こんにちは。はーねうすです。
今回は、ショパンの「バラード/スケルツォ」を紹介します。アルバムのパッケージとして、バラードとスケルツォのカップリングは結構メジャーですね。相性が良い感じがします。
ショパンは生涯で、バラードについては全4曲を作曲しています。また、ソナタなどの楽章を除いた、独立したスケルツォでは全4曲を作曲しています。なので、このアルバムはショパンのバラードとスケルツォの全集と位置づけて良いでしょう。
ピアノ演奏は、ウラディミール・アシュケナージ氏です。
バラードとスケルツォ、ともに4曲でバランスがいいですね。
曲想や曲調も類似性があるので、違和感なく納められているな。
目次
【着想】物語と諧謔。
「ショパン バラード/スケルツォ」のコンテンツです。
劇的な物語性を壮大に描いたバラードと、陰的な諧謔性を激情で描いたスケルツォのバランスが良いですね。外向きと内向き、といったところでしょうか。曲想、曲調という面で如実に相違があって面白いです。
全楽曲の演奏時間も近しいので、通して聴き比べるのも一興です。
No. | 曲名(1) | 曲名(2) | 作品番号 |
1 | バラード | 第1番 ト短調 | Op.23 |
2 | バラード | 第2番 ヘ長調 | Op.38 |
3 | バラード | 第3番 変イ長調 | Op.47 |
4 | バラード | 第4番 ヘ短調 | Op.52 |
5 | スケルツォ | 第1番 ロ短調 | Op.20 |
6 | スケルツォ | 第2番 変ロ短調 | Op.31 |
7 | スケルツォ | 第3番 嬰ハ短調 | Op.39 |
8 | スケルツォ | 第4番 ホ長調 | Op.54 |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.1」:「バラード 第1番」
ショパンのバラードと言えばコレ、となるのではないでしょうか。ソナタ形式ということもあり、全体的にまとまった印象があります。
序奏から感じ取られるドラマの予兆。淡々とした律動の上に乗せられる主題と、ドラスティックな変化。華麗で抒情的な主題への転化。バラードってこういうものなのだ、と思わせられます。
<おすすめ度★★>
「No.6」:「スケルツォ 第2番」
冒頭に見られる激情の吐き出しのような音型。華麗で目まぐるしく動き回るパッセージ。幾分内向的に受け取られる旋律も合わさって、どこか情緒不安定な印象をもつ、とてもバラエティに富んだ作品です。
<おすすめ度★>
「No.4」:「バラード 第4番」
ショパンのバラードの集大成といってよいでしょう。詩的で抒情と激情に満ちた曲想でありながら、どこか達観した哲学的な様相をも纏っています。
バラードについては、その名の通り物語を音楽として表現していますので、青天の霹靂を持たせた構成や構想が輪郭としてあります。
一方、スケルツォは諧謔(ユーモア)というよりも、幾許か鬱屈した情念のはけ口といった印象を受けますね。
ところで、スケルツォって何ですか。
諧謔曲とも呼ばれるな。冗談や気まぐれといった曲想で、多楽章形式に組み込まれていた楽曲だよ。ショパンによって独立した楽曲に昇華されたな。
【観想】詩情と情緒。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
4曲のバラードについては、ライナーノーツ(福本健一氏著)によると、「ポーランドの詩人ミツキエヴィチの詩から霊感を受けて作曲されたものと伝えられているが、その根拠も確実ではないようである」とあり、「詩から受けた主観的な情緒を、抽象的に表現したものといえる。」とあります。また、「ショパン バラードとアンプロンプチュ」(上代万里江氏[解説] 全音楽譜出版社)には、「詩が創作の動機となっただけのことであり、あくまでもこれらの詩を読んでの印象あるいは情緒を表したものである。」と綴っています。要は、詩そのものを表出した標題音楽ではなく、作曲家の想念を象った絶対音楽に属するということでしょう。
いずれにせよ、バラードという枠組みの中で作曲された作品はいずれも、劇的で壮大です。
「No.2」の「バラード 第2番」は叙情的で穏やかな流れが、唐突に威圧的な雰囲気に変化するのが特徴です。
「No.3」の「バラード 第3番」も同じく、流麗で可愛らしい曲想から一転して、不安を予兆させる転調が魅力です。
また「No.4」の「バラード 第4番」では、小さな想念が徐々に膨らみ、より規模の大きな観念へ昇華するような哲学的とも言える詩情に魅力があります。中間部以降の抒情と激情のもつれ具合と、無窮動のコーダは、バラードの真骨頂とも言えるでしょう。
4曲のスケルツォは、「No.5」~「No.7」が同じような構造です。目まぐるしく動き回る音型には、やりどころのない感情の吐露といった印象を受けます。突然それらが晴れ渡るかのように現れる開放的な旋律も、全体的にみたら情緒の不安定さを感じさせる造りに感じられます。
「No.8」の「スケルツォ 第4番」に至っては、スケルツォというよりもバラード寄りですね。
詩情も情緒も、同じ作曲家からの発露であることを考えれば、表現の幅の広さに驚かされます。
音楽家の略歴です。
<略歴> フレデリック・フランソワ・ショパン 【ポーランド→仏】1810-1849 ワルシャワ音楽院でJ.エルスネルに学び、ピアニスト、作曲家として成功し、1830年ウィーンに演奏旅行。その直後ワルシャワに独立運動が起こったため、帰国せず、パリに出、以後もっぱらフランスを中心に活躍。ロマン派音楽におけるサロン風ピアノ作品を新しい境地に開拓して<ピアノの詩人>と呼ばれる。 (「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
バラードですが、あくまでも「標題音楽」ではないことが強調されていますね。
標題音楽には懐疑的だったようだぞ。一般的に知られている「革命」(練習曲)などの副題は、当時の楽譜出版社の意向なのだそうだ。
【追想】音符のバックグラウンド。
音符の目まぐるしい活動に目眩です。
「ショパン バラードとアンプロンプチュ」と「ショパン スケルツォとファンタジー」(ともに上代万里江[解説] 全音楽譜出版社)です。
「ショパン バラードとアンプロンプチュ」では、バラードを作曲する動機付けとなったアダム・ミッケヴィッツ(1789-1855)の詩の内容を、4曲のバラードにそれぞれ付しています。その上で、各主題の音型となる動機やその変化を解説されているので、大変理解の助けとなります。
また、タイトルも記載されており、第1番が「コンラード・ヴァーレンロッド」、第2番が「ヴィリス湖」、第3番が「水の精」、第4番が「ブードリスの三人の兄弟」だそうです。知的関心を満たしてもらえます。
さて、スケルツォです。スケルツォは諧謔という意味で、簡単に表現すると「冗談」や「気まぐれ」「ユーモア」といった具合になります。その点について「ショパン スケルツォとファンタジー」では、次のようにシューマンの表現を引用しています。「<冗談>でさえこれほど陰鬱な装いをするとすれば、真面目なときは一体どんな服を着たらよいのだろうか」といったようです。機知に富んだコメントに感銘を受けます。
やはりインスピレーション元の詩を解説してもらえると助かりますね。
作品を理解する上で、欠かせない要素であるのは間違いないな。
【雑想】下手の横好き。(第28弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。
DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。
下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
引き続き、ショパン編でした。
やはり「バラード 第1番」のドラマティックな惹き付けられますね。
とくに感傷的な第1主題とは対照的な、第2主題の甘美で熱情的な音響は、聴者の耳朶に快を与えます。
もう随分と昔(20世紀末辺り)ですが、フランスのピアニストであるパスカル・ドヴァイヨン氏が演奏する姿を映像で見て、とても感銘を受けたのを記憶しています。
では、また。
ショパンのバラードとスケルツォのカップリング。何とも贅沢なアルバムですね。
全部が名曲だからな。こんな作品集は滅多にないぞ。