こんばんは。はーねうすです。
今回は、「シャブリエ:ピアノ作品全集」を紹介します。
19世紀後半に活躍した、近代のフランス音楽の先駆的な存在であるシャブリエのピアノ作品がすべて収められたアルバムです。
全集マニアにとっては、垂涎のアルバムです。
何よりも、4手用(連弾)と2台のピアノ用の楽曲も収められているのが、嬉しいですね。
因みに、CDは2枚組です。
ピアノ演奏は、ピエール・バルビゼ氏(ピアノ・ソロ作品 / 4手・2台作品)とジャン・ユボー氏(4手・2台作品)です。
★打ち込みクラシック
DAW(Digital Audio Workstation)で入力したクラシック音楽のDTM(DeskTop Music)作品を紹介するコーナーを巻末に設けています。
今回紹介するアルバムの中から1曲をピックアップしていますので、是非お楽しみください。
シャブリエのピアノ作品ですね。フランスのエスプリですね。
管弦楽曲の「狂詩曲『スペイン』」で知られる作曲家だな。楽曲に滲んでいる小粋という感がいかにもフランスの音楽家という感じがするな。
目次
【着想】フランスのサロン音楽。
「シャブリエ:ピアノ作品全集」のコンテンツです。
シャブリエのピアノ作品は、1分にも満たない規模の小さい楽曲から、10分を超える規模の大きい楽曲まで、幅広くあります。
中でも、小規模作品はサロンで映える音楽と言えます。当時の芸術家が集うサロンで、シャブリエが演奏する姿が目に浮かびます。
CD1
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | 絵画風の小品集 | 第1曲:風景 | ― |
2 | 絵画風の小品集 | 第2曲:ゆううつ | ― |
3 | 絵画風の小品集 | 第3曲:つむじ風 | ― |
4 | 絵画風の小品集 | 第4曲:木陰で | ― |
5 | 絵画風の小品集 | 第5曲:ムーア風舞曲 | ― |
6 | 絵画風の小品集 | 第6曲:牧歌 | ― |
7 | 絵画風の小品集 | 第7曲:村の踊り | ― |
8 | 絵画風の小品集 | 第8曲:即興曲 | ― |
9 | 絵画風の小品集 | 第9曲:はなやかなメヌエット | ― |
10 | 絵画風の小品集 | 第10曲:スケルツォ=ヴァルス | ― |
11 | 気まぐれなブーレ | ― | ― |
12 | 5つの遺作(ピアノのための5つの小品) | バラビル | ― |
13 | 5つの遺作(ピアノのための5つの小品) | アルバムの一葉 | ― |
14 | 5つの遺作(ピアノのための5つの小品) | オーバード | ― |
15 | 5つの遺作(ピアノのための5つの小品) | 奇想曲 | ― |
16 | 5つの遺作(ピアノのための5つの小品) | 田園風のロンド | ― |
17 | シーポイたちの踊り | ― | ― |
18 | 即興曲 | ― | ― |
19 | ハバネラ | ― | ― |
CD2
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | 楽しい行進(4手のための) | ― | ― |
2 | おどけた行列(4手のための) | ― | ― |
3 | ミュンヘンの想い出(4手のための) ~ ワーグナー:≪トリスタンとイゾルデ≫によるクァドリール | パンタロン | ― |
4 | ミュンヘンの想い出(4手のための) ~ ワーグナー:≪トリスタンとイゾルデ≫によるクァドリール | 夏 | ― |
5 | ミュンヘンの想い出(4手のための) ~ ワーグナー:≪トリスタンとイゾルデ≫によるクァドリール | めんどり | ― |
6 | ミュンヘンの想い出(4手のための) ~ ワーグナー:≪トリスタンとイゾルデ≫によるクァドリール | パストゥレル | ― |
7 | ミュンヘンの想い出(4手のための) ~ ワーグナー:≪トリスタンとイゾルデ≫によるクァドリール | ギャロップ | ― |
8 | 3つのロマンティックなワルツ(2台ピアノのための) | 第1番 ニ長調 | ― |
9 | 3つのロマンティックなワルツ(2台ピアノのための) | 第2番 ホ長調 | ― |
10 | 3つのロマンティックなワルツ(2台ピアノのための) | 第3番 ヘ長調 | ― |
11 | バレエの歌 | ― | ― |
12 | ブリュノーの想い出 | ― | ― |
13 | 小さなワルツ | ― | ― |
14 | ワルツの組曲 | ― | ― |
15 | 奇想曲(モーリス・ル・ブーシェによる補筆版、1914年) | ― | ― |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「CD1_No.7」:「絵画風の小品集 第7曲 村の踊り」
バロック的な様式の書法で進行する、チェンバロ音楽のような楽曲です。
古風な舞曲を想起させる主要主題と、優美なワルツを象ったような副次主題との組み合わせが秀逸です。
とても洗練された音楽といえます。
「CD1_No.5」:「絵画風の小品集 第5曲 ムーア風舞曲」
即興的に進行する、多様な動機で表現された楽曲です。
民俗舞曲風のモチーフやリズムが、多種多様に姿形を変化させて登場するのが楽しい仕掛けになっています。
「CD1_No.15」:「5つの遺作(ピアノのための5つの小品) 奇想曲」
即興的で幻想性の色が濃い楽曲です。
思わせぶりの導入、センチメンタルな主題の扱いが絶妙です。
「CD2_No.2」:「おどけた行列(4手のための)」
諧謔的で、シニカルな雰囲気が一味効いた、都会的な楽曲です。
急速に展開する主要主題と、心弾ませるような楽しげな副次主題の配置が良いです。
連弾の楽しさが、一層に強く伝わってきます。
<おすすめ度★★>
「CD1_No.3」:「絵画風の小品集 第3曲 つむじ風」
無窮動に疾駆する、軽快な楽曲です。
エチュード的な書法がユニークに感じます。
「CD1_No.6」:「絵画風の小品集 第6曲 牧歌」
単調な律動の上に乗った、優美な旋律が特徴の楽曲です。
民謡風に単純化された主題と、一種の主題の変奏ともいえる抑制の効いた展開が特徴です。
「CD1_No.9」:「絵画風の小品集 第9曲 はなやかなメヌエット」
熱情的な舞曲を惹起させる楽曲です。
熱情的で熱量のある主要主題と、軽やかで華麗な中間主題の対比が素敵です。
「CD1_No.11」:「気まぐれなブーレ」
スペイン舞曲のような、異国情緒の雰囲気が漂う楽曲です。
同音連打の装飾的な扱いが特徴の主要主題と、優美で若干感傷的な副次主題の配置が素敵です。
「CD1_No.13」:「5つの遺作(ピアノのための5つの小品) アルバムの一葉」
懐古的で、メランコリックな音響空間が特徴の楽曲です。
物思いに耽るような、侘しく儚げで、感傷的な主題が美しいです。
「CD1_No.16」:「5つの遺作(ピアノのための5つの小品) 田園風のロンド」
素朴な音色に包まれた、柔和な楽曲です。
民俗舞曲風の動機、祭りを描いた陽気な動機、穏やかな日常を表わした動機など、多様です。
「CD2_No.8」:「3つのロマンティックなワルツ(2台ピアノのための) 第1番 ニ長調」
流麗で奇妙な音響が特徴の楽曲です。
明るくポップに処理された主題が素敵です。
「CD2_No.10」:「3つのロマンティックなワルツ(2台ピアノのための) 第3番 ヘ長調」
夢想的で、ファンシーな雰囲気が濃い楽曲です。
装飾的な処理が効果的に効いた主題が特徴です。
「CD2_No.14」:「ワルツの組曲」
オペラの序曲を彷彿とさせる、規模と構成が特徴の楽曲です。
主題の輪郭が明瞭で、発展の度合いが明快です。
<おすすめ度★>
「CD2_No.13」:「小さなワルツ」
気儘なエスプリといった、軽妙洒脱な楽曲です。
「CD2_No.15」:「奇想曲(モーリス・ル・ブーシェによる補筆版、1914年)」
ドラマティックで、センチメンタリズムで満たされた楽曲です。
規模が大きく、作家の集大成となるよていだったことを想わせる濃密な内容になっています。
「CD1_No.4」:「絵画風の小品集 第4曲 木陰で」
物語的な展開が楽しい内容になっています。
小さな喜びを表出したような、可愛らしい楽曲です。
「CD1_No.19」:「ハバネラ」
スペイン舞曲を題材に描いた、バラードのような楽曲です。
「CD2_No.12」:「ブリュノーの想い出」
オペラの序曲を想わせる、多様な動機がオムニバス的に詰まった感のある、意欲的な楽曲です。
シャブリエの音楽には、ドビュッシーが構築した印象主義のような革新的な作品はありません。
ですが、フランクやフォーレといった同時代の作曲家と同じく、伝統的な形式や流行の様式とは一線を画す、近代的な芸術家の姿勢を感じ取れる作品が多いと感じますね。
サロンのピアニスト、ですね。色々な芸術家と交流があったようです。
詩人のヴェルレーヌや画家のマネが有名だな。とりわけマネが描いたシャブリエの肖像画が知られているぞ。
【観想】傑出のアマチュア。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
幼少期から音楽に親しみ、音楽家を目指していたシャブリエですが、父親の意向もあり法律家の道を歩むことになります。
1856年にバカロレアを取得したシャブリエは、その後法律学校に進学し、1861年には内務省で勤務するようになります。
ですが、音楽への情熱は消えません。
ピアノやヴァイオリンの演奏方法、作曲の技法の学習を職務の傍らで続けます。
スコアの分析にも注力していたそうですね。
そして、ミュンヘンで聴いたワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」を契機として、専門的な音楽家への道にシフトします。つまり、退職します。
職業的な作曲家として歩みだす訳ですが、形式的で大規模な作品はありません。
ピアノ曲で映えるのは、小品集のような小規模の作品群です。
居住まいを正し、聴き入るといった「堅苦しさ」はありません。
このような作品や経歴もあり、シャブリエは傑出したアマチュアといえるでしょう。
音楽家の略歴です。
<略歴>アレクシ=エマニュエル・シャブリエ
【仏】1841-1894
1861~1880、内務省の官吏を務め、作曲家としてはアマチュアだった。しかしデュパルク、ダンディ、フォーレと交わり、ワーグナーに傾倒、フランス近代音楽の先駆をなす器楽的傾向の作品を残す。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
ところで、バカロレアって何ですか。
フランスでいう「高校卒業証明書」で、「大学入学資格」といったという位置づけのものになるな。現在では「国際バカロレア」のように、海外の大学に留学する際に設定されているものもあるので、海外で進学することを考えている場合は、耳にしたことがある名称かもしれないな。
【追想】ピアノのエスプリ。
民俗舞曲風のピアノが並んでいます。
「ONTOMO ピアノピース・ファイル6 ルーマニア民族舞曲」(音楽之友社)です。
シャブリエの「村の踊り」が、大取として控えています。
「解説」が丁寧で素敵です。
「村の踊り」を含む「10の絵画的小品集」が、シャブリエの退官後に描かれた作品であることを知れます。
また、ピアニストであるコルトーが「作曲者の故郷オーヴェルニュの香りを持った、力強い音楽性を示すひとつのよい例」(5ページより抜粋)と、評価したというエピソードも知ることができます。
譜面ですが、バロック時代のチェンバロ音楽を想わせる内容のように感じます。
勿論、和音やペダリングなどはピアノ音楽特有のものですが、様式として「バロック風」を感じさせます。
実際の音楽を耳にしても、「バロック的」に感じますね。
ブログ管理者が「バロック音楽びいき」なのが原因かも知れませんね。
オーヴェルニュってどこですか。
フランスの中南部に位置する地域圏だな。フランスで言う地域圏とはいくつかの県で纏められた行政区画だな。フランスで有名な地域圏に「ブルゴーニュ地域圏」があるぞ。
【雑想】下手の横好き。(第133弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
「Studio One」シリーズで打ち込んだクラシック音楽をお披露目するコーナーです。
今回は、<おすすめ度★★★>として紹介したシャブリエの「絵画風の小品集 第7曲 村の踊り」です。
他作品を含め、下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
今回はシャブリエでした。
シャブリエについては、「ONTOMO ピアノピース・ファイル6」に掲載があって、初めて知りました。
そこから興味を持ち、ピアノ作品全集のCDアルバムに辿り着きました。
小粋で小洒落た音楽が聴きたいという欲求を満たす、いい作品集に出会えました。
次回からは、一定期間趣向を変えた回を予定しています。
シャブリエの音楽は、小粋という表現がぴったりですね。
印象主義のような、フランス発祥の音楽的な革命はないものの、いかにもフランスといった小洒落た感じがするよな。