こんにちは。はーねうすです。
今回は、「プロコフィエフ:ピーターと狼/サン=サーンス:動物の謝肉祭」を紹介します。
動物をモチーフとした音楽、という点で共通する2曲のカップリングです。
どちらも台本のあるナレーション付きという特徴があります。
「ピーターと狼」は作曲の時点で台本がありましたが、「動物の謝肉祭」は企画的に後付けされた台本になりますね。
「動物の謝肉祭」では、2台のピアノをアルフォンス・コンタルスキー氏とアロイス・コンタルスキー氏が、チェロのソロをヴォルフガング・ヘルツァー氏が受け持っています。
ナレーションは、ハーマイオニー・ギンゴールド氏です。
演奏は、カール・ベーム氏の指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団です。
★打ち込みクラシック
DAW(Digital Audio Workstation)で入力したクラシック音楽のDTM(DeskTop Music)作品を紹介するコーナーを巻末に設けています。
今回紹介するアルバムの中から2曲をピックアップしていますので、是非お楽しみください。
プロコフィエフとサン=サーンスの組み合わせですね。どちらもユーモアに溢れた作品です。
台本によるナレーション付きという点で、舞台を鑑賞しているような気分になるアルバムだな。
目次
【着想】動物たちのモチーフ。
「プロコフィエフ:ピーターと狼/サン=サーンス:動物の謝肉祭」のコンテンツです。
20世紀を代表するイギリスの舞台女優である、ハーマイオニー・ギンゴールド氏によるナレーションが魅力のアルバムです。迫真の朗唱に魅了されます。
No. | 作曲家 | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1* | プロコフィエフ | ピーターと狼 子供のための音楽物語 | これから皆さんにピーターと狼の物語をお話ししましょう。 | Op.67 |
2* | プロコフィエフ | ピーターと狼 子供のための音楽物語 | むかし、ピーターという名前の男の子がいました。 | Op.67 |
3* | プロコフィエフ | ピーターと狼 子供のための音楽物語 | その時です。ピーターがふとみると、背の高い草むらをかきわけてなにかがこっそりしのび寄ってきました。ネコです! | Op.67 |
4* | プロコフィエフ | ピーターと狼 子供のための音楽物語 | ピーターとおじさんが小屋に入るとすぐに、森の中から何者かが姿を現しました。 | Op.67 |
5* | プロコフィエフ | ピーターと狼 子供のための音楽物語 | ネコと小鳥はどうなったのでしょう。ネコは木の枝に腰をかけています。小鳥も別の木の枝にとまっています。もちろんネコにあまり近づきすぎないように気をつけながら。 | Op.67 |
6* | プロコフィエフ | ピーターと狼 子供のための音楽物語 | ちょうどその時です。森の中から狩人の一団が現われました。狩人たちは狼の足跡を追いかけ、鉄砲を撃ちながら近づいてきます。 | Op.67 |
7* | プロコフィエフ | ピーターと狼 子供のための音楽物語 | ほら、勝利の行進を思い浮かべてごらんなさい! | Op.67 |
8** | サン=サーンス | 動物の謝肉祭 | No.1 導入部と百獣の王ライオンの行進 | ― |
9** | サン=サーンス | 動物の謝肉祭 | No.2 メンドリとオンドリ | ― |
10** | サン=サーンス | 動物の謝肉祭 | No.3 野生の雄ロバ | ― |
11** | サン=サーンス | 動物の謝肉祭 | No.4 カメ | ― |
12** | サン=サーンス | 動物の謝肉祭 | No.5 象 | ― |
13** | サン=サーンス | 動物の謝肉祭 | No.6 カンガルー | ― |
14** | サン=サーンス | 動物の謝肉祭 | No.7 水族館 | ― |
15** | サン=サーンス | 動物の謝肉祭 | No.8 耳の長い登場人物 (家畜のロバ) | ― |
16** | サン=サーンス | 動物の謝肉祭 | No.9 森のカッコウ | ― |
17** | サン=サーンス | 動物の謝肉祭 | No.10 大きな鳥籠 | ― |
18** | サン=サーンス | 動物の謝肉祭 | No.11 ピアニスト | ― |
19** | サン=サーンス | 動物の謝肉祭 | No.12 化石 | ― |
20** | サン=サーンス | 動物の謝肉祭 | No.13 白鳥 | ― |
21** | サン=サーンス | 動物の謝肉祭 | No.14 フィナーレ | ― |
**: 台本 オグデン・ナッシュ
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.14」:サン=サーンス「動物の謝肉祭 No.7 水族館」
幻想的な空間を見事に表現した楽曲です。
ピアノによる装飾的なパッセージの連続、管弦楽が生み出す魅惑的な音響が合わさって、素敵な情景が描写されています。
日本語訳の「水族館」よりは、英語訳の「Aquarium (アクアリウム)」というタイトルのほうが合致しています。
「No.20」:サン=サーンス「動物の謝肉祭 No.13 白鳥」
優雅さの中に忍び込ませた憂いを感じさせる、優しさに包まれた楽曲です。
チェロによる息の長い旋律が殊更に優美です。
旋律を支えるピアノの伴奏は、淡く儚いイメージを一層引き立てています。
「No.15」:サン=サーンス「動物の謝肉祭 No.14 フィナーレ」
楽しさに浮き足立った感情が全面に溢れたかのような楽曲です。
駆け巡るピアノ、弾け飛ぶマリンバ、陽気に歌う管弦楽など、総動員で騒がしく歌い上げる様が、どこかやけっぱちぽくて楽しいです。
<おすすめ度★★>
「No.1」~「No.7」:プロコフィエフ「ピーターと狼 子供のための音楽物語」
主役のピーターや、登場する様々な動物のモチーフが楽しい楽曲です。
登場する人物や動物に割り当てられた楽器による性格描写も面白いです。
「No.1」では、登場するキャラクターを紹介するように音楽劇が進みます。とりわけ、ピーターのテーマが、呑気っぽくていいですね。憶えやすいフレーズも相俟って、物語に一貫性を持たせています。
「No.5」では、ピーターと小鳥と協力して狼を捕まえる様を描いています。
それぞれのモチーフが交叉するかのように登場します。ピーターのテーマがコロコロと移り変わる心理描写のように変奏され行く様子が楽しいです。
物語の山場でもあり、全曲の中でも最もドラマティックな展開になっています。
全曲はコミカルで、ハートフルな内容になっています。
「No.11」:サン=サーンス「動物の謝肉祭 No.4 カメ」
優雅なワルツで構成された楽曲です。
タイトルからイメージするノロノロとした鈍重さは、「優雅さ」という文脈に変換されたユニークな内容になっています。
「No.13」:サン=サーンス「動物の謝肉祭 No.6 カンガルー」
不思議な生態を表現したかのような楽曲です。
跳ねた感じと、つんのめった感じの律動で構成されています。
「No.17」:サン=サーンス「動物の謝肉祭 No.10 大きな鳥籠」
様々なモチーフを軽妙に歌い上げる、静かさと賑やかさが同居した楽曲です。
<おすすめ度★>
「No.8」:サン=サーンス「動物の謝肉祭 No.1 導入部と百獣の王ライオンの行進」
威風堂々とした様を、力強さと軽快さで描いた楽曲です。
獅子の唸りのように奏でられるピアノと弦楽のパッセージがユニークです。
「No.16」:サン=サーンス「動物の謝肉祭 No.9 森のカッコウ」
物寂しく囁くように繰り返される、カッコウのモチーフが印象的な楽曲です。
森特有の神秘性を、ピアノの同型反復で表現しています。
「No.18」:サン=サーンス「動物の謝肉祭 No.11 ピアニスト」
力強いエチュードのような動機と、管弦楽のアタックで構成された楽曲です。
どこか、皮肉と揶揄がふくまれた内容に感じます。
ナレーション付きの音楽は、歌曲や歌劇とは異なった雰囲気が漂っていて面白いですよね。
ナレーションのたびにスポットライトが当てられているような、そんな舞台の上の演出を想像してしまいます。
プロコフィエフの作品は、台本が前提となった音楽といったくくりですよね。
実際、台本を担当したのもプロコフィエフだぞ。
【観想】朗唱のライブ感。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
今回紹介したアルバムの魅力は、「ナレーション付きの音楽」という点が挙げられます。
20世紀のイギリスを代表する舞台女優のハーマイオニー・ギンゴールド氏が担当しています。
演技ではなく、朗唱という「セリフ」だけで魅せるというのが良いですね。
プロコフィエフの「ピーターと狼」は、元より台本付きで制作された音楽なので、「音楽劇」といった雰囲気もあります。
一方サン=サーンスの「動物と謝肉祭」は、後から企画的に制作されたこともあり、「前口上」といった雰囲気があります。
どちらもユニークで、ユーモアに満ちあふれた内容で、ギンゴールド氏の多彩で多芸な朗唱に魅了されます。
映像のない分、舞台上で朗唱する姿を想像するのも楽しいですね。
舞台上でひとり椅子に腰を掛け、ナレーションのたびに立ち上がり、スポットライトを当てられる、といった姿を想像してしまいます。
色々な演者による盤もあるようなので、いつか聴き比べしてみたいですね。
ライナーノーツには、松浦雅之氏の日本語訳がありますので、音楽とは別に物語として読むのも楽しいです。
音楽家の略歴です。
<略歴> セルゲイ・セルゲーエヴィチ・プロコフィエフ
【露】1891-1953
帝政ロシア末期のロシア・モダニズムから、ソ連の社会主義リアリズムの時代にわたる長期の作曲活動によって、20世紀を代表する作曲家の一人。ロシア革命後、アメリカ、西ヨーロッパで活躍したが、1933年祖国に復帰。従来の前衛的なものから、ソ連の現状に合った大衆的方向に修正、明快で新鮮な作風をつくりあげた。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
シャルル・カミーユ・サン=サーンス
【仏】1835-1921
劇場音楽全盛のフランスにあって、ベートーヴェンに傾倒して、古典様式による純器楽曲を作曲。さらにワーグナーの影響を受け、ドイツ音楽に対するフランス音楽の優位を確立するため、R.ピュシーヌとともに1871年国民音楽協会を設立、その活動を通じて近代フランス音楽の基礎を築いた。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
ナレーション付きの音楽も面白いですよね。
同じようなコンセプトの音楽劇としては、メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」があるな。
【追想】ピアノ編曲の鑑。
ピアノ編曲の魅力が詰まっています。
「サン=サーンス 動物の謝肉祭」(全音楽譜出版社)です。
今回紹介したアルバムに収められている「動物の謝肉祭」をピアノ独奏用に編曲された楽譜です。
ピアノ編曲は、後藤丹氏です。
原曲の紹介がとても丁寧です。楽器編成を掲載されているのが嬉しいですね。ご自身の所感を組み込んだ表現スタイルがとても素敵です。
そして「編曲への覚え書き」という編集後記のような文章ですね。
ピアノへアレンジする際に苦心や腐心した点を挙げています。
「単音にオクターヴを加える」「トレモロを分散和音にする」「半音階によるパッセージを少し狭めたりする」など、「オーケストラ的書法をピアノ固有のイディオムに翻訳する」という編曲する際に注力した点を掲載しています。
とりわけ、「白鳥」は有名曲で、色々なヴァイオリンやフルートへの編曲版も有名です。ピアノ独奏用の編曲に際しては、その「編曲版」に近い処置を施したそうです。
重要なのは、原曲の持つイメージを保ちつつ、楽器特有の音域や音色にあった譜面にすることだと、改めて認識させられます。
原曲を聴きながら、ピアノ編曲版のスコアを見ると、アレンジャーの技量の凄さに感服します。
オーケストラ作品を独奏用に編曲するというのも、大変な作業なのですね。
当たり前だが、独奏楽器で「演奏できる」のが前提だからな。如何に「切り捨てるか」という「圧縮する」という作業が重要なポイントでもあるぞ。
【雑想】下手の横好き。(第121弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
「Studio One」シリーズで打ち込んだクラシック音楽をお披露目するコーナーです。
今回は、<おすすめ度★★★>として紹介したサン=サーンスの「水族館」と「白鳥」です。
他作品を含め、下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
今回はプロコフィエフとサン=サーンスでした。
ナレーション付きの音楽ということもあり、興味本位で購入したアルバムでした。
プロコフィエフの「ピーターと狼」は、子供向けの「音楽劇」ということもあり、すんなりと受け入れることができました。
ですが、サン=サーンスの「動物の謝肉祭」については、サン=サーンスの意図とは別個に存在する「おまけ」程度に感じました。
いずれにせよコンセプト・アルバムという点で、ナレーション付き音楽の魅力を十分に楽しめるアルバムであることは間違いありません。
次回はプロコフィエフ編です。
では、また。
企画物という点では、サン=サーンスの「動物の謝肉祭」のほうが貴重な感じがしますね。
元は純器楽曲だからな。加えてサン=サーンスが「白鳥」以外の出版を渋った曰く付きの作品という点も、「貴重」という感覚を強めているのかもしれんぞ。