くるしい楽曲です。

感傷的で憂愁的な主要主題と、チャーミングに歌われる副次主題のバランスが絶品です。

モーツァルトのロココ趣味、といった感じを上品にコーティングした演奏にうっとりします。

<おすすめ度★>

「No.3」:シューベルト「即興曲 変イ長調」

徐々に形を露わにするかのような構成の楽曲です。

流れるような音型のパッセージが繰り返される中で下部に登場する主要主題や、抒情性と熱情性がたっぷり注ぎ込まれた中間主題で構成されています。

「No.4」:シューマン「ノヴェレッテ ヘ長調」

物語性のある展開が特徴の楽曲です。

劇的な主要主題に挟まれる形で、穏やかに歌われる複数の副次主題が登場します。

「No.6」:モシュコフスキー「練習曲 ヘ長調」

高速で無窮動に進行するパッセージが特徴の楽曲です。

「No.8」:D.スカルラッティ「ソナタ ホ長調」

明るく前進感のある爽快な楽曲です。

リズミカルに弾む律動が印象的です。

「No.9」:リスト「即興曲 (夜想曲) 嬰ヘ長調」

夢・幻を見ているかのような、夢心地になる魅惑的な楽曲です。

装飾過多気味の音型が、夜想曲の佇まいになっています。

「No.14」:シューベルト「楽興の時 第3番 ヘ短調」

「楽興の時」というタイトルでまず思い浮かべるぐらいの、有名な楽曲です。

タイトルに形式とリズムの在り方を特徴付けた代表格と言えそうです。

「No.17」:モシュコフスキー「火花」

無窮動に突き進む、明るく弾けた感のある楽曲です。

アルバムの最後に配置した、アンコール・ピースのような計らいに感謝です。



神聖で透明感のある音質から、重厚で迫力感のある音質まで、レパートリーごとに提示される演奏技術は圧巻です。

ホロヴィッツ氏が到達した、ピアノ音楽のひとつの回答をプレゼントされた気持ちになるアルバムです。

「軍隊行進曲/ベスト・オブ・ホロヴィッツ」です。
軍隊行進曲/ベスト・オブ・ホロヴィッツ レーベル[Deutsche Grammophon]

モーツァルトのアダージョを聴くと、なにか込み上げてくるものがあります。

最晩年の録音ということも踏まえると、しみじみと感慨深いものがあるな。

【観想】巨匠のライブ。

魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。

1985年から1989年にかけて演奏された作品を収録したアルバムになりますので、ホロヴィッツ氏にとっては最晩年の演奏を録音したということになります。

とりわけ、「No.13」~「No.15」は1989年の録音で、ホロヴィッツ氏が亡くなる年の作品ということになります。

また、ライブ録音を感じさせる楽曲も収められています。

「No.16」の「トロイメライ」には、演奏後の拍手が含まれています。

「No.17」の「火花」には、アンコールに答えて登場した際の拍手が含まれています。

ホロヴィッツ氏の演奏と観衆の拍手や歓声が合わさることで、ひとつの完成した作品のように感じます。

とりわけ、「No.16」の「トロイメライ」は絶品です。

シューマンのノスタルジーとも相俟って、懐古的な感慨深さで満たされます。

演奏後に起こる拍手を聴くと、しみじみとして切なくなってしまいます。

音楽家の略歴です。

<略歴> ロベルト・アレクサンダー・シューマン
【独】1810-1856
ロマン派音楽の推進者。指を痛めたため、以後作曲および評論によって新しいロマンティックな芸術を開拓。ピアノ音楽に文学的標題性をあたえ、歌曲においては詩との合一をめざしたほか、室内楽曲、交響曲などあらゆる分野の作品を残す。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)

ライブ録音もいいですね。緊張感もあってどきどきします。

スタジオ録音とは違い、観衆との一体感もひとつの醍醐味になっているよな。

【追想】ピアノの文学。

シューマンのファンタジーが満載です。

「シューマン 子供の情景とアベッグ変奏曲」です。
シューマン 子供の情景とアベッグ変奏曲 全音楽譜出版社

「シューマン 子供の情景とアベッグ変奏曲」(全音楽譜出版社)です。

今回紹介したアルバムに収められている「No.16」の「トロイメライ」が掲載されています。

「子供の情景」という13曲で構成される小品集の第7曲になります。

本書では「夢」という和訳でタイトルが記されていますが、現代であるドイツ語の「Träumerei (トロイメライ)」というほうが有名ですし、しっくりくる感じがしますね。

多声的で対位法的に処理された内容が、如何にもシューマンらしいファンタジーとして特徴づけられます。

同型で提示される主旋律に対して、和声進行や副旋律の扱いを変えることで、変化に富んだ色彩の豊かな楽曲になっています。

ひとつの小節の中に情報が詰め込まれ気味な点もシューマンらしさがあって良いですね。

子供が見る夢というよりは、大人が「子供の頃に思い描いた夢」を懐古するというノスタルジックでセンチメンタルな様相になっています。

シューマンの作品は、文学との融合から生まれるファンタジーに魅力を感じました。

たまに、幻想性が行き過ぎて、ピアノの書法からかけ離れた作品もあるようだぞ。そんな無骨っぽいところもシューマンの魅力だろうな。

【雑想】下手の横好き。(第120弾)

クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。

「Studio One」シリーズで打ち込んだクラシック音楽をお披露目するコーナーです。

今回は、<おすすめ度★★★>として紹介したシューマンの「トロイメライ」です。

作曲家:ロベルト・アレクサンダー・シューマン 作曲年:1838

他作品を含め、下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。

・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)

クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。

・ミュージック(8bit クラシック_01)

長く続く趣味を持ちたいです。

今回は変則回でした。

学生の頃、テレビ番組のアーカイブでホロヴィッツ氏の演奏風景を目にして虜になりました。

楽曲は、スクリャービンの「練習曲 嬰ニ短調 作品8の12」でした。

スクリャービンという作曲家を知る切っ掛けでもありましたが、それ以上にホロヴィッツ氏の演奏技術に目を奪われました。

今ではYoutube動画で見ることができます。

次回は改めてのプロコフィエフ編です。

では、また。

ホロヴィッツ氏の演奏ですが、映像で見るとより凄さが伝わりますね。

華があるよな。音楽をライブで味わう重要性が分かる気がするな。