こんにちは。はーねうすです。

今回は、「メリカント:ピアノ名曲集 – 夏の夜」を紹介します。

19世紀から20世紀初頭にかけて活躍した、フィンランドの作曲家であるメリカントのピアノ曲を収めたアルバムです。

フィンランドでは、大衆的な人気のある作曲家です。

演奏は、北欧のピアノ音楽を国際的に広めたといっても過言ではない館野泉氏です。

打ち込みクラシック

DAW(Digital Audio Workstation)で入力したクラシック音楽のDTM(DeskTop Music)作品を紹介するコーナーを巻末に設けています。
今回紹介するアルバムの中から1曲をピックアップしていますので、是非お楽しみください。

メリカントのピアノ曲集ですね。フィンランドの作曲家のようです。

フィンランドでは、シベリウスと並んで人気のある作曲家だな。

【着想】北欧のセミ・クラシック。

メリカント:ピアノ名曲集 – 夏の夜」のコンテンツです。

「メリカント:ピアノ名曲集 - 夏の夜」です。
メリカント:ピアノ名曲集 – 夏の夜 レーベル[FINLANDIA]

メリカントの音楽は、厳格なクラシック音楽というよりも、準クラシックという趣になります。所謂セミ・クラシック、ライト・クラシックといった地位にあります。居住まいを正して傾聴する、といった重苦しさはなく、純粋に音楽に浸ることができます。

No.曲名作品番号
1牧歌Op.76-1
2アルバムのページOp.3
3スケルツォOp.6-4
4Op.92-1
5ゆるやかなワルツ
6梢の高みにてOp.26
7ロマンスOp.12
8無言歌Op.37-2
9夏の夜の牧歌Op.16-2
10ショパン風のワルツOp.6-5
11即興Op.76-3
12夏の夜のワルツOp.1

ちょっとした所感です。

<おすすめ度★★★>

「No.5」:「ゆるやかなワルツ」

ノスタルジックで愛らしい旋律が魅力的な楽曲です。

少し切なげな線で紡がれる主要主題がとにかく素敵です。

ポピュラリティのあるメロディー・ラインとオーソドックスな形式で構成された内容で、聴き終えたときに、言いようのない幸せな気分になっています。

「No.6」:「梢の高みにて」

風になびく木の葉を想起させる楽曲です。

高音域で間断なく奏でられるアルペジオのパッセージと、低音域で提示されるメロディー・ラインとベース・ラインで構成されています。

多旋律的に聴こえる、とてもユニークな内容になっています。

<おすすめ度★★>

「No.1」:「牧歌」

物思いに耽っているような楽曲です。

郷愁を思わせる長閑な主要主題と、感を極めたかのように昂揚する中間主題の対比が印象的です。

主要主題へ回帰する前に配置された、切なげな小句が素敵です。

「No.9」:「夏の夜の牧歌」

単純な音型の繰り返しが印象的な楽曲です。

普段なら気にもとめないような情景の中に見いだした美、とでもいうような内容です。

飾り気もなく、然り気もない形での「音楽の在り方」を示したような楽曲です。

「No.11」:「即興」

即興的に演奏したというよりかは、脳裏に浮かんだ曲想をゆったりと綴ったという感がある楽曲です。

沈思黙考のように落ち着いた曲調で進行する主要主題と、重厚で劇的な展開を迎える中間主題で構成されています。

終焉を控えたかのような、儚げな雰囲気が漂っています。

「No.12」:「夏の夜のワルツ」

劇場型の展開が楽しい楽曲です。

劇的な導入、軽やかで都会的な様相のワルツなど、楽しげな雰囲気に包まれた内容になっています。

<おすすめ度★>

「No.2」:「アルバムのページ」

様々なテーマで構成された、複合的な楽曲です。

バラード風、陽気なワルツ、激しめのエレジーなど、曲調で思い出を綴っているかのようです。

「No.7」:「ロマンス」

暮れゆく時間、黄昏時に流してほしくなるような楽曲です。

牧歌的な主要主題と、激性を伴う強襲のような中間主題との対比がドラマティックです。

「No.8」:「無言歌」

感傷的な旋律を歌い上げる楽曲です。

起伏の穏やかな、物悲しげで控えめな線で描かれる主要主題と、幾分ドラマティックな展開を迎える中間主題で構成されています。


耳に馴染みやすい、ポピュラー音楽やイージー・リスニングといった毛色が濃い印象です。

ですが、ピアニスティックな面は、純粋にピアノ音楽としてもロマン主義時代の作品として遜色はありません。

「メリカント:ピアノ名曲集 - 夏の夜」です。
メリカント:ピアノ名曲集 – 夏の夜 レーベル[FINLANDIA]

旋律線が優位といった感じで、とても耳当たりが良い感じです。

歌曲を多く作曲でもあるからな。そういった点では、シューベルトに通じるところがあるな。

【観想】北欧のポピュラリティ。

魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。

フィンランドの作曲家と言えば、まず思い当たるのがシベリウスですが、同地で大衆的な人気を博しているのはメリカントとのことです。

今回紹介したアルバムに収められている「No.5」「ゆるやかなワルツ (ワルツ・レント)」は、フィンランドのテレビCMでも使用された楽曲とのことです。(ライナーノーツより/椎名淳之氏[著])

シベリウスの音楽には、音楽そのものから滲み出てくる「北欧の息吹」を感じ取ることができます。フィンランドという地に根ざした自然からくるインスピレーションといった感じです。

一方メリカントの作品は、「そこはかとない」といった感じの「北欧っぽさ」があります。

シベリウスの場合は、音響的に生み出される音楽の空間性・環境性で生み出される「北欧風味」。メリカントの場合は、旋律線で描く無言性の「北欧風味」といったところでしょうか。

言語化するのが難しいですね。

いずれにせよ、メリカントは厳密にクラシック畑の作曲家という訳ではありません。

新しい音楽語法や形式・様式を開拓した作曲家でもありません。

そのような気負いがない分、聴き手は純粋に音楽の流れに身を委ねることができます。

ポピュラー音楽とクラシック音楽のいいとこ取りの、今風でいうところの「イージー・リスニング」といった手法が、メリカントの持ち味ですね。

音楽家の略歴です。

<略歴> オスカル・メリカント
【フィンランド】1868-1924
フィンランドを代表する国民的作曲家。ドイツ・リートやイタリアン・テノールに倣った、多くの歌曲を残す。フィンランド語による最初のオペラを完成させる。
(ブログ管理者による編著)

交響曲のような大規模な作品は残していないようですね。

メリカントの資質として、動機の有機的な発展で構築するソナタ形式などは不向きみたいだったようだな。直感的で直情的なメロディーの創造に長けていたようだぞ。

【追想】北欧のピアノ・スコア。

アルバムと同タイトルが収録されています。

「メリカント ピアノアルバム」です。
メリカント ピアノアルバム 全音楽譜出版社

「メリカント ピアノアルバム」(全音楽譜出版社)です。

今回紹介したアルバムに収録されている楽曲と、全く同じタイトルで構成された楽譜集です。

編著/解説も、同じくピアニストの館野泉氏です。

メリカントについて記された著作などを見かけることはまずないので、とても重宝します。

ピアノ・スコアはとてもシンプルで、右手が旋律、左手が伴奏を受け持つスタイルが目立ちます。如何にも歌曲作曲家らしい、旋律と伴奏の棲み分けが明確な音楽です。

ところが「梢の高みにて」については、様相が他の楽曲とは明らかに異なっています。

右手では装飾的なアルペジオを奏で、左手でベースラインとメロディーラインを描くという構図になっています。

音楽を聴くのだけでなく、譜面も合わせて見ると、その異様さが際立ちます。

もとは合唱曲らしいので、そのピアノ・アレンジといって良いでしょう。

また、譜面を見て初めて「4つのバリエーション」で構成された楽曲だと知りました。

譜面を通して音楽を知るのも、一興ですよね。

確かに、旋律と伴奏のパートが明確に切り離された感じのする譜面ですね。

ロマン主義時代に特徴付けられた「無言歌」といった様式に近しいと考えてよいだろうな。

【雑想】下手の横好き。(第123弾)

クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。

「Studio One」シリーズで打ち込んだクラシック音楽をお披露目するコーナーです。

今回は、<おすすめ度★★★>として紹介したメリカントの「ゆるやかなワルツ (ワルツ・レント)」です。

作曲家:オスカル・メリカント 作曲年:19世紀末頃

他作品を含め、下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。

・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)

クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。

・ミュージック(8bit クラシック_01)

長く続く趣味を持ちたいです。

今回はメリカントでした。

北欧にはなぜか、「孤高」といた「うら寂しくとも気高い」というイメージがあり、憧れを持っていました。

そんな中、北欧の作品を中心に音楽活動している館野泉氏というピアニストの存在をしりました。

で、購入したのが今回紹介したアルバムになります。

クラシック音楽の解釈にありがちな、「主義・主張」「思想・哲学」とは無縁な印象の音楽です。

肩肘を張らず音楽に身を委ねるという、とても幸せな時間を過ごせました。

次回はハンニカイネンです。

では、また。

旋律線が明確なので、とても聴きやすく感じる内容でしたね。

徹頭徹尾が歌曲風、というのがメリカントのスタンスなのかもしれないな。