こんにちは。はーねうすです。

今回は、「エルガー:チェロ協奏曲/エニグマ変奏曲」を紹介します。

クラシック音楽の不毛の地と呼ばれた英国に燦然と輝く作曲家、エルガーの有名曲を2曲のカップリングしています。

また、チェロのジャクリーヌ・デュ・プレ氏と指揮のダニエル・バレンボイム氏という夫婦共演のアルバムでもあります。

チェロ協奏曲の演奏は、チェロがジャクリーヌ・デュ・プレ氏、指揮がダニエル・バレンボイム氏、管弦楽がフィラデルフィア管弦楽団です。

エニグマ変奏曲の変奏は、指揮がダニエル・バレンボイム氏、管弦楽がロンドン・フィルハーモニー管弦楽団です。

打ち込みクラシック

DAW(Digital Audio Workstation)で入力したクラシック音楽のDTM(DeskTop Music)作品を紹介するコーナーを巻末に設けています。
今回紹介するアルバムの中から1曲をピックアップしていますので、是非お楽しみください。

エルガーのチェロ協奏曲とエニグマ変奏曲ですね。

「愛の挨拶」や「威風堂々」で人気の高いエルガーだが、歌劇や交響曲、協奏曲など幅の広い作品群を残しているぞ。

【着想】イギリス音楽界の再生者。

エルガー:チェロ協奏曲/エニグマ変奏曲」のコンテンツです。

「エルガー:チェロ協奏曲/エニグマ変奏曲」です。
エルガー:チェロ協奏曲/エニグマ変奏曲 レーベル[SONY CLASSICAL)

17世紀にイギリスで活躍したヘンリー・パーセル以後、イギリスでは音楽的な発展が不毛だった時代が続いたと言われています。そのようなイギリス音楽界の暗雲を晴らしたのが、エルガーと言われています。

No.曲名(1)曲名(2)作品番号
1チェロ協奏曲 ホ短調I. Adagio – ModeratoOp.85
2チェロ協奏曲 ホ短調II. Lento – Allegro moltoOp.85
3チェロ協奏曲 ホ短調III. AdagioOp.85
4チェロ協奏曲 ホ短調IV. Allegro – Moderato – Allegro ma non troppoOp.85
5エニグマ変奏曲 (独奏主題による変奏曲「謎」)Enigma.Op.36
6エニグマ変奏曲 (独奏主題による変奏曲「謎」)Var. I (C.A.E.).Op.36
7エニグマ変奏曲 (独奏主題による変奏曲「謎」)Var. II (H.D.S.-P.).Op.36
8エニグマ変奏曲 (独奏主題による変奏曲「謎」)Var. III (R.B.T.).Op.36
9エニグマ変奏曲 (独奏主題による変奏曲「謎」)Var. IV (W.M.B.).Op.36
10エニグマ変奏曲 (独奏主題による変奏曲「謎」)Var. V (R.P.A).Op.36
11エニグマ変奏曲 (独奏主題による変奏曲「謎」)Var. VI (Ysobel).Op.36
12エニグマ変奏曲 (独奏主題による変奏曲「謎」)Var. VII (Troyte).Op.36
13エニグマ変奏曲 (独奏主題による変奏曲「謎」)Var. VIII (W.N.).Op.36
14エニグマ変奏曲 (独奏主題による変奏曲「謎」)Var. IX (Nimrod).Op.36
15エニグマ変奏曲 (独奏主題による変奏曲「謎」)Var. X (Dorbella).Op.36
16エニグマ変奏曲 (独奏主題による変奏曲「謎」)Var. XI (G.R.S.).Op.36
17エニグマ変奏曲 (独奏主題による変奏曲「謎」)Var. XII (B.G.N.).Op.36
18エニグマ変奏曲 (独奏主題による変奏曲「謎」)Var. XIII (***).Op.36
19エニグマ変奏曲 (独奏主題による変奏曲「謎」)Var. XIV (E.D.U).Op.36

ちょっとした所感です。

<おすすめ度★★★>

「No.5」~「No.19」:エニグマ変奏曲 (独奏主題による変奏曲「謎」)

主題と変奏の取り扱いや、バランスがとてもユニークな楽曲です。また、管弦楽の書法が素敵です。

Enigma

爽やかな春の到来を歌い上げるような、導入的な楽曲です。

Var. I (C.A.E.).

明暗のコントラストが美しい、ドラマティックでバラエティに富んだ楽曲です。

Var. V (R.P.A).

感傷気味の主題と軽妙気味の主題とが、相対するように配置あれたユニークな楽曲です。

Var. VI (Ysobel).

木管と弦の組み合わせで描かれる、優美な絵画を想起させる楽曲です。

Var. VII (Troyte).

霹靂、雷鳴のごとく唸りを上げる金管と打楽器群の扱いが特徴の楽曲です。

Var. IX (Nimrod).

静かに歌われる、鎮魂歌を惹起させる楽曲です。

清澄な雰囲気の主題と、昂揚感を持って迎えられる管弦楽の合奏が、殊更に美しいです。

Var. X (Dorbella).

物語性のあるバラードのような楽曲です。

バレエなどの付随音楽のような印象が強い内容になっています。

Var. XII (B.G.N.).

エレジーのような、感傷性に包まれた楽曲です。

懐古的で、色あせてしまった過去を悲しむような侘しさがあります。

Var. XIII (***).

長閑で朗らかな感のある楽曲です。

牧歌的に歌われる主題が印象的で、憧憬とも言える内容になっています。

Var. XIV (E.D.U).

集大成感の強い、勇壮で豪壮な楽曲です。

豪胆でファンファーレ的な導入と凱旋的で雄大な行進曲風の主題で構成された、讃歌的で華麗なエンディング・テーマといった内容になっています。

「No.3」:「チェロ協奏曲 第3楽章」

達観の域にあるような、静謐さが支配する眩惑的楽曲です。

独奏チェロが奏でる独白のような、祝詞のような、穏やかな線で描かれる旋律が魅力的です。

ひっそりと静かに、独奏チェロを支え続ける管弦楽の扱いも素敵です。

<おすすめ度★★>

「No.1」:「チェロ協奏曲 第1楽章」

深刻な実情を叩き付けられた心境を綴ったかのような、メランコリックな楽曲です。

独奏チェロによる意味深な導入、悲劇的な心情の吐露のような旋律の主題が印象的です。

独奏チェロが主導的で、ひたすらに悲哀を歌い上げるような内容になっています。

「No.4」:「チェロ協奏曲 第4楽章」

悲劇性熱情で持って表現したこのような楽曲です。

独奏チェロの独壇場とも言える導入、東欧の民俗舞踏の音楽の様に弾む主題、無窮動に進行するパッセージなど、独奏チェロに呼応する管弦楽との組み合わせが印相的です。

他楽章よりも独奏チェロと管弦楽との掛け合いが色濃く感じます。

物悲しげな静寂の中から、熱量を高くして綴じられます。

<おすすめ度★>

「No.2」:「チェロ協奏曲 第2楽章」

幾分エキゾチックな感のある、優美な楽曲です。

独奏チェロの即興演奏のような扱いが、至る所で披露されます。

時折差し込まれる流麗な旋律に惹かれます。

音楽的には、19世紀末や20世紀初頭に台頭した前衛的な活動とは無縁で、ロマン主義の精神が色濃く反映されています。イギリスは別個として、音楽界としては前時代的だったのかも知れません。

ただし、21世紀の今なお多くの楽曲が演奏会で演奏されていることを鑑みると、如何に人気の高い作曲であるのかを知ることができます。

音楽の精神史が、必ずしも一方通行的とは言えない証左ですね。

「エルガー:チェロ協奏曲/エニグマ変奏曲」です。
エルガー:チェロ協奏曲/エニグマ変奏曲 レーベル[SONY CLASSICAL)

確かに、ロマン主義の精神が音楽に色濃く反映されていますね。

国民主義的な活動とも無縁だったため、音楽史的には保守派として受け取られるのかもしれないな。

【観想】夫婦の共演。

魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。

エルガーの「チェロ協奏曲」は、数あるチェロ協奏曲の中でも、屈指の名曲と言えるでしょう。

加えて、チェロを演奏するジャクリーヌ・デュ・プレ氏のトレードマーク的な作曲家エルガーです。

そのエルガーの「チェロ協奏曲」を、ジャクリーヌ・デュ・プレ氏+ダニエル・バレンボイム氏の夫婦の共演で収録された本アルバムは、まさに名盤です。

ジャクリーヌ・デュ・プレ氏が演奏するエルガーの「チェロ協奏曲」がなぜ名盤としての誉れが高いかは、ライナーノーツ「ジャクリーヌ・デュ・プレの思い出の名演」(藁科雅美氏[著])に、詳しく記されています。

何よりも、1998年に制作されたイギリス映画「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」(アナンド・タッカー監督/イギリス)(日本では2000年に公開)の影響も大きいでしょう。

ジャクリーヌ・デュ・プレ役を演じるエミリー・ワトソン氏が、兎に角すごかったという印象が強いです。ジャクリーヌ・デュ・プレ氏の壮絶な人生を見事に演じ切っていました。

その劇中で印象深く描かれていたのが、エルガーの「チェロ協奏曲」です。

エルガーが「チェロ協奏曲」を書いていたということを知った切っ掛けでもありました。

演奏家にフォーカスされた音楽映画なので、劇中に使用されている音楽に興味が湧くというのは当然と言えるでしょうが。

そして、チェリスト「ジャクリーヌ・デュ・プレ」と「エルガーの音楽」の親和性を存分に知ることができる切っ掛けになった映画でもあります。

音楽家の略歴です。

<略歴>エドワード・ウィリアム・エルガー
【英】1857-1934
パーセル以来、200年間のイギリス音楽の不毛の後に出現した大作曲家、オルガニスト。全般的にイギリス人の音楽としての平均化したムードがあり、本国では広く愛好されている。カトリックの教会音楽も含め、あらゆる分野の作品を多数残す。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)

映像作品で使用される音楽の影響力って、想像以上ですよね。

直接的な音楽映画でなくとも、BGMの効果的な使用で人気になるクラシック音楽もあるよな。

【追想】管弦楽のピアノアレンジ。

エルガーの魅力が詰め込まれています。

エルガー ピアノ名曲集 小池孝志 編著 ドレミ楽譜出版社

「エルガー ピアノ名曲集(小池孝志 編著/ドレミ楽譜出版社)です。

エルガーの有名曲を、ピアノ用にアレンジした楽譜です。

今回紹介したアルバムに収められていた楽曲としては、「エニグマ変奏曲」の「主題、第1変奏、第9変奏、第14変奏」がアレンジされています。

そして小池孝志氏によって編まれた「イギリスの音楽史」「作曲家について」「楽曲解説」というページが、とても素晴らしいです。

イギリスとその他のヨーロッパ地域との比較文化的な音楽史の解説がとても良いですね。

ユニークなのが、年表に「日本史時代の区分」があることです。

「室町」「安土桃山」「江戸」といった時代区分でみる作曲家の活動期って面白いですよね。

17世紀に活躍したリュリと19世紀に活躍したショパンとでは様式上に大きな隔たりを感じますが、ともに「江戸時代」に活動したことになります。(単に江戸時代の息が長いだけなんですがね。)

無論、ピアノ・アレンジのスコアとしても上質です。

管弦楽が主体であるエルガーの作品を、ピアノ用に落とし込む手腕に脱帽しまくりです。

楽譜に併載されている「音楽史的な解説」って、お得感がありますよね。

通常の書籍で読む「音楽史」とは異なった視点や切り口があったときは、尚更だな。

【雑想】下手の横好き。(第128弾)

クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。

「Studio One」シリーズで打ち込んだクラシック音楽をお披露目するコーナーです。

今回は、<おすすめ度★★★>として紹介したエルガーの「エニグマ変奏曲 第9変奏」をピアノ独奏用に編曲された版です。

作曲家:エドワード・ウィリアム・エルガー 作曲年:1899
(編曲:ドレミ楽譜出版社)

他作品を含め、下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。

・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)

クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。

・ミュージック(8bit クラシック_01)

長く続く趣味を持ちたいです。

今回はエルガー回でした。

映画「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」を観賞したのを切っ掛けに、購入したアルバムです。

映画の興奮が冷めやらない状態だったので、チェロ協奏曲ばかりに気を取られていました。時が経つにつれ、エニグマ変奏曲にはまっていきました。

次回も、エルガー編です。

映画を切っ掛けに、クラシック音楽に興味を持つパターンは、多そうですね。

作曲家や演奏家を扱った音楽映画では、顕著な傾向かもしれないな。