今回は、ラロとショパンの「ピアノ三重奏曲」を紹介します。

ラロ、ショパンともにあまり見かけないラインナップですね。両者ともに室内楽といったイメージが希薄なためかもしれません。ピアノ三重奏曲としては、この1曲ずつなので、ラロ/ショパンの全集として扱ってよさそうです。

演奏は、新プラハ・トリオです。

室内楽曲ですね。ショパンの室内楽は珍しい気がします。

ピアノ三重奏曲は、音楽院生時代の作品だけあって、かなりレアだな。

【着想】円熟と未熟。

「ラロ/ショパン ピアノ三重奏曲」のコンテンツです。

「ラロ/ショパン ピアノ三重奏曲」です。
ラロ/ショパン ピアノ三重奏曲 レーベル[SUPRAPHON]

ラロの場合、作曲家が57歳頃に書かれた円熟期の作品です。それに反して、ショパンの場合は、ワルシャワ音楽院で学んでいた10代のまだ未熟といってよい時期の作品になります。この対比が面白いですね。

No.作曲家曲名(1)曲名(2)作品番号
1ラロピアノ三重奏曲 イ短調第1楽章:Allegro appassionatoOp26-3
2ラロピアノ三重奏曲 イ短調第2楽章:PrestoOp26-3
3ラロピアノ三重奏曲 イ短調第3楽章:Trés lentOp26-3
4ラロピアノ三重奏曲 イ短調第4楽章:Allegro moltoOp26-3
5ショパンピアノ三重奏曲 ト短調第1楽章:Allegro con fuocoOp.8
6ショパンピアノ三重奏曲 ト短調第2楽章:Scherzo. Con moto, ma non troppoOp.8
7ショパンピアノ三重奏曲 ト短調第3楽章:Adagio sostenutoOp.8
8ショパンピアノ三重奏曲 ト短調第4楽章:AllegrettoOp.8
新プラハ・トリオ:アルノシュト・ストジージェク(ピアノ)、イジー・クリカ(ヴァイオリン)、ヤン・ツヴォラーネク(チェロ)

ちょっとした所感です。

<おすすめ度★★★>

「No.2」:ラロ「ピアノ三重奏曲 第2楽章」

とてもエネルギッシュで、ラロらしさを感じさせられます。
ラロ自身も気に入っていたようで、管弦楽用に編曲された版もあります。

「No.3」:ラロ「ピアノ三重奏曲 第3楽章」

息の長いフレーズが印象的で、他の三楽章とは異なった趣で情趣に溢れています。

全楽章を通じて、情熱と優雅のコントラストが際立っていますね。それらが各楽器の掛け合いで表現されています。

ラロの代表作「スペイン交響曲」とは一味違った楽想を堪能できます。

<おすすめ度★★>

「No.7」:ショパン「ピアノ三重奏曲 第3楽章」

ヴァイオリンによる息の長い主題の特徴です。他の三楽章に比べると未来のショパンを予感させる曲想と曲調が見られますね。

「No.6」:ショパン「ピアノ三重奏曲 第2楽章」

全楽章は、学生時代の作品とあって、古典主義の手法に則った印象が強いですね。「No.6」の「第2楽章」はショパン特有の尖りはなく、ベートーヴェンの中期の室内楽を想起させます。

<おすすめ度★>

「No.5」:ショパン「ピアノ三重奏曲 第1楽章」

ショパンとしては珍しく第1主題がちゃんと再現部に登場しています。他のソナタ形式の作品では悉く省略していますので、まだ形式への忠実さを残している点で面白いですね。

「ラロ/ショパン ピアノ三重奏曲」です。
ラロ/ショパン ピアノ三重奏曲 レーベル[SUPRAPHON]

ショパンの未来を予感、ですか。曲調に表われているのですね。

音楽院生時代の、絶賛研鑽中の作品だからな。個性は、ときおり見え隠れするのだよ。

【観想】セッションの魅力。

魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。

当ブログの「ラフマニノフ 悲しみの三重奏曲 第1番&第2番」でも記載させていただきましたが、室内の魅力はなんといっても各楽器の掛け合いや調和、時には不調和にあります。

今回のアルバムでは、「No.1」が良い例ですね。ヴァイオリンとチェロの対話が徐々に熱を帯びていく様子が素敵です。

ラロの場合、どうしても「スペイン交響曲」のような協奏曲や管弦楽曲の作曲家というイメージが強いです。しかしライナーノーツ(大木正純氏著)によるとラロは、「音楽院ではまずヴァイオリンとチェロから勉強を始め」、「30歳代のころには、アルマンゴー=ジャッカール弦楽四重奏団のヴィオラ奏者として活躍」とのことで、学習面でも実地面でも、室内楽の研鑽はできあがっていたと言っても良さそうです。何よりも掛け合いが魅力の室内楽を作曲するに当たって、実際に楽団に属し、セッションを経験していたことは重要と言えるでしょう。

音楽家の略歴です。

<略歴> エドゥアール・ラロ
【仏】1823-1892
スペイン系。パリ音楽院で学び、初めはヴァイオリニスト、ヴィオラ奏者として活躍。ドイツ音楽の要素を摂取するようになった時期から、協奏曲、管弦楽曲の傑作を相次いで生み出した。異国情緒に富む華麗な作品が多い。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)

やはり、ピアノ三重奏曲の楽器編成は、バランスがいいですね。

小規模編成な分、各楽器の特色が際立つしな。

【追想】音楽の嗜み。

聴く、観る、読むといった楽しみです。

「はじめてのクラシック」です。
はじめてのクラシック 黒田恭一[著] 講談社現代新書

「はじめてのクラシック」(黒田恭一[著] 講談社現代新書)です。クラシック音楽だけでなく、「作品」に接する姿勢や楽しみ方を学んだ一冊です。

黒田恭一氏の音楽評論については、RPG「ドラゴンクエスト」のサウンドトラック「交響組曲 ドラゴンクエスト」シリーズのライナーノーツで拝読していました。改めて「クラシック」という枠組みでの評論や解説(随筆のような)を読むことができ、とても勉強になりました。

なかでも「コンサートできく音楽と再生装置できく音楽、または、一緒もいいが、孤独もいい」が慧眼ですね。コンサートなどの生演奏とCDなどのオーディオ機器で聴く場合の問題点を、類例や体験を交えて述べられているのが、読んでいてとても楽しく感じました。
いずれにせよ、音楽に限らず、「制作と受容といった美学上の課題」について学んでみようという気持ちになる切っ掛けを与えていただいた一冊です。

「美学上の課題」ですね。

後に転じて「制作と受容の上にある『美学』」を意識し始める切っ掛けとなった書籍だな。

【雑想】下手の横好き。(第31弾)

クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。

DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。

DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。

下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。

・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)

クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。

・ミュージック(8bit クラシック_01)

長く続く趣味を持ちたいです。

変則回を挟んでからの、ショパン編への復帰です。

ショパンにとっては珍しい室内楽ですね。

10代後半から20歳前後にかけては、精力的にピアノ以外の楽器も作品で扱おうとしていました。が、その後は、ピアノ偏重になりますので、とても貴重です。

ピアノ三重奏曲という括りでカップリングされたラロの作品も、中々に聴く機会も少ないです。そのため、佳品発見という観点からは、とても嬉しいアルバムになりましたね。

では、また。

ショパンの場合、室内楽曲って珍しいですよね。

ショパンの楽曲では、ピアノ作品以外が稀少といって過言ではないぞ。