こんにちは。はーねうすです。
今回は、「ムゼッタのワルツ / プッチーニ, マスカーニ, ジョルダーノ・ピアノ曲全集」を紹介します。
イタリアを代表するオペラの作曲家である、プッチーニ、マスカーニ、ジョルダーノのピアノ曲を集めたアルバムです。
アルバムが企画された2000年当時、3作曲家の現存したピアノ曲をすべて収録しているということで「ピアノ曲全集」となっています。
ピアノ演奏は、マルコ・ソッリーニ氏です。
アルバムの原題は、「PUCCINI / GIORDANO / MASCAGNI music for piano」です。
★打ち込みクラシック
DAW(Digital Audio Workstation)で入力したクラシック音楽のDTM(DeskTop Music)作品を紹介するコーナーを巻末に設けています。
今回紹介するアルバムの中から1曲をピックアップしていますので、是非お楽しみください。
イタリア・オペラ界の作曲家によるピアノの小品集のようですね。
オペラの劇伴とは違った、愛らしい楽曲に出会えるぞ。
【着想】オペラ作家のピアノ小品集。
「ムゼッタのワルツ / プッチーニ, マスカーニ, ジョルダーノ・ピアノ曲全集」のコンテンツです。

式典や新聞掲載のために作曲した音楽や、ラジオや映画といった当時のニュー・メディアの付随音楽など、オペラとは機会を異にする音楽もありユニークです。
また、作曲家の曲想を綴ったかのような小品もあり、純粋に器楽曲と向き合うオペラ作家の顔を覗き見たようで嬉しくなります。
No. | 作曲家 | 曲名(1)* | 曲名(2)* | 作品番号 |
1 | プッチーニ | Piccolo valzer | 小ワルツ | ― |
2 | プッチーニ | Adagio | アダージョ | ― |
3 | プッチーニ | Scossa elettrica (Marcetta brillante) | 電気ショック (華麗な小行進曲) | ― |
4 | プッチーニ | Foglio d’album | アルバムのページ | ― |
5 | プッチーニ | Piccolo tango | 小タンゴ | ― |
6 | プッチーニ | Calmo e molto lento | 穏やかに、そしてとてもゆっくりと | ― |
7 | マスカーニ | Novellina | 世間知らずな娘 | ― |
8 | マスカーニ | Sulle rive di Chiaja | キアイアの海岸で | ― |
9 | マスカーニ | Intermezzo | 間奏曲 | ― |
10 | マスカーニ | Pifferata di Natale | クリスマスの横笛 | ― |
11 | マスカーニ | Tema di Andante | アンダンテのテーマ | ― |
12 | マスカーニ | La gavotta delle bambole | 人形のガヴォット | ― |
13 | マスカーニ | La prima bagnante | 最初の海水浴客 | ― |
14 | マスカーニ | Sunt lacrymae rerum ! | ものみな涙あり ! | ― |
15 | マスカーニ | Visione lirica (Guardando la S. Teresa del Bernini) | 叙情的光景 (ベルニーニのテレサを眺めつつ) | ― |
16 | マスカーニ | Tomina | トミナ | ― |
17 | ジョルダーノ | Minuetto | メヌエット | ― |
18 | ジョルダーノ | Alla govotta | ガヴォット風に | ― |
19 | ジョルダーノ | Idillio | 牧歌 | ― |
20 | ジョルダーノ | Gerbes de feu (Scherzo) | 火柱 | ― |
21 | ジョルダーノ | Nel deserto | 砂漠にて | ― |
22 | ジョルダーノ | Natale dei bambini | 子供たちのクリスマス | ― |
23 | ジョルダーノ | Cocktail | カクテル | ― |
24 | ジョルダーノ | Violettes de Parme (Valse) | パルマのスミレ (ワルツ) | ― |
25 | ジョルダーノ | Tci-yang (Polka brillante) | チ・ヤン (華麗なポルカ) | ― |
26 | ジョルダーノ | Valzer sentimentale | 感傷的なワルツ | ― |
27 | ジョルダーノ | Valzer serenata | ワルツ・セレナータ | ― |
28 | ジョルダーノ | Lamento | 嘆き | ― |
29 | ジョルダーノ | Organetto di Barberia | 手回しオルガン | ― |
30 | ジョルダーノ | Carillon | カリヨン | ― |
31 | ジョルダーノ | Squillo “Giorenale radio” | ラジオ・ニュースのための音楽 | ― |
32 | ジョルダーノ | Caffé notturno | カフェ・ノットゥルノ | ― |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.9」:マスカーニ「Intermezzo」
マスカーニの代名詞ともいえる有名曲で、しっとりとした甘い旋律が魅惑的な楽曲です。
徐々に高揚する曲想の内に秘めた、感傷的とも憧憬の想念が際立つ内容になっています。
元は歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲で、オーケストラを支えるオルガンの野色が魅力的な楽曲です。
「No.30」:ジョルダーノ「Carillon」
オルゴールのような線の交叉で描き出される、愛おしさに溢れた楽曲です。
オルゴールの蓋を開けたときに流れ出す音楽に魅入られた、幼少期を想起するような小さな感動を呼び覚ます憧憬のような内容になっています。
<おすすめ度★★>
「No.1」:プッチーニ「Piccolo valzer」
チャーミングな旋律が特徴の楽曲です。
郷愁を感じさせる主要主題と、物思いに耽るような副次主題の組み合わせが素敵です。
元は歌劇「ラ・ボエーム」のアリアで、「ムゼッタのワルツ」として親しまれていますね。
「No.3」:プッチーニ「Scossa elettrica (Marcetta brillante)」
軽やかに駆け抜ける、聴き心地の良い楽曲です。
颯爽と駆け抜けて行く主要主題と、キャッチな旋律が印象的な中間主題で構成されています。
「No.8」:マスカーニ「Sulle rive di Chiaja」
短いバラードのような構成の楽曲です。
モチーフの切り替わり方や、盛り上がる曲調が楽しいです。
「No.15」:マスカーニ「Visione lirica (Guardando la S. Teresa del Bernini)」
酷く陰鬱な様相を伴った、夜想曲のような曲想の楽曲です。
中間部あたりに登場する感が極まったかのような展開と、以降の流麗な線で描かれる軽妙な雰囲気が素敵です。
「No.19」:ジョルダーノ「Idillio」
片田舎の素朴な舞踏の旋律を想起させる楽曲です。
スタッカートで刻まれるリズムが特徴という以外には、取り立てて目立つ点はないにも関わらず、何故か聴き入ってしまう内容になっています。
「No.27」:ジョルダーノ「Walzer serenata」
夜会に添えられた、上品なBGMのような楽曲です。
軽く舞うような線で紡ぎ出される旋律が素敵です。
<おすすめ度★>
「No.4」:プッチーニ「Folglio d’album」
寂寞とした曲想で展開される楽曲です。
落ち着きのある曲調は、まるで思い出に浸っているかのような哀愁と寂寥で満ちています。
「No.10」:マスカーニ「Pifferata di Natale」
純朴で民謡のような雰囲気が漂う楽曲です。
望郷や郷愁といった、昔日を懐かしむかのような観があります。
「No.24」:ジョルダーノ「Violettes de Parme (Valse)」
優雅な雰囲気を纏った楽曲です。
優美な旋律と明快なワルツの律動が特徴です。

オペラのアリアやオーケストラ曲のピアノ独奏版のように、耳に親しんだ楽曲もあります。
ですが、やはり魅力的なのは、純粋な器楽曲として作曲されたピアノ作品の数々ですね。
確かにオペラで耳にするのとは異なった、控えめで可愛らしい感じがしますね。
オペラのような付随音楽ではなく、作曲家個人のちょっとした曲想を綴った、というニュアンスの楽曲もあるためだろうな。
【観想】調査と探求の大成。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
本アルバムに収録されている楽曲は、プッチーニ、マスカーニ、ジョルダーノのピアノ曲を網羅しています。
企画としては「オペラ作曲家の知られざるピアノ曲」といった体裁ですが、実質は「根気を伴った、探求と調査の成果」といった側面を持っています。
いわゆる「散逸してしまった作品の回収」ですね。
ライナーノーツ「ピアノに向かうヴェリズモ」(チェザーレ・オルセリ氏[著] / 山崎香氏[訳])によると、プッチーニの場合は精細な音楽学研究に基づき、全ピアノ作品は収集・分類されているとのことです。
一方、マスカーニとジョルダーノについては散逸してしまっていた作品もあり、探し出すために、長く手間のかかる調査が必要だったようです。
マスカーニの「No.15『Visione lirica (叙情的光景) 』」や「No.16『Tomina (トミナ)』」は、世に知られていなかったり、作品目録に載っていない作品を見つけだすことに成功したようです。
散逸してしまっていた作品を発見するというのは、相当な苦労を伴ったでしょうね。
個人所有ならともかく、「紛失」や「行方不明」になっていた作品を見つけ出したという労力のには驚かされるばかりです。
音楽家の略歴です。
ジャコモ・プッチーニ
【伊】1858-1924
イタリア・ロマン派歌劇におけるヴェルディに続く世代の最大の作曲家。教会オルガニストを務めながら教会音楽を作曲。のち、歌劇の作曲家として方向を見いだした。19世紀末のヴェズリモの影響も多分にうけながら、リアリティをもった作風を完成。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
ピエトロ・マスカーニ
【伊】1863-1945
1888年楽譜出版社ソンゾーニョの懸賞に応募した「カヴァレリア・ルスティカーナ」の1位入賞で一躍認められ、ヴェリズモ歌劇の確立者となった。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
ウンベルト・ジョルダーノ
【伊】1867-1948
イタリア・ロマンティック歌劇の最後の大作曲家。ヴェズリモの影響下に、イタリアで広く親しまれる名作を残す。
(「クラシック音楽作品名辞典<改訂版> 三省堂」より抜粋)
ところで「ヴェズリモ」とは何でしょうか。
19世紀から20世紀のイタリアで起こったリアリズム運動だな。現実主義的な傾向を示す創作活動のことで、イタリアの散文文学が事の起こりだな。
【追想】イタリア発のピアノ曲。
思いの外古典的な譜面になっています。

「イタリア ピアノ名曲選集 ヴェルディ、プッチーニ、マスカーニ、ドニゼッティ」(全音楽譜出版社)です。
ヴェルディ、プッチーニ、マスカーニ、ドニゼッティといったイタリア・オペラを代表する作曲家のピアノ曲を収めた楽譜です。
今回紹介したアルバムと比較すると、プッチーニの全6曲と、マスカーニの「No.7『Novelina』」「No.8『Sulle rive di Chiaja』」「No.9『Intermezzo』」「No.10『Pifferata di Natale』」「No.11『Tema di Andante』」「No.13『La prima bagnante』」「No.14『Sunt lacrymae rerum !』」「No.15『Visione lirica』」「No.16『Tomina』」が収録されています。
ショパンやリスト、ラフマニノフといったピアノのヴィルトゥオーソによる楽曲という訳ではありませんので、ピアニスティックな技巧を施した面は決して強くありません。
どちらかと言えば、オペラのアリアや劇伴をピアノ・スコア用に落とし込んだかのような色合いが濃いです。
同型で繰り返される左手パートの動きは、ハイドンやモーツァルトなどの古典派に見られる形をなぞっています。
また、多声的に表わされた声部の動きは、管弦楽曲を想定していたような面を持っています。
そのためか、曲調や曲想はロマン主義時代の香りに包まれていますが、構造はどこか古典主義時代の面影を残しているという、すこし不思議な様相になっています。
オペラ作曲家にとってはマイナーな部類に属するピアノ作品なので、とても貴重な楽譜といえるでしょう。
左手のパート譜ですが、和音の分散型が多いですね。
右手のパートが旋律、左手のパートが伴奏といった体裁で整えているからだろうな。そのため、オペラのアリアをピアノ・スコアにした、といった感があるよな。
【雑想】下手の横好き。(第108弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
「Studio One」シリーズで打ち込んだクラシック音楽をお披露目するコーナーです。
今回は、<おすすめ度★★★>として紹介したマスカーニの「Intermezzo (間奏曲)」のピアノ独奏版です。
マスカーニ:間奏曲 (歌劇「アヴァレリア・ルスティカーナ」より)
他作品を含め、下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
・ミュージック(クラシック_03)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
今回は、変則回でした。
イタリア・オペラの作曲家によるピアノ曲という、物珍しさに釣られて購入したアルバムでしたが、とても良い買い物になりました。
ライナーノーツを読んでから知ったのですが、3作曲家の現存するピアノ曲をすべて網羅した「全集」ということで興奮した記憶があります。
このような作品集に出会えるのが、CDアルバムを購入する楽しみでもありますね。
次回は、フォーレのピアノ曲集を紹介する予定です。
では、また。
クラシック音楽のアルバムには、企画物も結構な数がありますよね。
特に「有名作曲家による、知られざる作品集」という企画は、蒐集家にとっては垂涎物だろうな。