こんにちは。はーねうすです。
今回は、「エルガー:交響曲全集」を紹介します。
クラシック音楽が不毛であるといわれていたイギリス音楽界に、燦然と輝くように登場したエルガーの管弦楽曲群が収められています。
中でも、行進曲「威風堂々」は有名ですね。全5曲が網羅されています。こちらも全集ですね。
なので、全集マニアとしては、垂涎の内容となっています。
CDは2枚組のボリュームです。
CD1枚目の演奏は、指揮がアンドレ・プレヴィン氏、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団です。
CD2枚目の演奏は、指揮がアンドレ・プレヴィン氏、ロンドン交響楽団です。
★打ち込みクラシック
DAW(Digital Audio Workstation)で入力したクラシック音楽のDTM(DeskTop Music)作品を紹介するコーナーを巻末に設けています。
今回紹介するアルバムの中から1曲をピックアップしていますので、是非お楽しみください。
エルガーの交響曲全集ですね。
交響曲以外でも、行進曲や序曲など、エルガーの著名な管弦楽曲が収録されているな。
目次
【着想】イギリス音楽界の管弦楽曲。
「エルガー:交響曲全集」のコンテンツです。
17世紀に活躍したパーセル以来、約200年の間音楽の発展が不毛であったといわれるイギリスにおいて、満を持して登場したのがエルガーです。しかも管弦楽曲の最高峰と呼ばれる交響曲をも完成させる辣腕を振るいます。すごいです。
CD1
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | 交響曲 第1番 変イ長調 | 1. Andante. Nobilmente e semplice – Allegro | Op.55 |
2 | 交響曲 第1番 変イ長調 | 2. Allegro molto | Op.55 |
3 | 交響曲 第1番 変イ長調 | 3. Adagio | Op.55 |
4 | 交響曲 第1番 変イ長調 | 4. Lento – Allegro | Op.55 |
5 | 行進曲『威風堂々』第1番 ニ長調 | ― | Op.39 |
6 | 行進曲『威風堂々』第2番 イ短調 | ― | Op.39 |
7 | 行進曲『威風堂々』第3番 ハ短調 | ― | Op.39 |
8 | 行進曲『威風堂々』第4番 ト長調 | ― | Op.39 |
9 | 行進曲『威風堂々』第5番 ハ長調 | ― | Op.39 |
CD2
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | 交響曲 第2番 変ホ長調 | 1. Allegro vivace e nobilmente | Op.63 |
2 | 交響曲 第2番 変ホ長調 | 2. Larghetto | Op.63 |
3 | 交響曲 第2番 変ホ長調 | 3. Rondo (Presto) | Op.63 |
4 | 交響曲 第2番 変ホ長調 | 4. Moderato e maestoso | Op.63 |
5 | 序曲『コケイン』(首都ロンドンにて) | ― | Op.40 |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「CD1_No.5」:「威風堂々 第1番」
豪胆で勇壮、流麗で優美な内容で、エルガーという作曲家を特徴付ける代表的な楽曲です。
爆発的な管弦楽のエネルギーで進行する主要主題、管楽で歌われる厳かで勇ましく、かつ美しく麗しい副次主題で構成されています。
主要主題の再現、結尾で豪奢に飾られる副次主題など、感動的な構成に魅了されます。
「CD1_No.8」:「威風堂々 第4番」
宮中で奏でられる、高貴で優雅な晩餐会のバックグラウンドミュージックのような楽曲です。
ファンファーレのような主要主題、前進的で美麗な副次主題などで構成されています。
第1番との類似性が強く認められる作品でもあります。
<おすすめ度★★>
「CD2_No.1」~「CD2_No.4」:「交響曲 第2番」
第1楽章:
波瀾万丈な物語を綴るように構成された楽曲です。
壮大で威勢のある主題、甘美で流麗な主題、昏惑の雰囲気を醸す主題など、多様な音型が魅力的です。
また、急転直下型の展開も特徴です。
第2楽章:
厳粛な場で奏でられる、神格的な存在への感謝を綴ったかのような楽曲です。
極めて美しい線を描く弦楽、彩りを加える壮麗な管楽など、一貫した内容で構築されています。
荘厳な雰囲気に包まれた、宗教曲のような内容です。
第3楽章:
動機と律動で聴かせる楽曲です。
晴天と曇天を繰り返すような、明と暗を惹起させるモチーフで構成されています。
第4楽章:
盛大に歓喜を体現したかのような楽曲です。
勇壮で豪快な主要主題や、深く長い混沌めいた展開の後に訪れる、解放感で満たされた副次主題などで構成されています。
静かに幕を引くような演出など、エンドロール風のフィナーレといった感があります。
「CD2_No.5」:「序曲『コケイン』」
物語的な起伏と展開が詰め込まれた楽曲です。
華麗で祝祭的なムードに満ち溢れた冒頭や、穏やかで平和な日常を描いたかのような主題など、和やかな雰囲気で始まります。
一転、突如到来する変化を描いたかのように、破砕的な爆発音で場面の転換を描く演出もあります。
その外にも、戯けた旋律の楽句や、異様に勇ましいファンファーレなど、多様なモチーフやフレーズで構成された楽しい内容になっています。
「CD1_No.6」:「威風堂々 第2番」
エネルギッシュな威勢が魅力の楽曲です。
熱量の高い管楽の扱いが特徴で、昂揚感に溢れています。
<おすすめ度★>
「CD1_No.1」~「CD1_No.4」:「交響曲 第1番」
第1楽章:
おおらかで雄大な佇まいの楽曲です。
静かな序奏、勇壮な行進曲風の主題、急展開的に幕を開ける本論のような主題、空間的な広がりを感じさせる主題など、数多の動機で形作られる主題で構成された複合的な内容が特徴です。
第2楽章:
急速に突き進む、勇ましい楽曲です。
弦の無窮動な動きの上に載る管楽の破砕音で構成された主題、管楽で歌われる流麗な主題など、物語的な展開が楽しい内容になっています。
第3楽章:
粛々とした厳格な儀式を描いたような楽曲です。
レクイエム的な息の長いフレーズが印象的な主題、優美で天上の音楽を想わせる主題で構成されています。
第4楽章:
幻想性から現実性への転化を描いたかのような楽曲です。
不穏なムードと幻想的な雰囲気で紡がれる主題、急転し性急なスピードで加速する主題、間の抜けたかのような主題など、色とりどりの様相で構成されています。
「CD1_No.7」:「威風堂々 第3番」
性急で繁忙な雰囲気があり、責め立てられている感がある楽曲です。
威勢良く迫ってくるような主要主題、束の間の安寧のような中間主題との対比が特徴です。
「CD1_No.9」:「威風堂々 第5番」
歓喜に満ちた楽曲です。
力強さと柔和さが混ざり合った内容になっています。
交響曲ですが、管弦楽の扱いが交響曲的というよりも交響詩的ですね。その当たりはドヴォルザークに近いように想います。
19世紀後期から20世紀初期に台頭した、国民主義、印象主義や表現主義などとはまるで無縁で、徹底したロマン主義的な作風で彩られている点が特徴付けられる音楽群ですね。
奇を衒うような音楽に傾かなかったことが、イギリス音楽界での成功の一因であったように想わせますね。
確かに、表現主義のような前衛的な作品とは無縁な作曲家といった感じです。
長く音楽の発展が見られなかったイギリス音楽界なので、前衛的な作品を発表していても、受け入れられなかっただろうな。
【観想】アニメーションの凄味。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
エルガーの「威風堂々」は、数ある管弦楽の中でもとりわけ人気の高い楽曲と言えるでしょう。
そんな人気曲を元に、大胆にアニメーションとして映画化したのがディズニーによる「ファンタジア2000」(ディズニー©/1999/アメリカ)です。
とりわけ、ベートーヴェンの「交響曲 第5番『運命』」、ショスタコーヴィチの「ピアノ協奏曲 第2番」、レスピーギの「交響詩『ローマの松』」など、絶対音楽的な位置づけの楽曲のイメージから、どのような映像が生まれるのかが醍醐味なアニメーション映画です。
エルガーの「威風堂々」も同じ系譜ですね。
そのイメージから生まれたのが、旧約聖書の創世記にある「ノアの方舟」のアニメーションです。
しかも、ドナルド・ダックが預言者ノアの指示に従い、つがいの動物を誘導する内容になっています。
そして、如何にもディズニー映画っぽい、どたばたコメディー感が満載の造りになっています。
「威風堂々」という音楽が、異様にマッチしていて驚嘆します。ディズニーのアニメ・スタッフのイマジネーションやインスピレーションの在り方に脱帽です。
いつかまた、クラシック音楽とアニメーションの融合を図った映画を制作してほしいですね。
音楽家の略歴です。
<略歴>エドワード・ウィリアム・エルガー
【英】1857-1934
パーセル以来、200年間のイギリス音楽の不毛の後に出現した大作曲家、オルガニスト。全般的にイギリス人の音楽としての平均化したムードがあり、本国では広く愛好されている。カトリックの教会音楽も含め、あらゆる分野の作品を多数残す。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
旧作のファンタジアも含め、ディズニーの着眼点ってユニークですよね。
映画の劇伴とは、まるで逆の発想だものな。音楽の持つ絵画的なイマジネーションを具現化するという荒技だものな。
【追想】管弦楽のピアノアレンジ。
エルガーの魅力が詰め込まれています。
「エルガー ピアノ名曲集」(小池孝志 編著/ドレミ楽譜出版社)です。
エルガーの有名曲を、ピアノ用にアレンジした楽譜です。
今回紹介したアルバムに収められていた楽曲としては、「交響曲 第2番 第2楽章」「威風堂々 第1番」「威風堂々 第4番」「序曲『コケイン』」がアレンジされています。
また、小池孝志氏によって編まれた「イギリスの音楽史」「作曲家について」「楽曲解説」というページが、とても素晴らしいです。
各曲のオリジナルについて、譜例を挙げて解説しています。
主要なモチーフが、どのように発展しているのかなど、とても勉強になります。
また、「威風堂々」の解説では「第2番」のエルガーの自筆譜の画像が添付されていて、感激します。
加えて、楽曲の制作背景やエピソードなども盛り込まれていて、上質なエッセイを読んだ気分になります。
無論、ピアノ・アレンジのスコアとしても上質です。
管弦楽が主体であるエルガーの作品を、ピアノ用に落とし込む手腕に脱帽しまくりです。
解説にある細かなエピソードが良いですね。「威風堂々」の原題に、シェイクスピアの「オセロ」からの引用であることを説明しているのが素敵です。
研究家としての造詣の深さもさることながら、文面に表われる詩的な雰囲気も良いよな。
【雑想】下手の横好き。(第129弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
「Studio One」シリーズで打ち込んだクラシック音楽をお披露目するコーナーです。
今回は、<おすすめ度★★★>として紹介したエルガーの「威風堂々 第1番」をピアノ独奏用に編曲された版です。
他作品を含め、下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
今回も引き続きエルガー編でした。
エルガーの交響曲と行進曲がすべて収められたアルバムなので、全集マニアとしては外せない一品でした。
また、行進曲「威風堂々」の「第1番」に魅了され、その他の管弦楽曲に興味を持ったことが切っ掛けで、購入したアルバムでもあります。
映画「ファンタジア2000」の例に漏れず、エルガーの管弦楽曲には、標題性を伴わない分、聴き手のイマジネーションを拡大化する威力を持っている気がします。
次回は、コルンゴルドのヴァイオリン協奏曲を紹介する予定です。
映画を切っ掛けに、クラシック音楽に興味を持つパターンは、多そうですね。
作曲家や演奏家を扱った音楽映画では、顕著な傾向かもしれないな。