こんにちは。はーねうすです。

今回は、「コルンゴルド・ゴルトマルク:ヴァイオリン協奏曲」を紹介します。

様式としては、ロマン主義に属するヴァイオリン協奏曲のカップリングです。

コルンゴルドのヴァイオリン協奏曲は、映画音楽に活路を見出し、その転用をヴァイオリン協奏曲に施すことで成功しています。

ゴルトマルクのヴァイオリン協奏強は、同時代・同ジャンルの陰に埋もれてしまっている感じが否めませんね。

演奏は、ヴァイオリンがヴェラ・ツー氏、指揮がユー・ロン氏、ラズモフスキー交響楽団です。

原題は、「KORNGOLD Violin Concerto / GOLDMARK Violin Concerto No.1」です。

打ち込みクラシック

DAW(Digital Audio Workstation)で入力したクラシック音楽のDTM(DeskTop Music)作品を紹介するコーナーを巻末に設けています。
今回紹介するアルバムの中から1曲をピックアップしていますので、是非お楽しみください。

どちらもロマン主義の趣が強い協奏曲ですね。

旋律線の美しさに聴き惚れる楽曲だな。

【着想】様式美の虜。

コルンゴルド・ゴルトマルク:ヴァイオリン協奏曲」のコンテンツです。

「コルンゴルド・ゴルトマルク:ヴァイオリン協奏曲」です。
コルンゴルド・ゴルトマルク:ヴァイオリン協奏曲 レーベル[NAXOS]

ロマン主義時代の様式美が全面に現われたヴァイオリン協奏曲、といった趣向にある2つの楽曲です。魅惑的な旋律線の動きに魅了されます。

No.作曲家曲名(1)曲名(2)作品番号
1KORNGOLDViolin Concerto in D major1. Moderato mobileOp.35
2KORNGOLDViolin Concerto in D major2. Romanze: AndanteOp.35
3KORNGOLDViolin Concerto in D major3. Finale: Allegro assai vivaceOp.35
4GOLDMARKViolin Concerto No.1 in A minor1. Allegro moderatoOp.28
5GOLDMARKViolin Concerto No.1 in A minor2. Air: AndanteOp.28
6GOLDMARKViolin Concerto No.1 in A minor3. Moderato – AllegrettoOp.28

ちょっとした所感です。

<おすすめ度★★★>

「No.1」:「KORNGOLD Violin Concerto in D major 1st movement」

美しいモチーフの数々が、移ろいゆくように展開される甘美な楽曲です。

ヴァイオリン・ソロで提示される郷愁感のある甘い主要主題、切なさが滲み出たかのような副次主題など、魅惑的な旋律で溢れかえっています。

ヴァイオリン・ソロが牽引し、管弦楽が呼応するような存在に徹しています。

後半の再現部では、主題を回想するように管弦楽の合奏と、ヴァイオリン・ソロとの掛け合いがあり、とても素敵です。

ヴァイオリン・ソロの技巧的なパッセージから結尾に突入する構成も魅力的です。

「No.3」:「KORNGOLD Violin Concerto in D major 3rd movement」

快調といった心境を音楽で表現したかのような、軽快で昂揚感のある楽曲です。

軽やかなリズムが刻まれる軽妙な主要主題、ヴァイオリン・ソロで提示される魅惑的な旋律が魅力の副次主題が特徴です。

モチーフが変装するように様変わりする展開が楽しい内容です。

ご機嫌な調子で結尾を迎えるのも面白いですね。

<おすすめ度★★>

「No.2」:「KORNGOLD Violin Concerto in D major 2nd movement」

懐古的で感傷的な雰囲気に包まれた楽曲です。

ヴァイオリン・ソロで提示される、酷くセンチメンタルな旋律を描く主要主題が印象的です。

中間部では、後悔の念に苛まれたかのように、メランコリックな旋律が支配的になります。

後半はヴァイオリン・ソロが主体で、管弦楽が伴奏に徹し、幻惑的な曲調が続きます。

「No.4」:「GOLDMARK Violin Concerto No.1 in A major 1st movement」

古典主義の形式に、ロマン主義の様式を掛け合わせたという、初期ロマン主義の典型のような楽曲です。

厳めしく重々しい管弦楽により第1主題が提示され、ヴァイオリン・ソロが受け継ぎます。

ヴァイオリン・ソロが主導するセンチメンタルな第2主題も魅力的です。

変化に富む展開部などもあり、魅惑的な旋律と音響で構築された内容となっています。

「No.5」:「GOLDMARK Violin Concerto No.1 in A major 2nd movement」

厳格な佇まいで進行する、典礼音楽の様な楽曲です。

まるでレクイエムのように静かに始まる導入、ヴァイオリン・ソロで奏でられる哀歌が素敵です。

管弦楽はヴァイオリン・ソロを伴奏という形で支える役回りに徹しています。

上質な教会音楽を堪能した感覚になります。

<おすすめ度★>

「No.6」:「GOLDMARK Violin Concerto No.1 in A major 3rd movement」

民俗舞曲風の律動感に溢れた音楽と、典礼的で祝賀的な音楽など、多様な側面を持つ楽曲です。

ジプシー的でボヘミアン的な雰囲気で展開される主要な部位、どっしりとした重量感のある雰囲気で進行する副次的な部位など、多様です。

ヴァイオリンがまるでフィドルのように扱われ、数々のパッセージが刻まれるのも魅力です。


コルンゴルドのヴァイオリン協奏曲は、映画音楽のテーマを転用していることもあり、キャッチなフレーズが印象的な仕上がりに感嘆します。

一方ゴルトマルクのヴァイオリン協奏曲は、「古典主義を踏襲したロマン主義」といった当世の様相が強い内容ですね。

「コルンゴルド・ゴルトマルク:ヴァイオリン協奏曲」です。
コルンゴルド・ゴルトマルク:ヴァイオリン協奏曲 レーベル[NAXOS]

ロマン主義という様式上の区分にも、差を感じる2曲ですよね。

制作年代が明らかに違う、というのもあるな。コルンゴルドの場合は、「前衛時代に華開いた後期ロマン主義」といった表現が適しているぞ。

【観想】再構成・再構築の美学。

魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。

コルンゴルドの「ヴァイオリン協奏曲」は、当人が作曲した映画音楽(主にハリウッド)のテーマやモチーフを転用して再構成したという、一風変わった協奏曲です。

以下の映画タイトルからテーマが採用されています。

・砂漠の朝 (1938-39)
・革命児ファレス (1938-39)
・風雲児アドヴァース (1938-39)
・放浪の王子 (1937)

「ハリウッド協奏曲」というように揶揄される場合もありますが、映画音楽に芸術性を見出し、その純音楽化を意図した内容であることは間違いありません。

何よりも、形式が明確で、構成に一貫性があります。

「つぎはぎ」の音楽といった感じ全くありません。

また、ヴァイオリン・ソロを技巧的なパッセージやカデンツァに昇華する、見事な協奏曲に仕上がっています。

映画自体を知らなくても、「華麗で優美なヴァイオリン協奏曲」という「ロマン主義時代の純音楽」といった印象を持つと思える内容です。

テーマに与えられたモチーフやフレーズの美しさに気を取られがちですが、それらに「形式的な有機性を与え、一貫性のあるプログラムに再構成する」という見事な手腕も見逃せません。

また、映像があっての映画音楽を、純音楽に再構築する技量にも脱帽です。

まさに本歌取りの醍醐味といっても良い、「再構成・再構築の美学」を楽しめる楽曲ですね。

音楽家の略歴です。

<略歴>エーリッヒ・ヴォルフガング・コルンゴルド
【墺→米】1897-1957
R.シュトラウスの影響を受けたモダンな様式の作風で10代から認められ、モーツァルトの再来などと騒がれた。1934年ハリウッドに移って映画音楽に従事。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)

正直、映画の存在をしりませんでした。

古い映画だからな。それにしても、映画音楽を「協奏曲」として再構築する発想にも驚かされるよな。

【追想】多様なフレーズの宝庫。

混合拍子に魅了されます。

「コルンゴルド ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35」です。
コルンゴルド ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35 全音楽譜出版社

「コルンゴルド ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35(全音楽譜出版社)です。

石田一志氏による、丁寧な解説に魅了されます。

とりわけ、「作曲家について」と題された作曲家に関する解説は、単に作曲家の生涯を追った内容ではなく、「コルンゴルドの作曲家としての姿勢」にスポットを当てた内容になっていますので、より鮮明にコルンゴルドという作曲家の立ち位置を理解できます。

また、譜例付きの楽曲解説は、アウトラインが明確に提示されるのでとても助かります。

さて、スコアです。

聴いているだけでは意識が行かなかったのですが、驚くほどに拍子が切り替わっています。

そこかしこに拍子が登場しています。

4/4、3/4、2/4、9/8、3/8など、目まぐるしいです。とても興奮します。

混合拍子の扱いは、20世紀の初頭に登場した特徴なのかもしれません。

ですが、どちらかと言えば、「コルンゴルドが生み出す旋律線が持つ独特のゆらぎ」が純粋な起因とも考えられます。

多様なフレーズは、「律動上の一定感」を外すことで誕生していることを理解できます。

視覚化されることで改めて知る喜びを味わえる楽譜ですね。

混合拍子、良いですね。

楽譜で見ると、尚更に興奮するだろう。

【雑想】下手の横好き。(第130弾)

クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。

「Studio One」シリーズで打ち込んだクラシック音楽をお披露目するコーナーです。

今回は、<おすすめ度★★★>として紹介したコルンゴルドの「ヴァイオリン協奏曲 第1楽章」の抜粋で、管弦楽パートをピアノ用にアレンジした版です。

作曲家:エーリッヒ・ヴォルフガング・コルンゴルド 作曲年:1945
(管弦楽パート・ピアノ編曲:HARNEUS)

他作品を含め、下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。

・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)

クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。

・ミュージック(8bit クラシック_01)

長く続く趣味を持ちたいです。

今回はコルンゴルドとゴルトマルクでした。

コルンゴルドのヴァイオリン協奏曲が目当てで購入したアルバムです。

とりわけ、コルンゴルドの音楽に触れてみたい、という欲が先行していました。

薄ぼんやりと「ハリウッド映画の音楽を作曲した作曲家が作ったクラシック音楽」という「誤った認識」を持っていたのですが、正される内容で感激しました。

芸術に貴賤なし。

こんな音楽に、もっと触れたいですね。

「触れ込み」などを誤って憶えてしまうことって、多々ありますよね。

誇大広告めいたキャッチコピーには惑わされないようにしたいよな。