こんにちは。はーねうすです。
今回は、「プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第1&2番/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」を紹介します。
帝政期、革命期、ソヴィエト期という激動の時代に登場した、極めたモダンな作品群です。
プロコフィエフが作曲したヴァイオリン協奏曲は、全2曲ですので全集という扱いになりますね。
また、無伴奏ヴァイオリン・ソナタも1曲のみになりますので、全集という扱いになります。
演奏は、アラベラ・美歩・シュタインバッハー氏のヴァイオリン、ワシリー・ペトレンコ氏の指揮、ロシア・ナショナル管弦楽団です。
プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲ですね。どちらも独奏者に高度な技術を要求する難曲です。
独奏の技術的な面だけでなく、管弦楽曲とのアンサンブルの面でも合わせるのが困難な楽曲だと言われているぞ。
目次
【着想】管弦楽の伴奏的ポジション。
「プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第1&2番/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」のコンテンツです。
20世紀のロシアに登場した、古典的な形式と現代的な様式を組み合わせた、モダニズム音楽とも評すべき楽曲です。いかにもプロコフィエフらしい音楽思想に載った曲想のオンパレードになっています。
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | Violon Concert No.1 D major | Andantiono | Op.19 |
2 | Violon Concert No.1 D major | Scherzo – Vivacissiomo | Op.19 |
3 | Violon Concert No.1 D major | Moderato – Allegro moderato – Più tranquillo | Op.19 |
4 | Violon Concert No.2 G minor | Allegro moderato | Op.63 |
5 | Violon Concert No.2 G minor | Andante assai – Allegretto – Andante assai | Op.63 |
6 | Violon Concert No.2 G minor | Allegro, ben marcato | Op.63 |
7 | Sonata for Violin Solo in D major | Moderato | Op.115 |
8 | Sonata for Violin Solo in D major | Theme – Andante dolce | Op.115 |
9 | Sonata for Violin Solo in D major | Variation 1 | Op.115 |
10 | Sonata for Violin Solo in D major | Variation 2 – Scherzando | Op.115 |
11 | Sonata for Violin Solo in D major | Variation 3 – Andante | Op.115 |
12 | Sonata for Violin Solo in D major | Variation 4 | Op.115 |
13 | Sonata for Violin Solo in D major | Variation 5 | Op.115 |
14 | Sonata for Violin Solo in D major | Con brio – Allegro precipitato | Op.115 |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.4」~「No.6」:「Violon Concert No.2 G minor」
第1楽章:
感傷性と悲劇性が同居した、バラードのような展開を期待する楽曲です。
センチメンタルな線を描くヴァイオリン・ソロによる主題、管弦楽との掛け合いで提示される愛らしい主題、激しく動揺したかのような動線で構築されたパッセージなど、起伏の大きい曲想で構成されています。
ヴァイオリン・ソロを主役に見立てた、物語に迷い込んだような感覚になります。
第2楽章:
穏やかに紡がれる、極めて緩徐的な楽曲です。
牧歌的で長閑に歌われる主題が魅力です。
管弦楽の伴奏は大変におおらかで、まるで森林や湖畔で得られる心地よさを心理的に描写したかのようです。
第3楽章:
焦燥感で煽られた、鈍色じみたトーンを心理的に思い描く楽曲です。
とても複雑な造りで、軽快で明るいノリで進めるはずのフィナーレを、わざと鈍重な風合いにしたように感じます。
<おすすめ度★★>
「No.1」~「No.3」:「Violon Concert No.1 D major」
第1楽章:
ファンタジー色とファンシー色の濃い楽曲です。
ヴァイオリン・ソロと管楽のデュエットで提示される、緩い主題が印象的です。
終始ヴァイオリン・ソロが主導的なポジションにある構成になっています。
第2楽章:
弾けるような跳躍と、バーバリズムっぽい野蛮な香りが特徴の楽曲です。
多種多様、多彩に変化する律動、時折覗かせる重厚な管弦楽のアクションやアタックで構成されています。
第3楽章:
哀愁のある旋律を奏でるヴァイオリン・ソロと、重苦しくのし掛かる管弦楽の伴奏が組み合わさった楽曲です。
悲哀を歌いヴァイオリン・ソロの旋律が非常に美しいです。
結尾付近で登場する、ヴァイオリン・ソロと管楽のデュエットは、甚だ幻想的で素敵です。
<おすすめ度★>
「No.7」~「No.14」:「Sonata for Violin Solo in D major」
第1楽章:
バロック風の曲想で処理された楽曲です。
その後に続く変奏曲に比して、規模が多き目という心象です。
第2楽章:
主題と5つの変奏で構成された楽曲です。
極めて短く提示される主題は、その後のバリエーションの豊かさに埋もれてしまい、主題のモチーフを忘れてしまうと言うパラドックスじみた感じに陥ります。
第3楽章:
極めてヴァイオリン的に処置されたテクニカルかつメロディックな線を描く楽曲です。
如何にも終曲っぽくて良い感じです。
ヴァイオリン協奏曲は、協奏曲というよりは「管弦楽の伴奏付きヴァイオリン曲」といった様相ですね。
無伴奏ヴァイオリン・ソナタはバロック時代の作品へのオマージュであり、ちょっとしたパロディという感じもする内容ですね。
ヴァイオリン・ソロの活躍が際立っている協奏曲、という印象です。
第1番は元々「小協奏曲」として作曲する予定だったことが関係しているかもしらないな。で、そのスタイルの延長線上に第2番が誕生していると言えそうだぞ。
【観想】アイデアの源泉。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
今回紹介したアルバムに収録されている「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」は独奏で演奏されていますが、複数のソリストが「ユニゾン」で演奏することをコンセプトとして作曲された作品らしいです。
「独奏で演奏しても可」という、プロコフィエフの意向もあります。
作曲に至った経緯が面白いですね。
作曲年である1947年に、モスクワのボリショイ劇場で行われた音楽イベントで、バッハやヘンデルらの無伴奏楽曲を「ユニゾン」で演奏するという催しがあったそうです。
それを聴いたプロコフィエフは、「ユニゾン」で演奏する「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」の着想を得て、一気に書き上げたということです。
作曲の経緯としてはありふれたエピソードですが、着眼点がユニークですよね。
確かに、無伴奏楽曲=独奏曲という決まりはありません。
また、無伴奏楽曲を「ユニゾン」で演奏するのは、「息を合わせる」という点において、伴奏付きの楽曲以上に高度な技術と、訓練ともいえそうなリハーサルを要求する気がします。
機会があれば、演奏会で聴いてみたいですね。
音楽家の略歴です。
<略歴> セルゲイ・セルゲーエヴィチ・プロコフィエフ
【露】1891-1953
帝政ロシア末期のロシア・モダニズムから、ソ連の社会主義リアリズムの時代にわたる長期の作曲活動によって、20世紀を代表する作曲家の一人。ロシア革命後、アメリカ、西ヨーロッパで活躍したが、1933年祖国に復帰。従来の前衛的なものから、ソ連の現状に合った大衆的方向に修正、明快で新鮮な作風をつくりあげた。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
ユニゾンの楽曲ですか。作品としてはあまり存在していないきはします。
そんなことはないぞ。グレゴリアン・チャントなどの宗教曲では、単旋律を斉唱することで成立している楽曲もあるぞ。
【追想】弦楽の名曲集。
ヴァイオリン協奏曲はマストです。
「ヴァイオリン/チェロの名曲名演奏 弦楽器の魅力をたっぷりと」(渡辺和彦[著] / 音楽之友社)です。
バロック時代から現代に至るまでの、弦楽器の名曲を名盤とともに紹介した著書です。
プロコフィエフの作品としては、「ヴァイオリン協奏曲 第1番」、「ヴァイオリン協奏曲 第2番」、「ヴァイオリン・ソナタ 第1番」、「チェロ・ソナタ 第1番」が取り上げられています。
作曲の経緯などを時代背景も踏まえて丁寧に解説されていますので、とても勉強になります。
また、「名盤」と呼ばれるアルバムの紹介があり、作曲家主体ではなく、演奏家主体で音楽を聴く楽しみを見いだす切っ掛けにもなります。
プロコフィエフの「ヴァイオリン協奏曲 第1番」では、演奏テクニックの特異な点についても触れられています。
「特にスケルツォ、ヴィヴァチッシモ(最高に速く)。グリッサンドと直結したフラジオレット、左手のピツィカート、ffによるスル・ポンティチェロ(駒の近くに弓を当てて奇っ怪な金属的音を出す)などの部分が、猛烈に速い走句と複雑なリズムの間に次々と待ち構えている。オーケストラと縦の線を合わせるのだけでも大変だ。テクニシャンのソリストと職人的な手腕をもった抜群にリズム感の良い指揮者とが組まないとバラバラになってします。」(232ページ抜粋)
アルバムを聴いただけでは「難しそうなパッセージだな」と思っていた箇所も、端的に言語化されることで、より一層に楽曲の深みに触れることができますね。
弦楽器のソロとしては、やはりヴァイオリンとチェロが目立ちますよね。
オーケストラでも主旋律を歌わせるパートになる機会が多い楽器だからな。著書では、ヴィオラ・ソナタやヴィオラ協奏曲など作品にも触れているので、ヴァイオリンやチェロ以外で活躍するソロの弦楽器を知る切っ掛けになるぞ。
【雑想】下手の横好き。(第122弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。
DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。
下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
今回はプロコフィエフ編でした。
名曲としての誉れが高いプロコフィエフの「ヴァイオリン協奏曲 第1番」を聴きたいという思いで購入したアルバムです。
加えて、SACD(Super Audio Conpact Disc)という、ハイスペックな記録領域を誇る規格のディスクという点も魅力の一部でした。
残念ながら、SACDを再生できるプレーヤーを所有していませんので、アルバムの真価を堪能できていません。
SACDの良いところは、一般的なCDプレーヤーでも再生できる点ですね。
今後もSACDとして聴く機会に恵まれそうにもありません。
次回は、メリカントを紹介します。
では、また。
SACDですか。一時期ハイスペックな音楽ディスクが多く市場に出回っていましたね。
DVD-Audioなどだな。SACD、DVD-Audioともに専用のプレーヤーが必要かつ高価ということもあって、余程の音楽愛好家でないかぎり手が出せなかったという印象だな。