こんにちは。はーねうすです。
今回は、「ドイツ・グラモフォン 栄光の指揮者たちによる≪運命≫録音の変遷」を紹介します。
レコードレーベルである「ドイツ・グラモフォン」で録音された、ベートーヴェンの「交響曲 第5番 ハ短調」の第1楽章を年代ごとに収めた、いわゆるコンセプト・アルバムです。
往年の名指揮者による、「交響曲 第5番 ハ短調」の解釈の違いを聴き比べることができる名盤です。
また、録音技術の進化も確認することができて、とても楽しいです。
ビッグネームによる、ベートーヴェンの「運命」ですね。同曲異演というやつですね。
録音技術の発展も明確に理解ができて、面白いよな。
目次
【着想】歴史的録音と時代的精神。
「ドイツ・グラモフォン 栄光の指揮者たちによる≪運命≫録音の変遷」のコンテンツです。
20世紀初頭に録音されたものから、20世紀末期に録音されたものまで、10名の指揮者で構成されています。
演奏の違いに加えて、録音技術の発展や時代精神の反映などが知れるアルバムでもあります。
No. | 作曲家 | 曲名 | 指揮 | 楽団 |
1 | ベートーヴェン | 交響曲 第5番 ハ短調 ≪運命≫ 第1楽章 | アルトゥール・ニキシュ | ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 |
2 | ベートーヴェン | 交響曲 第5番 ハ短調 ≪運命≫ 第1楽章 | ヴルヘルム・フルトヴェングラー | ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 |
3 | ベートーヴェン | 交響曲 第5番 ハ短調 ≪運命≫ 第1楽章 | カール・ベーム | ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 |
4 | ベートーヴェン | 交響曲 第5番 ハ短調 ≪運命≫ 第1楽章 | フェレンツ・フリッチャイ | ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 |
5 | ベートーヴェン | 交響曲 第5番 ハ短調 ≪運命≫ 第1楽章 | ヘルベルト・フォン・カラヤン | ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 |
6 | ベートーヴェン | 交響曲 第5番 ハ短調 ≪運命≫ 第1楽章 | ラファエル・クーベリック | ボストン交響楽団 |
7 | ベートーヴェン | 交響曲 第5番 ハ短調 ≪運命≫ 第1楽章 | カルロス・クライバー | ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 |
8 | ベートーヴェン | 交響曲 第5番 ハ短調 ≪運命≫ 第1楽章 | レナード・バーンスタイン | ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 |
9 | ベートーヴェン | 交響曲 第5番 ハ短調 ≪運命≫ 第1楽章 | クラウディオ・アバド | ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 |
10 | ベートーヴェン | 交響曲 第5番 ハ短調 ≪運命≫ 第1楽章 | クリスティアン・ティーレマン | フィルハーモニア管弦楽団 |
ちょっとした所感です。
<おすすめ度★★★>
「No.2」:ヴルヘルム・フルトヴェングラー指揮 / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
「これぞ『運命』」といった、ベートーヴェン演奏の鑑のような完璧とさえ感じる内容です。
強弱・緩急のメリハリの効きが、見事です。
第二次世界大戦後の間もない録音とは思えないほど、クリアな音質にも脱帽です。
「No.5」:ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
超特急的なテンポの速さで突き進む、如何にもスピード感に重きが置かれた指揮っぷりです。
第1主題の異様なスピード感からは、軽薄な印象を受け取ることは否めないません。
ですが、その分第2主題の美しさや展開部の激烈が際立つ構造になっています。
「No.8」:レナード・バーンスタイン指揮 / ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
敢えて厚みを抑えたかのような管弦楽の扱いで、ポピュラリティーのあるシンフォニックな音楽を生み出している内容になっています。
他の演奏家とは一風違った、個性的な「運命」を聴くことができます。
<おすすめ度★★>
「No.3」:カール・ベーム指揮 / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
音の引き延ばしが絶妙で巧みな内容になっています。
広がりのある空間で録音されたかのような、立体感があります。
「No.4」:フェレンツ・フリッチャイ指揮 / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
重厚で重鎮、テンポは遅めの、威厳と風格が強い内容です。
まるで作曲家の神性を演出したかのような、厳粛さを感じます。
「No.9」:クラウディオ・アバド / ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
テンポは遅めですが、一本調子ではなく、メリハリの効いた緩急が魅力的な内容になっています。
ベートーヴェンの交響曲に抱くイメージが、如実に具現化したといっても過言ではないかもしれません。
<おすすめ度★>
「No.1」:アルトゥール・ニキシュ指揮 / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
テンポは遅めで、管弦楽の構成も薄めの感じの内容です。
20世紀初頭の録音ということもあり、歴史的な快挙であることは間違いありません。
ノイズ混じり、立体感のなさも、味わいとして堪能できます。
「No.6」:ラファエル・クーベリック指揮 / ボストン交響楽団
間延びさせない第1主題、勿体ぶった第2主題など、表現が巧みな内容になっています。
「No.7」:カルロス・クライバー指揮 / ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
突進するようなテンポが特徴の内容になっています。
第2主題の管楽の扱いが流麗です。
「No.10」:クリスティアン・ティーレマン指揮 / フィルハーモニア管弦楽団
原点回帰のような、重厚さに比重がおかれた演奏が特徴の内容になっています。
レンジの幅が明瞭で、強弱の差が強烈です。
同じ曲なのに演奏家の解釈やアプローチの違いでこうも楽曲の「在り方」がことなるのか、というのをまざまざと思い知らされる内容ですね。
バートーヴェンの「交響曲 第5番 第1楽章」という、誰もが知る楽曲であっても、演じ方によっては「曲想」そのものが異なって響くという、何とも不思議な体験ができます。
確かに、厚みや深みといった、色々と形容しがたい部分の違いを感じますね。
アプローチの違いがどんな形で楽曲に反映されるのかを知れる、良いアルバムだよな。
【観想】録音技術と時代精神。
魅力と醍醐味について、少しばかりの言及です。
今回紹介した「ドイツ・グラモフォン 栄光の指揮者たちによる≪運命≫録音の変遷」は、「ベートーヴェンの『運命』を、時代ごとで並べて聴いちゃおう」という、とてもユニークな企画で成立したアルバムです。
しかも「ドイツ・グラモフォン」といった、超大御所のレコードレーベルから発せられています。
錚々たる指揮者が名を連ねています。演奏するのも歴史のある楽団ばかりです。
同曲異演の醍醐味が、詰めに詰め込まれています。
ひとつが録音技術の発展です。
今回紹介したアルバムは、20世紀の録音技術の進化・発展を追うことができる内容にもなっています。
・1910年代~1950年代は、アナログ盤のモノラル録音
・1960年代~1970年代は、アナログ盤のステレオ録音
・1980年代~1990年代は、デジタル録音
といった具合です。
「No.1」と「No.10」を聴き比べ得ると、その差は歴然です。
音量・音圧・強弱の幅といった、ダイナミック・レンジの違いは際だっています。
技術的な面を捉えている点に加え、歴史的な快挙といった点も見逃せません。
1910年代の録音は、歴史的録音です。ニキシュ氏という19世紀後半から20世紀初頭に活躍した名指揮者の演奏が残っているのは、ドイツ・グラモフォンのなせる技でしょう。
それから時代精神の反映です。
演奏時間に反映されています。明らかにテンポ感が異なります。
とりわけカラヤン氏の録音は、異様です。明らかに他と違います。
演奏家の解釈やアプローチといった点は、時代精神が如実に反映される場合があります。
とりわけ20世紀は、移動手段や情報展開の技術面が飛躍的に発展した時代です。スピード感が一気に高まった時代でもあります。
それらに呼応したのだろうと想わざるをえません。
例えベートーヴェンの楽曲であっても、一辺倒でない「解釈」があるのもクラシック音楽の楽しみですよね。
音楽家の略歴です。
<略歴> ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
【独】1770-1827
14歳で宮廷オルガニストに採用され、この頃から作曲も手がけている。1787年に一度ウィーンを訪れ、モーツァルトに会う。初期の作風は、古典派の先人たちの影響を強く留めているが、のちに開花する個性的要素をのぞかせるものも少なくない。中期においては作風は大きく転換し、大胆な技法による情熱的で力強い表現が獲得され、それは次のロマン派音楽の先駆とみなされる。後期は自己への沈潜と、より深められた人類的理想への希求を秘めた音楽的極致に到達した。
ノイズ混じりの録音って良いですよね。味わいがあります。
クリアな録音に慣れ親しんでいる分、却って新鮮だよな。
【追想】音楽家の横顔。
カラーの図版が映えます。
「カラー版作曲家の生涯 ベートーヴェン」(平野昭[著] / 新潮文庫)です。
図版がカラーで掲載されていますので、見た目にも豪華に感じる内容になっています。
典型的な「作品と生涯」といったプロフィール的な解説本ではなく、旅行記を交えたかのような、地域性との関わりに重みを置いている感じのする内容で、とても面白いです。
とりわけ、当時の様子を収めた風景画が多く掲載されているのが良いですね。
時代の背景といったものを強く意識させられます。
そして、自筆譜の画像ですね。数は多くありませんが、とても貴重に感じます。
巻末には、年譜と作品表もあります。
とりわけ年譜では、ベートーヴェンの生きた時代の歴史を知ることができます。
エッセイの雰囲気も持ち合わせた内容になっていますので、ライトな感じで読めます。
写真や絵が多くて、気軽に読めますね。カラーで掲載されているのも高ポイントです。
旅行記風でなのも良いよな。当地に雰囲気が伝わってくるぞ。
【雑想】下手の横好き。(第132弾)
クラシック音楽の打ち込み作品の紹介です。
DAW(Digital Audio Workstation)でクラシック音楽を打ち込んだDTM(DeskTop Music)の作品を制作しています。
DAWで音楽を制作するDTMの楽しさが伝わればと思います。
下記リンク先にクラシック音楽の打ち込み作品などを纏めていますので、ご鑑賞いただければ嬉しいです。
・ミュージック(クラシック_01)
・ミュージック(クラシック_02)
クラシック音楽をファミコン(ファミリーコンピューター)の音源風(あくまで「風」)にアレンジした「8bit クラシック」という打ち込み作品も纏めていますので、上記に加えてご鑑賞いただければ幸いです。
長く続く趣味を持ちたいです。
今回は変則回でした。
企画が面白いという理由で買ったアルバムです。
指揮者による演奏スタイルの違いに興味があったこと以上に、録音技術の変化を知りたいという欲求のほうが強かったです。
とりわけ「1913年」という、第1次世界大戦開戦の前年に当たる頃の録音は、どんなものなのだろうという興味は、尋常ではなかった気がします。
次回はシャブリエです。
では、また。
聴き比べを目的としたコンセプトのアルバムも良いですよね。
老舗のレコードレーベルのなせる技だよな。