こんにちは。はーねうすです。
今回は、「ホルスト:組曲≪惑星≫」を紹介します。
20世紀初頭におけるイギリスのクラシック音楽を代表する作曲家、ホルストの作品を収めたアルバムです。
管弦楽曲に加え、オルガンや女声合唱も加わる野心的な楽曲になっていますね。
演奏は、ヘルベルト・フォン・カラヤン氏の指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団です。
★打ち込みクラシック
DAW(Digital Audio Workstation)で入力したクラシック音楽のDTM(DeskTop Music)作品を紹介するコーナーを巻末に設けています。
今回紹介するアルバムの中から1曲をピックアップしていますので、是非お楽しみください。
ホルストの『惑星』ですね。とてもメジャーな作品ですね。
ホルストの名声を不動のものにした作品であり、イギリスにおけるクラシック音楽を代表する作品でもあるな。
目次
【着想】管弦楽のハルモニア。
「ホルスト:組曲≪惑星≫」のコンテンツです。
後期ロマン主義的な曲調に加え、表現主義的な曲想の影響を感じさせる楽曲です。20世紀初頭における、複雑な音楽思想に加え、作曲家の神秘主義的な思想の影響を強く感じる内容になっています。
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | 組曲≪惑星≫ | 火星 – 戦争をもたらすもの | Op.32 |
2 | 組曲≪惑星≫ | 金星 – 平和をもたらすもの | Op.32 |
3 | 組曲≪惑星≫ | 水星 – 翼のある使者 | Op.32 |
4 | 組曲≪惑星≫ | 木星 – 快楽をもたらすもの | Op.32 |
5 | 組曲≪惑星≫ | 土星 – 老年をもたらすもの | Op.32 |
6 | 組曲≪惑星≫ | 天王星 – 魔術師 | Op.32 |
7* | 組曲≪惑星≫ | 海王星 – 神秘をもたらすもの | Op.32 |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.2」:「組曲≪惑星≫ 金星 – 平和をもたらすもの」
穏やかで幻惑的な楽曲です。
管楽で奏でられる柔和で愛らしい主題、弦楽で応える魅惑的な主題が特徴です。
ヴァイオリン・ソロで差し込まれる主題の回想的な扱いなど、楽器編成の割り当てがとても素敵です。
「No.4」:「組曲≪惑星≫ 木星 – 快楽をもたらすもの」
スペクタクルな印象に加え、どこか望郷的で、懐古的な雰囲気を感じる楽曲です。
威勢良く迫り来るような冒頭と焦燥感を煽る忙しない主要主題、ノスタルジックで切ない心象の副次主題で構成されています。
全般的に郷愁の念が色濃く表われた内容になっています。
<おすすめ度★★>
「No.6」:「組曲≪惑星≫ 天王星 – 魔術師」
ドラマティックで、物語的な展開が楽しい楽曲です。
多様なモチーフが登場し、まるで会話劇のように展開します。一般的な絵本を読んでいるかのような充足感があります。
管・弦・打の楽器群の役割が明確で、管弦楽曲の醍醐味が詰め込まれた内容になっています。
「No.7」:「組曲≪惑星≫ 海王星 – 神秘をもたらすもの」
印象主義的な雰囲気に包まれた、幻想的な楽曲です。
厳かで単調に進行します。その上で、管・弦・打の楽器群の装飾的な扱いで微量に変化を与えているのが素敵です。
終末に向かうにつれ、表現主義的な雰囲気が醸し出されます。酷く微細な戦慄の心象を残すように締めくくられます。
<おすすめ度★>
「No.1」:「組曲≪惑星≫ 火星 – 戦争をもたらすもの」
重々しく苛烈な楽曲です。
這い寄るかのように重く進行する冒頭、叩き込まれるようなリズム、力強い合奏の上で繰り広げられる破砕的な旋律群が特徴です。
「No.3」:「組曲≪惑星≫ 水星 – 翼のある使者」
軽妙で幾分コミカルな楽曲です。
静かに奏でられる可愛らしい管楽による主題と、呼応するように弦楽が徐々に勢いを増します。
釣られるように音量が増していく様がユニークです。
「No.5」:「組曲≪惑星≫ 土星 – 老年をもたらすもの」
どことなく倦怠感を感じさせる楽曲です。
平板で静かに進行する主題、中盤当たりで転換し、限られた力を振り絞るように唸ります。
そして消沈するかのように綴じられます。
大規模な管弦楽に加え、オルガンや女声合唱も起用する、とても贅沢な楽曲群でしたね。
各曲の印象は、天文学的な惑星のイメージというよりも、占星術的な神秘性があります。
曲想は、惑星に付されたギリシア・ローマ神話の神々の物語がヒントになるのかもしれませんね。
とても規模の大きな管弦楽で、迫力がありますね。
近代音楽に特徴の、巨大化する管弦楽に倣った編成だな。
【観想】天文と浪漫のハルモニア。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
ホルストは、サンスクリットに興味を持ち、インドの叙事詩「マハーバーラタ」を題材にオペラ「サーヴィトリ」を作曲するなど、かなりの神秘主義的な文学・哲学マニアでした。
そんな神秘主義思想の持ち主であるホルストが、占星術に興味を持ち、作曲したのが「惑星」だそうです。
ライナーノーツ(浅里公三氏[著])によると、「惑星のもつそれぞれの特質が音楽的な示唆を与えてくれる」とあり、「占星術的な意味に暗示を受けているが、標題音楽ではなく、また神話の神々とも関係はなく、この曲について何か手がかりが必要ならば、各曲の副題で充分でしょう」とホルスト自身が「惑星」について評したとあります。
各曲に付された惑星とその名称の元になったギリシア・ローマ神話の神々の物語と、楽曲の意味内容に関係性はないということですね。
あくまで、曲想を感じ取るヒントとしての、イメージを言語化しているといったところでしょう。
それでも、やはりギリシア・ローマ神話の神々の物語と結びつけてしまいますよね。天文に浪漫を求めるのは、さがです。
折角なので、「組曲≪惑星≫」惑星名とギリシア・ローマ神話の神々、その英名を一覧にまとめます。
惑星名:ギリシア神話・ローマ神話・英名相関表
No. | 惑星 | ギリシア神話 | ローマ神話 | 英名 |
1 | 火星 | アレス | マルス | マーズ(Mars) |
2 | 金星 | アフロディーテ | ウェヌス | ヴィーナス(Venus) |
3 | 水星 | ヘルメス | メルクリウス | マーキュリー(Mercury) |
4 | 木星 | ゼウス | ユピテル | ジュピター(Jupiter) |
5 | 土星 | クロノス | サトゥルヌス | サターン(Saturn) |
6 | 天王星 | ウラノス | ― | ユーラニアス(Uranus) |
7 | 海王星 | ポセイドン | ネプトゥヌス | ネプチューン(Neptune) |
文献としては、「ギリシア・ローマ神話」(マイケル・マーロン[著]/甲斐明子・大津哲子[訳]/創元社)がとても整理されていて、勉強になります。語り口にもユーモアがあって、神話の持つ面白さを引き立てています。
音楽家の略歴です。
<略歴>グスターヴ・セオドア・ホルスト
【英】1874-1934
20世紀初頭のイギリス音楽復興の時代における、エルガーと並ぶ作曲家。作風は後期ロマン派の様式に留まっているが、イギリスの民族音楽を用い、また東洋的題材による作品によってイギリスで広く愛好される。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
音楽を楽しむ際には、副題があるとイメージが掴みやすいですよね。
場合によるよな。販促目的で楽譜出版社などが付ける場合もあるので、一概に「良し」とはならないかもしれんな。
【追想】ピアノのハルモニア。
シンプルに見えるアレンジに脱帽です。
「ホルスト 組曲≪惑星≫ピアノ・ソロ版」(全音楽譜出版社)です。
中島克磨氏による、ピアノ・アレンジと解説で構成されています。
「人と作品」と題された、ホルストの生涯と作品を短く纏めた解説が良いですね。
ホルストという作曲家に抱くイメージを補ってくれます。
また、「惑星」以外の作品についても言及しているので、聴いてみた欲求に駆られます。
「組曲『惑星』作品32について」と題された、原曲に纏わるエピソードとピアノ・ソロ版へのアレンジにおける心掛けが記されていて、感激します。
譜面ですが、原曲の持つ複雑な印象に反して、とってもシンプルに感じます。
これがピアノ・ソロへの編曲の面白さなのでしょうね。
聴いた印象と実際のスコアを見た印象に、ギャップがあることは多々あります。
原曲を忠実に再現したピアノ・ソロの編曲では、それらが如実に反映されるのだと感激しました。
シンプルな譜面ですか。ピアノ版にアレンジする際の肝なのかもしれませんね。
管弦楽をそのまま置き換えることは、土台無理があるからな。ピアノ用として、楽曲の持つ「本質」を突き詰めると、シンプルなスコアになるのかもしれないな。
【雑想】下手の横好き。(第131弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
「Studio One」シリーズで打ち込んだクラシック音楽をお披露目するコーナーです。
今回は、<おすすめ度★★★>として紹介したホルストの「組曲≪惑星≫ 木星 – 快楽をもたらすもの」をピアノ用にアレンジした版です。
他作品を含め、下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
今回はホルストでした。
ホルストの作品については「組曲『惑星』」しか知りませんでした。
アルバム購入当時は、「カラヤン氏の指揮+ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」という理由で購入した記憶があります。
いつか、その外の作品にも触れたいですね。
次回は変則回です。
ホルストが、サンスクリット文学に夢中になっていた頃の楽曲も聴いてみたいですね。
「ラーマーヤナ」や「マハーバーラタ」を題材にしたオペラや、「リグ・ヴェーダ」を元にした合唱曲などもあるようだぞ。